第32話 最弱のリポップ
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『マザーツリー』に着いた「双舞子」の2人は、掌を木に押し当て、第2階層……ではなく、第3階層に移動するように願う。
第3階層に着くと2人は軽く辺りを見渡し、比較的冷静を保っている若い男の迷宮探索家を捕まえて、カイトがシンプルに聞く。
「おい。2層で何があったんだ?」
「あんた達は?」
「A級迷宮探索家だ。ギルドに頼まれて様子を見に来た。」
「そうか。実は良く分からないんだ……。急に周りの『きゃっぴー』が一斉に動きを止めたと思ったら、突然『目を赤く』して動き出したんだ……。」
その迷宮探索家は、手に滲む汗を感じ、唾をごくりと飲む。
「俺たちは丁度『きゃっぴー』を狩りしていたのだが、奴ら目が赤く染まったと思ったら、途端に連携をし出して一斉に襲ってくるし……。これは、普通じゃないと思って逃げてきたんだ。」
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「ふーん。どっかで《《聞いたことある》》話だな。」
「そうね。だとしたら尚更急がないとね。」
「双舞子」は、その話を聞き、何かを納得したような顔をして、改めて『マザーの子』に手を置き第2階層に向かう。
第2階層についた彼女達は、その異常な雰囲気を肌で感じる。
小高い丘にあるその場所から見えるその景色は、目に見える『きゃっぴー』全てが、赤い小さな光の列をなし、1点を目指して行進をしているかのような光景。
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その行先は、少なくとも彼女達が見渡せる範囲では、エヴァ達のいる『スライムエリア』の方向に向かって《《いない》》ことが、「双舞子」の2人から『余裕の笑み』を消すこととなる。
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「僕の考えでは、奴らの『目的』はエヴァさんの持っている『外殻』なのだと思う。」
リンデンは、エヴァの手元を見ながらそう言う。
「それは、スライムの死体が好物だから、その一部のこれを狙ているってこと?」
エヴァが、その外殻をくるくると回して聞き返す。
「恐らくは、そうかと。」
「ですけど、その場合「スライム」は何故襲ってくるのでしょうか。」
「共食い?」
その仮説を語るとすれば、スライムでは話が合わないのでは?
と、マーガレットとフリージアが、首を傾ける。
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「それは、スライム達にとって「これだけは渡せない」……そんなイメージで僕はいるんだ。死骸として残ってしまったお姫様を守るようにスライムは動いている。みたいにね。」
「ですが、それならばレッドスライムが『死体として残った』時点で、暴走をするのではなくて?」
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「多分、解体をしてはいけない理由、それは、レッドスライムの体液にあるんじゃないかな? 体液が零れた時に発生したあの『甘い香り』……。あれが奴らを狂暴化させるスイッチだったんじゃないかな? ……それは僕が原因であるのだけれど。」
そうならば、何となく納得がいくかな―――。
彼女達は、取り合えず、その仮説にが正しいと考えて動くことにする。
ならば、その『外殻』を取られないように、且つ、その仮説が正しいか検証するために、後ろから弓を射る「マーガレット」にそれを持たせ、次の一団と対峙することに決める。
エヴァとフリージアは、彼女を守るような位置取りを取り、諮ったようなタイミングで現れた『きゃっぴー』の軍団に再び刀刃を向けて構える。
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遠距離から口火を切るマーガレットの弓は、やはり、「自分に向かって」直進してくる芋虫達を的確に捉えていく。
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―――なるほど。このこちらを見ている眼圧は、間違いなくわたくしを見ていますわね。まるで舞踏会での、あの野心に満ちた殿方達の嫌らしい目線のようですわ。
マーガレットは、少しだけ胸が焼けるような嫌悪感を持つが、すぅ~と息を吸い、めいいっぱい吐くことで、気持ちを落ち着かせ弓の弦を弾く。
「ここまで見境なくマーガレットさんを目指して来る姿勢、間違いないですね。でもそれならば、マーガレットさんまで敵を近付けなければいい……。当面は対処可能ですかね。きっと彼女達の実力ならば……。」
リンデンは向かってくる『きゃっぴー』とマーガレットの延長上に立ち、ぶつぶつと言いながら考察を深めていく。
◇
最初の『きゃっぴー』の一団を打破してから、徐々に『スライムエリア』に到着する『きゃっぴー』の数は増えてきている。
だが、四方から『きゃっぴー』が進軍してくるようになった中でも、リンデンの適格な指示の下、マーガレットを起点として、エヴァとフリージアが衛星の如く立ち回り、次々とそれらを駆逐していく。
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しかし、ここでまた『何かがおかしい』とリンデンは思い出す。
多く生息する北東だけでなく、南や東から『きゃっぴー』が到着し、対応が360度となり、対応に忙殺され気が付かなかったのだが、絶対的におかしい―――。
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―――最も激戦と思いフリージアを配置した『北東』が一番手薄なのだ。
その不思議にリンデンが気が付いたとき、
更なる異変が『スライムエリア』に起こる。
「スライム」が、次々と大地から生まれだす。
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……そう、このタイミングで、最弱が『リポップ』されたのである。
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