第37話 ✿『双舞子』❀2色巫女の鎮魂歌
神楽舞い入る鈴の音を、七鈴、伍鈴、参鈴と――振り込み揺らすその音渦。
禍々しくも赤紫がの領域を、徐々に鈴の音が凌駕していく。
――シャーン シャーン シャーン。
新しい形へと生まれ変わるその魔物のその領域は、徐々に失われていき、その場の空気は一変され、2人の『舞』が支配していく。
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変形し羽化したそのモンスター、それはレッドスライムの魔核を食べた『きゃっぴー』の成れの果て――。
赤紫の蛾の女王 『パープルレッド・フィポフィコルス』
それは、第2階層に居てはいけないモンスター。
恐らくは、その階層のモンスターや迷宮探索家を餌にしながら塔上し、低層階層を支配するために『階層ボス』となる脅威。
むしろ、この瞬間は、階層ボスが生まれ落ちた瞬間なのかもしれない。
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勝手な人の思惑は、自分を中心に回っている。
ザコイチが言った通り、それなりの力を付けた迷宮探索家には、どうでも良いことでしかない。
もっとも、世界樹の意思が、盟約により迷宮探索家を守るために『迷宮』ギルドを受け入れたその観点を考えれば、新人や弱者の迷宮探索家フロンティアである「この階層」の「この異変」は大事であり、それはギルドに警告を発するに足りる事態であるのだが……。
だからきっと、放置がされれば、市井の生活を脅かす大惨事だったのであろう。
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ただ……その緊急的な事態も、茶褐色と淡い黄色の舞の前では、儚いひと時の風のように羽落ちる―――。
シャン シャン シャン シャン シャン―
強まる鈴の音。
舞とともに加速するカイトのサイズの振りと風切り音。
フローラが鳴らす神楽鈴、紡ぐ言の葉——。
――― 神座 招魂、鎮魂と奉るこの音参度
五穀豊穣、延命長寿、子孫繁栄、三番叟ずる柏子見の――
不埒巫女の体なれど
伍つ踊れば災いと――
七つの罪過を身に宿し
七つ鈴の音、終(対)の舞にてそれを返さん ―――
『双舞子』
———刹 那
それは、純白ではなくなったふたつの色の巫女の鎮魂歌の舞
唯一ここへ駆けつけた男は、彼女2人が何故A級で、「龍殺しによる王宮からの勲章授与者」であるのかを、目の当たりにする。
最後の鈴の音がひとつ鳴ったとき。
邪気は晴れ、第2階層の様相は何時もの穏やかな第2階層に戻る。
そこは、きゃっぴーが花を吸い、うりぼんが蝶を追い、スライムが飛び跳ねる、まさに、最低最弱階層の迷宮探索家フロンティアであった。
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ただ、ふたりの英雄の厳しくも鋭い眼光を除いて―――。




