第27話 秘めたる強運と魅力の欠片
「よう! サーシャ、何があった?」
少しだけ、神経を研ぎ澄まし圧のある顔で、カイトがサーシャに迫る。
「カ…カイトさん。実は……。」
サーシャは、その圧力に負け「双舞子」の2人の耳元で、彼女が把握している事態を説明する。
当然、それはエヴァのことも含まれていた。
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「ふーん。第2階層で異変か……。確かに珍しいな。
そもそも、あんな狩場で世界樹が騒ぐなんて有り得るのか?」
「私も、あの迷宮探索家フロンティアで起こる事件なんて、あの迷宮探索家同士の些細ないざこざくらいしか聞いたことがありません。 それで……すみませんエヴァさんもまだ安否が。」
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「あぁ、それは大丈夫だ。俺達が鍛えた末っ子だぜ? タイマンなら中層の雑魚くらいにまでなら余裕で勝てるだろうし、あいつには、ほら……『あれ』がある。」
あれ? と思うサーシャであったが、エヴァの ”あの” 能力を思い出す。
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「『強運』……ですか?」
「場合によっては、エヴァのその『強運』が何か仕出かしたのかもしれないぜ? はっははは。」
「そんなことって……。」
確かに、試験の時に感じたあの『強運』は、彼女を守っているような、得体の知れない怖さのような……そんな感覚を私は覚えた。
だが、あれは『不運』に近いようなことを巻き起こす、そんな質が悪い性質のスキルでもないと感じた。
サーシャはそう思い言葉を詰まらす。
「いやまぁ、『強運』が何かしでかすってのは冗談だからそんな顔するなよ。でも、仮に、あいつが何かに巻き込まれていたとしても、その『強運』で、どうにかしちまうんじゃねぇーかな?」
カイトは、サーシャがそんな顔をするとは思わず、少し歯切れ悪く言う。
フローラは、そんなカイトを見て笑いながら、ひとつの提案を投げかける。
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「フフフ。 でも、エヴァちゃんにとっては今日が初めての迷宮だものね~。どう?私達に調査クエスト出さない? 今なら、格安で行ってあげてもいいわよ? 」
……あの「双舞子」が珍しく、自らクエストを受けると言ってくれている。
それにエヴァ達のことも……心配だ。
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フローラからのその提案を受けたサーシャは、詳細な事態の把握と併せて、彼女たちへのクエストを発注するため『迷宮』ギルドの奥の間に急いで消えていく。
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「見えた! あの木の根元だよね?」
はぁはぁと少し息を荒げながら、エヴァ達は『スライムエリア』に辿り着く。
「皆さん、あちらに!」
マーガレットが指さす方、木の根元の少し左側で、必死にナイフを振りながらスライム数匹と戦っている恰幅のいい男の子がいた。
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左足を怪我しているのであろう、その場から動けずに、今にも倒れそうになりながら、何とか立っている。 そんな処であろうか。
「チッ――――ッ!!!」
見かねたフリージアが、剣を下段に構え身を低くし疾風の如くスライムに向かっていく。
―――乱れ逆さ袈裟切り
5匹は居たであろうスライムを、一瞬の剣先で細切れにしていく。
「何があったの! 明らかにここが異常。そして、ここにはお前がいる。答えて!」
フリージアが覇気を込めた声で、恰幅のいい男の子 リンデン・ビバーナム に言い放つ。
彼は、助かった安堵とフリージアの覇気に圧倒され、その場に腰から崩れ落ちるように尻を地に付け、震える声で彼女からの問いに答える。
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「僕が、先代からの教えを無視したからいけないんだ……。甘く見ていた。そして、失敗してしまったんだ……。」
やっとの思いで、震える声で、話したのであろう彼に対して、フリージアは躊躇せずに間髪入れずに、彼を尋問するように話を続けていく。
「そんな言葉では分からないし伝わらない。『何を仕出かしたのか』この状況から生きて戻りたいのなら、お前は、しっかりと、言葉を選び、紡ぎ、適切に、私達に伝えるべき。」
天真爛漫な彼女が、鬼神の如く怒っているのが分かる。
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……あ、それではダメだ。今の彼には届かない。
エヴァは、軽く目を瞑り、呼吸をひとつ吐き出してから優しく彼に尋ね直す。
「ねぇ君、何があったの? 何を甘く見ていたの? 何を無視して、何を失敗したのかな? 少し落ち着いてからでも大丈夫! もう一度ゆっくりと話してみよ!」
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最後に ”にかっ” と白い歯を見せて笑うエヴァに、
リンデン・ビバーナムは、ゆっくりと魅了されていく―――。
そして、落ち着きを取り戻して、ぽつりぽつりと語りだした……。
今日の投稿はここまでです。
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