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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第2章 ✿第2階層の異変~妖精達とスライムエリア
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第31話 レッドスライムの外殻

「ん? こいつら私を見ていない?」


― ☘

 フリージアの目の前にいる芋虫は、首を45度程捻り、前顔に配置されている複数の赤い目を、何故かエヴァの方に向けている。


「よくわからないが、それは私に失礼。」


 フリージアは、縮地と言われるのであろう動きで一気に距離を詰め、一匹また一匹と……その捻っている首を削いでいく。


 残るは、エヴァ側にいる3匹なのであるが、明らかにその動きはフリージアの狩ったもの達とは異なり、餌を狩り尽くす『ハンター』の動き。


 第3階層に着く前に対峙したそれとはまったく異なる動きに、エヴァは驚かされるも、カイト姐さんから「タイマンなら中層級でも何とかなる」と言いせしめた、その努力に裏付けされた技術で、それらが放つ粘着糸を躱していく。


「んんー。何で私にだけそんなにやる気満々なんだよー!」


 エヴァは苦い笑みを浮かべながら、その内の1匹に向けて小さな身体を縮めて低い体勢で踏み出し、通り過ぎる勢いを利用して サクリ―― と『きゃっぴー』の魔核を2つにする。


 残りの2匹も何事もなく泡に返したエヴァ達は、取りあえずは地面の残された糸を拾い一旦マーガレット達の元に戻ってくる。



 ✿


 リンデンは、顎の先を親指と人差し指で摘まみながら、その目は半目となり少し先の地を見つめている。


 私達以上に、何かが気になっているようだね……と、彼女達は、彼の邪魔にならない声で感じた違和感を話し出し、エヴァは今しかないであろう時間の中で、メモを書き加える。


 ◇

― ☘

 リンデンは当然、あの『きゃっぴー』達の赤い目の動き……エヴァを一斉に見る目線を思い出しながら、引っ掛かっている何かを考えていた。



(あの目が見ていたのは、エヴァさんそのもの? いや違う! それならば、ここに来る途中で、彼女は真っ先に襲われているであろう。)


(彼女達の話では、『きゃっぴー』全てがここを目指していた……? ならその時に、ここにあった物? あ……。)


― ☘

「エヴァさん。先程拾っていた『レッドスライム』の外殻は今何処に?」

 考え込んでいたリンデンが急に立ち上がりエヴァに聞く。


「ふぇえ……びっくりした。この殻のことかな?」

 メモを書きながら、彼女なりに考えをまとめていたそのタイミングで、突然口を開いた彼の言葉にエヴァが驚いて答える。


― ☘

「やはり持っていましたか……。僕の推測でしかないけど、いいですか?」


 右手を小さく挙げ、自信なさげに言うリンデンにフリージアが言い放つ。


「考えるのがお前の仕事。その考えに『私達はしっかり耳を貸す』。だから自信をもって話す。おどおどな態度はイラっとするから。」


 口は悪いのだが、リンデンには、これ以上ない期待の言葉である。

 彼は、自分の眼に光を籠めて、自分の意見を、自分の言葉で、口早に話し出す。



 ✿ ✿ ✿


 サーシャは、『迷宮』ギルドの執務室に入り、まずは上役のシトラスに話を通す。

 第2階層への調査は当然話が進んでおり、そのタイミングで「双舞子ダブルダッチ」からの提案である。


 シトラスは二つ返事で手続きを部下に命じる。


 ◇


 手続きには少しだけ時間がかかることを熟知しているサーシャは、その時間を使って、エヴァ達の行方を、世界樹と繋がるあの『謎キーボード』を起動し、調べだす。


「やはり、まだ帰還をしていないわね……。今いるのは、第3階層に向かう『マザーの子』から南西から少し奥に進んだ平原辺り。それで……え?」


― ☘ 

 サーシャは、彼女達の導きの妖精(ナビゲーター)に名前が表示されていることに驚く。だが、これなら……導きの妖精(ナビゲーター)を使い直ちに帰還するように、メッセージを送ることが可能かもしれないと期待を寄せる。


 だが、彼女のその期待は、結論から言うと叶わない。


 それは、名前の付いた導きの妖精(ナビゲーター)がまだ生まれたばかりの赤子のように、該当機能として成り立っていないからだと《《彼女は考え》》、残念……と、小さなため息を漏らす。


― ☘

 だが、溜息を付きつつも、エヴァがまだ迷宮にいることが分かり、急がなければと思い席を立とうとした彼女は、ひとつの『怪しい動き』をする3つの迷宮探索家フローターの影を見つけてしまう。


 彼らは、『マザーの子』に向かって逃げていたように思われるが、その途中で足止めを受けたように留まっている。時折、影がピクリと動くことから、戦っているようにも見え、サーシャは嫌な予感を覚える。


「よし。手続きが終わった。「双舞子ダブルダッチ」に動いてもらえ。」

 シトラスが書類を持ってサーシャの元に来る。


「シトラスさん……これなのですが。」


― ☘

 サーシャは、恐らくはモンスターに囲まれて身動きが取れないであろう迷宮探索家フローターの影をシトラスに見せ、額の汗を拭う。


「はぁ……。お前さんの考える通りだろう。これも「双舞子ダブルダッチ」に伝えとけ。こっちは何かあったら追加報酬でいいだろう。」


 シトラスは、お金を模った指の「丸」を広げ、両手の掌を天に向けるジェスチャーと苦笑いで、サーシャにそう言った。


 ✿


 依頼として体裁が整ったことを確認して、サーシャがロビーに急ぎ舞い戻ると、相変わらずの混乱現状に嫌気を覚えるの彼女であったが、まずは、この依頼を「双舞子ダブルダッチ」にと、騒ぐ新人を払い除けて、彼女達をカウンターに通し正式な発注手続きを迅速に済ます。


「お前も大変だな♪」


 カイトは、他人の不幸を笑うようにサーシャにそう言うと、フローラを連れて『マザーツリー』の方へ向かって歩き去っていった。

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