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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第3章 ✿月明かりの妖精
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第44話 捨て鉢

 カイトから投げ捨てられた、血の跡の付いた『紫のローブ』。

 リンデンは、それを見て絶句する……。


― ☘

 新人研修で見かけ、少し「いいな」と思っていた彼女。


 同じパーティとなり浮かれていた自分と、クエストが始まり、戦闘で役に立たない自分を冷めた目で一度だけ見て、そこから空気のように扱った彼女。


 レッドスライムのことを自慢げに話し、尊敬の目を向けてくれた彼女。


 そして、解体に失敗して……傷の付いたレッドスライムの魔核を取り上げ、自分を暴走するスライムの群れに足蹴りをして突き落としたときの彼女の歪んだ目。


 『喜怒哀楽』……彼女に対する全てが頭の中にフラッシュバックする―――。



― ☘

 そして、思い出すカイトの言葉。


――― 食われ て 死んだ???



「う……うわあああああああ!!! 僕の…僕のせいだ……。」



― ☘

 暴れる。

 非力な力で当たり散らす。

 持ち上がらない机を怒りが持ち上げる。

 ……が、それしかできず、まあ暴れる。


 声にならない声で、唸る、唸る、叫び、唸り、狂乱する。


 恐らくフリージアであろう女性が何かを言いながら止めようとする。

 それに対しても拳を向ける。

 が、無情にも躱され、止められ、また何かを言われる。



 そして、最後に聞いた言葉―――

 恰幅、黙れ、五月蠅い、流石にうざい。



 彼はその言葉を最後に、意識を失っていく。


― ☘

 薄れゆく意識の中で思う。

 初めて憧れを抱いたあの子を僕は……僕のつまらないプライドで……

 これが……黒猫の精霊が言っていた……本当に御し難い……

 


 ✿ ✿ ✿

― ☘

「なぁ、セビオ。お前はこれ持って出ていけ。今のこいつにお前は刺激がつええ。」

 『紫のローブ』を親指で指差し不機嫌そうに言うカイト。


「そうね……。まずはこの遺品をご家族によね。他の2人は遺品すらないし。あなたはそちらに集中すべきよね。」

 『紫のローブ』を手にしてフローラが渡す。


「は……はい。ありがとうございます『双舞子ダブルダッチ』。サーシャさんお願いできますか?」


 リンデンの担当であるセビオが、『双舞子ダブルダッチ』に頭を下げ、サーシャにリンデンのことを頼む。


「えぇ……。私が聞いておくね。」


― ☘

 そう答えるサーシャであるが、実際はカイトもフローラもセビオに顛末は聞かせたくない思いがあることを察しており、複雑な気持ちでそう返事をする。



 ❀


 そこからは、フローラが、今からのことについてまとめていった。


 まず、簡単にエヴァ達へ変形メアモルフォーゼし羽化した赤紫の蛾の女王 『パープルレッド・フィポフィコルス』について話す。


― ☘

 次に、リンデンは一度、娼館『華の蝶』に連れ帰ることを告げる。

 取り急ぎ、自分達とザコイチの報酬を用意するようにサーシャに指示をする。


 エヴァ達はここに残り、自分達の今日の仕事について手続きを済ませ、報酬をしっかりと受け取るように命令する。命令と言ったのは、エヴァ達も一緒に直ぐにでも娼館に行くと言い出した為、その考えは、迷宮探索家フローターとして失格だと強く言い切ったからだ。


― ☘

 そして、最後に

「エヴァちゃん。全部終わったら、サーシャさんと一緒に酒場の個室……あの『秘密部屋』に皆でいらっしゃい。それだけ言えば分かるわね?」

 と告げ、席を立つ。


「はい、フローラ姐さん。あそこで話すってことは、そーゆーことだね。」


 その意識が鋭く変わったであろうエヴァの表情と声から、マーガレットもフリージアも無言で首を縦に振る。


 ◇


 そして、「俺は?」と、狼狽うろたえているザコイチに向かって、エヴァが深く頭を下げる。


「ザコイチ先輩。心配してくれて、助けに来てくれてありがとう! 多分リンデンが目を覚ましたときに、先輩みたいな人が居ると安心するんだと思うの。一緒に行ってあげてくれませんか?」


― ☘

 ザコイチはそのエヴァの姿を見て思う。

 多分……俺なんかが、こんな場違いな場所に要る理由は、きっと『このため』なんだろうなと。



「ああ、勿論だ。あいつの、あの情けない乱れっぷりは、きっと《《俺なんだ》》ろうよ。だから任せておけ。それと……今朝は悪かった。そして、無事で良かった。」



 その言葉を聞いて『ありがとうございます』と頭を下げるエヴァとマーガレットとフリージアの3人。


 「2割引きしてやるぞ?」と笑いながら彼の肩を叩き、リンデンを担いでついて来いと言って、外に出ていくカイトとフローラ。


 ザコイチは、今までの情けない自分を戒めるように、顎を引き背筋丸め、ゆっくりと捨て鉢になっていた少年を担いで『双舞子ダブルダッチ』を追って部屋を出て行く。


― ☘

 彼の恰幅のいい体型以上の『重み』を感じながら。


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