第14話 出会いの賛歌(Ⅱ)
受付カウンターから、広めの廊下に出て、少しだけ装いが変わった雰囲気を楽しみながら、エヴァとマーガレットはサーシャの後に付いていく。
「ん?」
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エヴァは、何か視線のようなものを感じ一瞬足を止めるも、出会った「最高の友達」と、今から見る「新しい仲間」との出会いへの喜びに負け、その感じた何かを払拭する。
「あら? エヴァさん。どうかしましたの?」
足を止め、眉毛を八の字にしたエヴァに気が付いたマーガレットが気遣う。
「ん~? 何か見られてるような気がしたのだけど、この装備目立つから、それでかなぁ……なんて。あはは。」
「目立つ……と言いますか、素敵な装いで、エヴァさんにとっても似合ってましてよ。 赤の皮の服がとても美しいですし。私も、あなたに見とれてしまいますもの。」
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「ありがとう! でもでも、マーガレットも白に紺色の基調が素敵な服で、銀の肩当や胸当てが ぴかぴか してて、どこかの『貴族様』みたいで、すっごくすっごくかっこいい!」
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「あはは……ありがとうございます。」
貴族と言われて、少し歯切れが悪いなと思いながらも、今はエヴァに悟られないよう、マーガレットはお礼を返す……。
✿ ❀ ✿
サーシャに通されたのは、5~6人用のミーティング室。
荷物を置けるようなスペースと、少し大きめな机が、迷宮探索家達の冒険の成果を並べたり、まだ見ぬ新しい地の地図を広げたり、そこは流石『迷宮ギルド』の施設なのだなと思わせる。
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「ふたりとも、紹介するわね。こちらは『フリージア』さん。 あなた達と同じ「特S級新人」の迷宮探索家で、暫く組んで貰う仲間よ。」
「よろしく! 私はエヴァ。」
「マーガレットです。よろしく。フリージアさん。」
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「うん、よろしく! わたしは、フリージア! 剣士をやっているわ! あなた達は何が得意なの?」
無邪気な笑顔で接してくるフリージアに、ふたりは好印象を持つ。
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「わたくしは、弓を得意としていますのよ。後……訳ありまして神殿行事を少々お手伝いしておりましたので、僧侶の資格を持っていて、回復魔法も得意ですわ。 エヴァさんはどうですの?」
そう言えば、「友達になれそう♪」と思えたのが嬉しくて、マーガレットに、彼女のことを何も聞いていなかったや、とエヴァは思う。
それは、マーガレットも同じだったようだ。
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「私は、剣を使うのが好きなので片手剣を使うのだけれど、実は、得意なのは少し変わった魔法なの。 えっと、『花』魔法というレアスキルで、 ★ スキル。」
「まぁ! まぁまぁ!★だなんて凄いですわ! それに、『花』魔法だなんて、なんて可愛らしくて、エヴァさんらしい。」
「 ★て……何?」
フリージアが、首をちょこんと傾けて聞いてくるが、ここで、サーシャが一度間に入る。
「フリージアさん。その質問については、後で私から説明するから、少しだけ待っていてね。」
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「うふふ。 最初の挨拶は、皆さん好印象だったみたいだね。簡単な自己紹介を済ませてくれたので、私が皆さんを紹介する手間が省けたわ。」
「あ、ちょっと待って!」
エヴァは、申し訳なくもサーシャの言葉を遮り、小さなメモ帳を取り出す。
「何してるの?」
フリージアが不思議そうに覗き込む。
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「私に色々教えてくれた、元迷宮探索家のお姐さんが、現役時代に、仲間のことや気が付いたことをメモしていて、時間のあるときに、仲間とわいわい意見交換をしていたんだってー! だから、私も、『初めての仲間』のふたりのことをメモしているの!」
「へぇ。いい習慣ですわね。 失敗したときや、困ったとき、きっと役に立ちますわっ! エヴァさんその時は、見せて下さいませね。」
「おー!」 パチパチパチパチ―-。
フリージアは、感心したように拍手をする。
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「あはは……。あなた達、私が想像してた以上に『ウマ』が合いそうね。」
サーシャは、思った以上に打ち解けている3人を見て笑い、これなら、これから説明しなければならないことを、話しても大丈夫だなと、胸を撫でおろす。
「3人とも『特S級』で新人になったのだけれど、何が評価されて『特S級』として合格となったのかを、私から仲間の皆さんの前で、各々説明・紹介するね。」
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『特S級』での、迷宮探索家合格。
それは、ステータスや実技試験の結果だけではなく、スキルなどにより一芸に富んだ者を、また、将来性が見込まれる者を、担当官が見極め、査定し、世界樹の不思議な力が、それを承認して初めて合格として認められる特別な新人階級。
サーシャは、ひとりづつの突出した能力について、本人に……そして、何よりもチームを組む『他の者』へ伝えていく。
将来、この情報を知ることが、対立する者同士の策略や陥れることに使われる「悲しい情報共有」とはならずに、『仲間同士の絆』となってくれることを、心から祈りながら、彼女たちの今は無垢な笑顔の瞳を見て……。サーシャは、ひとりづつ、丁寧に、それを伝えていく――。




