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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第3章 ✿月明かりの妖精
45/132

第45話 『他言無用』と娼館酒場

― ☘

 サーシャは迅速にエヴァ達のクエスト処理を終える。

 そんな中、ふと彼女達が導きの妖精(ナビゲーター)に名前を付けていたことを思い出す。


「ねぇ、あなた達。導きの妖精(ナビゲーター)に名前を付けたんだね?」


 そのサーシャの言葉に、暗い雰囲気であった3人の顔に赤味が戻る。

 そして、3人は手の甲を上に上げ、白と黄色と桃色の光を呼ぶ。


 飛び出した3人の導きの妖精(ナビゲーター)も、リンデンのことを分かっているのであろうか。3人の頬に自分達の頬を摺り寄せる。


 「ありがとう大丈夫」と導きの妖精(ナビゲーター)の頭を撫でる3人。

 そして、サーシャへ大切な自分の半身を紹介する。


 ✿


「あと、わたくしにはもう一人紹介したい子が。『カナリア』お願いしますわ。」


― ☘

 最後に導きの妖精(ナビゲーター)を紹介したマーガレットが、愛しいカナリア(ようせい)にお願いをする。

 彼女は、コクンと首を振り、導きの妖精(ナビゲーター)の収納機能から『イエロースライム』を召喚する。


 ぴょこんとマーガレットの肩に現れた『イエロースライム』が "きゅい~"と鳴くと、3色の導きの妖精(ナビゲーター)が擦り寄り嬉しそうに言う。



『『『すらいむーすらいむー』』』



 それを見たサーシャが震えながらマーガレットに聞く。


「マーガレット……さん。こ……これは?」

「はい。わたくしに心を許してくれたスライムさんですわ!」


― ☘

 改めて彼女のカードを確認する。

 ティムされている。確かに『イエロースライム』が……(スター)のマークと共に。

 そして、改めて今起こったこと、彼女達が言ったこと、を振り返る。


「えーと……。歌って? 踊って? 気遣う導きの妖精(ナビゲーター)だったっけ? それに、今スライムに向かって喋らなかった? この子達……?」


「え? 導きの妖精(ナビゲーター)って歌って踊って喋って気遣うものじゃないの?」

「お歌も踊りも、大変上手でお美しいですわよ?」

「うん。綺麗だった。」


 あぁ……頭がパンクしそうだ。

― ☘

 普通の導きの妖精(ナビゲーター)は、歌えないし喋らない。

 ある程度の自我はあるけれど、それは迷宮探索家フローターの気持ちに反映されてであって、自分から踊ったり気遣ったりはしないもの。


 先程の頬ずりのように、落ち込んでいた彼女達の意思の裏返しなら分かるのだが、どうも彼女達の言い方から察するに、独立した自我があるように思われる。


 そのような異例がないこともないのだが……(スター)モンスターのことも含めて、後で『華の蝶』の方々に相談をしよう。だが、その前に……。


― ☘

「マーガレットさん。そのスライムは(スター)です。人には気づかれないように。そして、ティムモンスターは世界樹の中以外では召喚しないように。弱ってしまいます。」


「まぁ!」


「そして、あなた達全員に言っておきます。普通の導きの妖精(ナビゲーター)は、歌えないし喋らないの! だから、気を付けて……はぁ。」


― ☘

 その疲れた顔のサーシャに、『もも』が飛んで行き耳元で囁く。


『だいじぶ ないしよだよ』


― ☘

 その囁きに、何故だろう……サーシャは落ち着きを取り戻す。

 そして、エヴァ達に改めて注意事項を伝え、迅速に彼女達のクエストの処理を終わらせると、足早に執務室に向かう。


 上役のシトラスにリンデンのことを伝え、一緒にあの災いから帰還を果たしたエヴァ達とともに、『双舞子ダブルダッチ』が彼を落ち着かせるために運んだ娼館『華の蝶』に向かう許可を得て、3人の『特S級新人』を連れて世界樹迷宮を後にした。




 ✿ ❀ ✿


 王都アウロの端にある色町。

 その中でもひと際立派な佇まいの建物、娼館酒場『華の蝶』。


 エヴァ達を連れてサーシャが着いたときには、陽は沈みかけており辺りはオレンジ色に染まっていた。


 エヴァが娼館の裏口から彼女達を通し、酒場の奥にある『秘密の部屋』に案内をする。

― ☘

 中に入ると、御影石の内装に高級な皮のソファーとガラスの大机、そして、娼館女将さんのルイゼ、娼館No1のフィオレ、『双舞子ダブルダッチ』の2人、ザコイチに朦朧もうろうとしながら支えられているリンデンが座っていた。


 リンデンを見て、少し辛そうな声で「ただいま」というエヴァ。

 優しい眼差しで大人しい声で「おかえり」と返す女将さんと姐さん達。


 ◇


 3人が席に座ったのを確認して、ルイゼが「一体何があったんだい? 時間を掛けてもいいから、すべて話しな。」と、厳しい口調で、でも優しい表情で聞く。



 彼女達は、初めての冒険で体験した『すべて』を話す。



 そして、最後にエヴァが「黒猫の精霊さんが、ルイゼ達によろしくにょ。」

と、黒猫からの伝言を伝えると、ルイゼは「ハァ」と大きく溜息を付き


― ☘

「まったく、あの「にょにょ猫」は……。エヴァちゃん達を助けてくれたんだね。」

 と、懐かしそうな寂しそうな表情でぽつりと呟く。

 

 そして、エヴァ達を見て言う。


― ☘

「いいかい? このことは『他言無用』だよ! それが守れるなら少しだけ話をしてやる。守れるかい?」


 その言の葉から伝わる重み、彼女から放たれる重圧、恐らくはそれが守れなければ、如何なるものでも制裁を下すであろう覚悟。


 それを感じ、そして、それを無下にする程、女が廃ってはいない彼女達は、覚悟を決め、短く「はい」と答えた。


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