第38話 『根』✿ルートオブセブンスフロート
✿ 第2階層の事件とこの場所の説明と解説の回になります。
細かい設定・説明が苦手な人は 「― ☘」 だけお読みください。
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――『ルートオブセブンスフロート』
リンデンと黒猫が進めるこの話題においてけぼりの3人娘。
我慢をするなんてことはしないフリージアが、ここでは書けない言葉で、リンデンと黒猫にお説教をしてから、この場の会話は本題に入っていく。
「ちっこいの怖いにょ……ちっこいの怖いにょ。」
「あ”? 分かるように早く話す!」
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「わ……わかったにょ。ここは『ルートオブセブンスフロート』。世界樹の根っこにょ。」
「根っこ? 地下にも迷宮があるなんて聞いたことがありませんわよ?」
「ふんにょ。お前達は、この世界樹が生み出す『恵み』が『無限』だとでも思っているのかにょ? ここは「そうゆう場所」にょ。」
「は? 全然わからないんだけど。」
フリージアが、鞘付きの剣で床をドンドンと叩く。
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「にょ! 落ち着くにょ。もともと『世界樹』も大きな木にょ。葉で光を浴びて、『根』で水と栄養を吸うにょ。それが迷宮なんかになったものだから、その根はとっても規模が大きいにょ。」
「分かるようで、分からないよー。」
「この木の根は、『この大陸』全域で、その根の行き着く処は、この星の真ん中、つまり地殻を超えてマントルまで及ぶにょ。」
「すみません。わたくしも全然わかりませんわ。」
「簡単に言うと、火山噴火で沸いてくるマグマが地面の深いところにいっぱいあるにょ。そんな深いところまで、大陸全域の広い範囲から、栄養を貰っているってことにょ。」
「あ……はい。それで何とか『根』のイメージまでは出来ましたが、それがどういう?」
リンデンでも分からない。それなら私達も分からない。3人娘が黙る。
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「その『根』でこの星から集めた養分が迷宮のご飯になって、「恵み」が生まれるにょ。ただ、その根が集める養分は、悪いものもあるにょ。」
「あ! その悪いものを何とかするのが?」
「そう、ここにょ。そして、それが僕がいる理由にょ。」
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「ふむふむ。。『ルートオブセブンスフロート』があっての世界樹で、迷宮で、そして……巨大迷宮都市王都アウロであるということですね。」
「そうにょ。」
「そして、あなたも世界樹の意思?」
「それは残念ながらはずれにょ。僕は僕にょ。僕はあの人を助けたくて……いや何でもないにょ。僕は、世界樹の意思とは通じているけれど、世界樹ではない。それだけの説明で十分な存在にょ。」
◇
「すみません。話がずれました。その根が吸い上げるのは悪いものを含み、それをあなたが管理? 排除している感じでしょうか。そして、それは『クオーツ』……」
クオーツ、その言葉が出ると黒猫が耳をビクンと震わす。
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「『神秘の涙』も『根』は吸い上げるのではないでしょうか。」
「あやつは、そこまで辿り着いていたのかにょ。」
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「恐らくは、もう一歩。『架空都市グランドセブン』の存在意義まで。」
「そうかにょ……。で、お前はその意志を継ぐのかにょ。」
「そのつもりはありませんでしたが、ここに来てしまいましたので。」
「ふんにょ。結果そうなるのなら、あの蛮行も意味があったということかにょ。たかだか3人の犠牲で終わったことだしにょ。」
「それは……どういう?」
「帰れば分かるにょ。まぁ、お前はそれで責められるし、辛い思いをすると思うにょ。ただ……。」
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黒猫は、そこまで言ってエヴァと『もも』を見ながら言葉を止め、心の中こう呟く。
(これも、質の悪い『強運』の……世界樹の意思かにょ……。)
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「『神秘の涙』に辿り着いたあやつを称えてひとつ教えてやるにょ。『レッドスライム』の発生は、『神秘の涙』に起因しているにょ。そして、『レッドスライム』の神秘は《《ここ》》にょ。これ以上僕から言うことはないにょ。」
「え!? それって!!!」
リンデンは、その黒猫からのその話で気が付いた仮説を、「答えなくても良い」と前置きをして、自分のまとめた『スライムエリア』を含む今回の騒動の顛末を話し出す
◇
まず、共存と言われるスライムと『きゃっぴー』の関係。
草食の『きゃっぴー』が何故か食すスライムの『死骸』、それは恐らくはこの世界樹の歴史の中で『きゃっぴー』の本能に刻まれた『神秘の涙』の甘味。
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それを得るために、奴らは本能的にスライムを守る。
そして、その『神秘の涙』を得る条件が、『レッドスライム』の『死骸』なのであろう。
ただ、そのスライムを守るという行動は習性となっているだけで、ただ『レッドスライム』が発生したくらいでは、奴らは『レッドスライム』を襲って死骸を得ることはしない。
というか、出来ないのである。
何故なら、『レッドスライム』は自然死では死骸が残らない。
死骸が残るのは、迷宮探索家による討伐のみで、それも極めて稀である。
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その極めて稀な機会のなさにより『きゃっぴー』は習性として、スライムを守るという行動だけ残って共存となっているのだが、その『神秘の涙』に対する本能を呼び戻すものが存在する。
それが、レッドスライムの死後に『死骸』となった『神秘の涙』のエキス……体液の気化による香りである。
それが、先代から伝わる「解体をしてはならない教え」に繋がる―――。
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それらの稀なケースが重なり生まれたのが今日のこの事態。
奇しくも、それを起こした張本人であるリンデンの口から、黒猫の前で語られる。
彼のこの洞察の閃きは、真実を語っていた。
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ただ、この時点でそれが生み出した『脅威』を彼らは知らず、そしてまだ、『花』魔法が与えた奇跡とここに来る因果関係までは踏み込まれていない。




