第20話 『花』魔法の演奏会
「本当に、大したことないと思うよー。」
エヴァは、2人の仲間と3色の妖精のキラキラする瞳にたじろいながらも、エヴァは申し訳なさそうに言う。
「な~んでもいいの!!」
「そうですわよ! ★ スキルを見たいのです!」
あ~ダメだ。これは、お誕生日プレゼントを晩御飯まで隠したいのに、直ぐにでも見せろ見せろと迫って来た、あの時のカイト姐さんの顔だー。
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エヴァは、『花』ルーンのお守りを握りしめる。
隠頭花序の隠れ花の如く、示す者の活力を内より活性せよッ―――
―― ✿『花』魔法 ガジュマルの花
タリスマンを握るエヴァの左手から、螺旋状に回る「緑」と「オレンジ」の光が放出され、一度地面に消える。
そして、フリージアの足元からその光が現れ、彼女の全身を回るように包み込む。
「「おおおおおお!!!」」
妖精を含めた、みんなの尊敬の眼差しが、エヴァには少し照れくさい。
「な……なんですの? 光がくるくる~って回りながらフリージアさんを包みましたわ! フリージアさんお加減ははどうなのです? ど・う・な・の・です~?」
マーガレットが、興奮して手をバタバタさせながらフリージアに迫る。
「わぁ、体軽いよ? 何だろう……体に良い食べ物を食べた後みたいな? 温泉に入った後のような?」
フリージアが、手をぐーぱーして感触を確かめながら、短めのスカートを、ひらりとなびかせ、ジャンプを繰り返す。
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「えーとね。今の魔法は、『花』魔法ガジュマル。 身体を中から活性化させて、自然治癒力や新陳代謝を高める魔法なのだけど……。」
「うんうん!」
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「疲れの回復や、熱いところや寒いところで、活躍する魔法だから……。今は、多分ちょっと元気になる? ……くらいでしゅ。」
エヴァは、冒険が始まったばかりで疲れもなく、また、過ごしやすい気候のこの階層では、大した効果を示さない魔法と思っていたため、とても申し訳なさそうな顔をして説明をする。
「はぁ?」 「え?」
「そ……そんなものなの『花』魔法なんて。まだ、私レベル低いし。えへへ……。」
2人の反応を見て、上唇を少し前に出し、肩を小さく縮めて下を向くエヴァ。
「い……いえ。特殊な気候に対処できる魔法ですって?」
「疲れを回復する魔法、自然治癒力を増す魔法?」
「う……ん……。」
『『 何なの! その凄い魔法!!! 』』
マーガレットとフリージアが、これでもかというくらい大きな声で叫ぶ。
「ふぇ?」
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「ふぇ? じゃありませんことよ!! 完全にではないにせよ、この『未知なるダンジョン』で、その階層の『気候』に左右されにくくなるのですわよ?」
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「長期戦の疲れで、ジリ貧な状態でも『活路』を見いだせる。どの位かは分からないけれど、「自然治癒力」が活性化すれば、アイテムが切れても、『多少の毒や病気なら回復出来る』かもしれないんだよ! うわぁ。この魔法かなりヤバめ!」
2人は、恐らくは、その『効果の優位性』を全く理解していないであろうエヴァに、驚きながらもそれを説明する。
「そ……そうだったの!? 姐さん達からは、『健康器具』みたいに使わされていた魔法だったので、大したことない魔法なのかと。」
「うわぁ。それは『花』魔法の無駄遣い……。」
「あらぁ。流石といいますか、豪快ですわね。」
ここに来る途中、少しだけ聞いていたエヴァの娼館での生活から、娼婦達の自由奔放な振る舞いを想像して、彼女達はそれぞれの思いを口にする。
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「わたしにも、『ガジュマルさん』をお願いしますわ。」と、マーガレットに頼まれ、エヴァが魔法を掛けてあげると、彼女は、「うふふふ」が止まらなくなり、嬉しそうにはしゃいでいる。
そんな彼女を先頭に、うりぼんの肉を拾って妖精ちゃんに収納して貰う3人。
ここら辺は、うりぼんの生息地なのか、2度も群れと遭遇をし、肉を確保する。
魔法の効果からなのか、元気がいっぱいの二人に翻弄されながらも、この時間が楽しくて堪らないのはエヴァも同じで、わいわいと狩りに勤しんでいたのだが、メモを取っていて「あ!」と気が付く。
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「ね! そろそろ『第3階層』に行かなくちゃじゃない?」
「「あ!」」
少し浮かれすぎたかな?と、3人は少しだけ反省をして、真剣に次の階層を目指そうと話し合おうとしたのではあるが……。
「ところで、第3階層の入り口って何処ですの?」
「ふぇ?」
マーガレットのその一言に、2人も一緒に首を傾げていた。
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時を同じくして、エヴァ達から少し離れた場所でデビューして数週間の『新人』達が狩りをしていた。
質のあまり良くないであろう武器で、必死にうりぼんやスライムを狩る彼ら。
前衛であろう剣を持った2人の男の子に、魔法職なのか杖を持った女の子。
そして、ナイフを片手に震えながら、必死に倒したモンスターが残すアイテムを拾う、少し恰幅の良い男の子。
4人で構成された「普通の新人」パーティである。
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どうやら、そのパーティ。アイテムを拾う男の子に、周りの子達は辛く当たっているように見受けられる。
それを思わせる会話が、感覚が鋭く耳が良いフリージアには聞こえて来てはいたのだが、今は次の階層への手掛かりを探すことが先決だと、彼女は(気にはなったけれど)仲間達とそのままその場を立去ったのであった。
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