第16話 洗礼の笑唄
エヴァ、マーガレット、フリージアの3人が、目を輝かせているを確認して、サーシャは、「ひとつだけ」伝えて部屋を去ることにする。
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「では、楽しんで行ってらっしゃい! マザーツリーの位置は知っているわね?」
エヴァとマーガレットが顔を見合わせ、にっこり笑って言う。
「勿論です!」
その答えを聞いて、サーシャは後ろを向く。
「OK! マザーツリーについたら、導きの妖精が、その名前の通り導いてくれるからね! 何か困ったら無理せずに戻ってらっしゃい。」
「わかりましたわっ! では、皆さん早速行っちゃいましょう!」
「うん!」
「うひひー!」
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これが、通常の新人研修なら、私も第2階層まで着いていくのだけれど、『特S』は、そこも自由なのよね。ならば、あなた達に『目の上のたん瘤』は、いらないでしょう?
教われば、素直に聞きそうだけれど、あなた達はそうじゃない。
誰に言われた訳でもなく、自分で選んだ道。自分で決めた突き進む未知。
それを、切磋琢磨して、自分たちで解決することを楽しみたい子達。
私は、そんなメンバーを選んだつもり。
「恐れなく、楽しんで行ってらっしゃい――。」
サーシャは、優しい眼差しで、彼女達に目を向けることなく背中で送り出す。
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「サーシャさん。いい担当さんっだね!」
「ええ! 第3層まで行くクエストだから、楽しんでらっしゃい! 以外は、何も制限なくですものね。」
「きっと、自分達で分からないことも考えて楽しめ、と言ってくれたんだよね。」
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初日から、自由で、まさに『冒険』をさせて貰える3人は、お互いを見ながら「ウシシ」と白い歯を見せる。
「わたくし達、似た者同士ですわね。」
「そうだねー!」
「なら、サーシャさん。私達のこと良く見てくれている。グッジョブ!」
「さぁ!行きますわよ!」
マーガレットのその言葉で、3人はお互いの手を叩き合い、『迷宮』ギルドの外に向かう。
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玄関ホールに3人が差し掛かると、少しだけ悪そうな人が近づいてくる。
「お嬢ちゃんたち。新人の迷宮探索家ちゃんかなぁ? へっへっへー。俺様自らが、手取り足取り、色々と教えてあげよう~。」
行き成りのことで「きょとん」とするも、「あ!」と思う、エヴァ ☘
「おーこれが有名なあれか!」とわくわくする、フリージア ☘
「あら、冴えない殿方だこと。」と笑顔で見下す、マーガレット ☘
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3人が受けた彼への印象はバラバラなれど、思ったことは同じ。
―――これ、迷宮探索家に認められたってことだよね!?
「おー! おじちゃん。有名な『テンプレ』する専門の人?」
「あら。毎日大変ですわねぇ。」
見下す笑い顔で言葉を返すふたりとは違って、エヴァは嬉しそうに言う。
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「はじめまして! 今は私達、『知らないことを楽しみたい』ので、また聞きたいことがあったら、教えてください! 『ありがとうございます。センパイ!』 」
疑いのない大きな声で、新人を煽る輩に向かって言ったエヴァの「ありがとうございます。センパイ!」の言葉が、ホールに響き渡る――。
それを見ていた、周りの迷宮探索家も、ひとりふたりと笑い出し、最後は歓声に変わる。
「ははは……おー姉ちゃんたち! くっく……困ったら俺達も力になるからな!!」
「良かったじゃねぇーか! ザ~コイチ~ぱ~いせん!」
どうやら、見た目少し怖そうな人は、ザコイチさんと言うらしい。
マーガレットとフリージアは、「ザコイチ……雑魚①……あぁ。」と苦笑して彼を見るも、エヴァは、更なる きらきら で「雑魚①」パイセンにそれをぶつける。
「ザコイチセンパイ! 今後とも宜しくお願いします!」
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周りは、更にヒートアップして笑い転げるが、当のザコイチは、その「エヴァの笑顔」を見て、少し顔を赤らめながら、カッコつけた態度で彼女に言う。
「お……ぉぅ。。何か困ったことがあったら何時でも……聞きに来なよ。」
「うん! ありがとう!」
そのやり取りを、間近に見ていたマーガレットとフリージアが「あははは……」と笑いながらエヴァの肩を押し、大盛り上がりの『迷宮』ギルドを後にする。
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「ふぁ……。あれを、あんな返し方をしたのは、はじめて見たわよ~。」
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当然、何かあったらと身構えて見ていたサーシャではあったのだが、「魅力……と強運かぁ」と言葉の末尾に付け加え、ため息交じりの笑顔でそう呟いた。
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予想通り?予想外の展開? を終えた3人は、中央広場に着く。
ふたりから散々「サーシャさんが言って居たことが分かった」と、ザコイチ先輩への対応を弄られて、ちょっぴり嬉しそうなエヴァであったが、『マザーツリー』を目の当たりにすると、真剣な顔立ちとなる。
それは、マーガレットもフリージアも同じ――。
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3人は、マザーツリーの前に歩み寄り、そして、導きの妖精を掌に乗せる。




