第47話 妖精✿『神秘の涙の欠片』
フローラが、セイヨウシナノキの花のハーブティーを淹れて皆に出す。
場の雰囲気は、リンデンの心の雪が解けた時点で、温かとなっていたが、その興奮が場を少し温めすぎている。
それに……この人は本当に真面目な方ですね。
と、フローラはサーシャを見て少しだけ落ち着かせる時間を取った。
サーシャにお茶を入れ、渡すときに そっと、「あなただから、あなたがいたから今の場があるのですよ? 自信をお持ちなさい。それに、ルイゼ母さんとエヴァちゃんが特別なのよ? 分かっているでしょ?」 と、耳打ちをする。
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「さてと、ボウズも落ち着いたようだね。」
ルイゼがリンデンに聞く。
「はい。みなさんご迷惑をお掛けしました。僕が仕出かしてしまったことは……?」
落ち着きを取り戻したリンデンの言葉は、揺らいではいない。
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「あぁ。エヴァ達からすべて聞いている。お前には後で、何故『レッドスライム』のことを知っていたのかを聞くが、それは後でだ。私の話を聞いてから改めて教えてくれ。恐らく今と後では答えが変わるかもしれない。」
そのルイゼからの言葉に頷いたリンデンを見て、ルイゼが「少しだけ話してやる」と言ったことを話し出す。
◇
ルイゼが、樹の表皮のようなものを取り出し、粉々にして火を点ける。
その煙は甘い香りを漂わせながら、部屋にゆっくり充満していく。
リンデンはその香りに覚えがあったが、思い出せないでいた。
それは、レッドスライムの体液を溢したときに嗅いだ香り。
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「この表皮は、マザーツリーの表皮。第1階層のマザーのものではないがな。マーガレット、『イエロースライム』を出してくれないか? この中でなら大丈夫だ。」
ルイゼのその説明を受けて、マーガレットが恐る恐る『イエロースライム』を 導きの妖精のカナリアに出してもらう。
"きゅい~"と鳴くスライムに、彼女達の導きの妖精が近寄り『すらいむー』と嬉しそうにする。
『双舞子』の導きの妖精『アズキ』と『レモ』は、関心を示していないのを確認して、「ふむ」とルイゼは小さく頷く。
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「間違いないね。この『イエロースライム』は神秘の涙だ。そして……」
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――― この導きの妖精も神秘の涙だ。
と、ルイゼがエヴァの方を見て言った。
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「え?」という顔で見合わす3人に対してルイゼの説明は続く。
「エヴァ『マザーの子』の声を聞いたときに、その場には『もも』が居たんだろ?」
「うん。」
「そして、名前を付けろと『マザーの子』が言ったでいいんだよね?」
「うん。」
その「うん」という言葉に呼応するように『もも』も頷いている。
それを見ながらルイゼは、「こりゃ、ちっちゃいエヴァちゃんだねぇ」と心で微笑むが、真剣な顔で話を続ける。
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「はぁ、世界樹の意思は何を考えているのかねぇ。恐らくは、お前達の妖精への名付けが引き金で『レッドスライム』が生まれた。」
「あ……。それで神秘の涙。」
リンデンが閃きの顔を隠さずルイゼの方を見る。
「それが、本来のお前かい、ボウズ。悪くない感性さね。そういうことさ。」
「わかんない。恰幅、またひとりで理解している。ムカつく。」
フリージアがほっぺを丸くしてむくれる。
その言葉を聞いて自分を見てくるリンデンに頷き「説明しろ」とルイゼは無言で指示を出す。
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「それはですね。恐らくは『世界樹の意思』が、エヴァさん達に神秘の涙の力を引き継いだ不思議な導きの妖精と、そこから分かれた『レッドスライム』を与えようと導いた。……だから、名付けと同時に『スライムエリア』に『レッドスライム』が生まれた、ということです。」
納得をしたようにツンッとした顔のフリージアを見て、ルイゼが補足する。
「その時たまたま居合わせたボウズが、その存在を知っていた。それもまた、意思に導かれていたのかもしれないねぇ。まさか、その場で解体して失敗するとは世界樹も思わなかっただろうけどね。」
「うう」と唸るリンデンではあるが、もうそれでは取り乱さない。
◇
「でだ、俺達が手に入れたのがこれ。『レッドスライム』の魔核だ。」
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カイトが彼女の導きの妖精から、それを取り出し机の上に置くと、『イエロースライム』と『もも』達が魔核に近づき、「Chu-✿」とキスをする。
そして、『もも』がカイトとフローラに向かって言う。
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『すらいむー えばーおはなでおくったー これあなたの たいせつ おねがい』
3色の導きの妖精がカイトとフローラの周りを飛び回り、彼女達に「Chu-✿」とキスをする。そして『イエロースライム』も彼女達に向かって大きく伸びながら「おねがいね」と言わんばかりに "きゅい~" と鳴く。
クオーツが何なのか!?
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