第131話 大人達からの『エール』
「あひゃひゃひゃ~。エヴァああ! やっぱお前が歩くと何かが起きるのな!? くっそ面白れぇえなぁ、おい!」
―――偶然の爆発2回で『アリ穴』ダンジョンに落ちて、『勇者』仲良くなって、蟻の女王に導きを貰って帰ってきた……。だから、セビオの企みが起きたことなんて知らなかった。
「『アリ穴』報告会」で、リンデンからあったその報告を聞いて、
……カイトが笑い転げている。
◇
「信じられん……。伝説の『聖智龍』が『アリ穴』の管理者で、『勇者』の師……あのファフニール氏だったとは……。」
神殿と関わりの深い『迷宮』ギルドの長を務めるリッチモンドでさえ、
その報告に驚愕している。
「驚いたねぇ……にょにょ猫の次は蟻の女王とはね。」
ルイゼも、エヴァ達の運命とも言えるその出来事に目を丸くする。
― ☘
「しかも~、5国『5迷宮』の真実、5国『万象』のことを聞いて帰って来るなんてね~。さっすがフリージアちゃん! 私の愛娘よねぇ♪」
どうやら、5国『万象』の事実をアリアも知っていたらしく、彼女はそれに辿り着いたフリージアにご満悦のようだ。
報告を聞いた彼等の反応は、三者三葉の捉え方であったようにも見受けられたが、リンデンが蟻の女王から聞いた話で最も驚いた ”5国『万象』” については、ルイゼもギルド長も知った事実であったようだ。
― ☘
その驚き方を見る限り、彼等は『守護者から真実を聞いたこと』に驚いているようにリンデンは感じ、やはり彼等は一歩も二歩も自分達の知る先を知っていて、もっと大きな何かに目が向いているのだなと、彼は悟る―――。
✿
「しかし……話は聞いてはいたが、君達がこの短い期間でここまでの歴史の確信に触れているとは、本当に驚きが隠し切れない。」
ギルド長が、チーム『大空』の面々を見て言う。
「そうね……。」
ルイゼが垂れ下がった長い髪を掻き揚げてエヴァに言う。
― ☘
「……エヴァちゃん、ここに居る人達は、少しだけエヴァちゃんが見つけた『世界樹の真実』の『先』を知っている。」
「うん。」
― ☘
「黒猫や蟻の女王から聞いた話の「続き」を知りたいかい? 私はもう「まだ早い」とは言わないよ?」
「え! 女将さん、それ本当!!!?」
ルイゼのその言葉に、エヴァの顔が明るく花咲く。
「やったぁ! 『まだ早い』卒業だね! 嬉しみ~! あ、でもね女将さん。話の続きは、私はいいや!」
「ほう?」
― ☘
「黒猫の精霊さんも蟻の女王も、お馬鹿な私でも、中々会えないのは分かってるの。でもね、だからね、今は皆で冒険して、自分達で続きを見つけたいなぁ~って。その方が楽しいじゃん!」
「いいねぇ! エヴァちゃんならそう言うと思ったよ!」
エヴァならきっと、純粋に仲間との冒険を楽しみながら自分で答えを探すことを選択すると思っていたルイゼは嬉しそうに笑う。それを見たエヴァも「えへへ~」と頭をかいて笑い返す。
― ☘
でも、ルイゼは
「それはそれ、これはこれ」と、組織についての注意については彼女達にしっかりと促していく。
「でも、これだけは言っておくよ……。今回のセビオの狙いはそこに居る『勇者』だった。そして、『今回』は外れたけれど、エヴァちゃん《《も》》ターゲットだった。」
「え? 私も?」
― ☘
「そう、彼等の……セビオの後ろにいる『組織』の狙いは、恐らく『★ スキル』と『神秘の涙』。だから、エヴァちゃんにニュー、マーガレットちゃんのイエロースライム…………」
― ☘
「フリージアちゃんの『刀』もよね~♪」
「そうだったね。要はあんた達は『組織』にとって宝箱みたいなものなのさ。」
「だから~、目の届く範囲で私達は勝手にあなた達に関わるわよ~? まぁでもぉ? あなた達はそれに気が付くことすら出来ないと思うけどね♪」
― ☘
ふたりの「母親」の言葉には、決意ともとれる力強さがあり、その言葉を聞いて、エヴァ達の顔は真剣なものへと変わる。
「それに、ギルドも表立っては動けないが、君達に対する悪意には目を光らせる。100%安心しろと言い切れず申し訳ないが、全力で陰からサポートすることだけは私が約束しよう。」
母親達の決意を受け取ったその表情を察したギルド長が、続けてそう宣言する。
「そういうことさね。だから、困ったら言えばいい。知りたいことは聞けばいい。ただね、チーム『大空』……。」
ルイゼは厳しい顔を解き、にっこりと優しい顔で言う。
― ☘
「お前さん達はまだ若い。そんなことは頭の片隅に置いておく程度でいいから、全力で―――『世界樹の迷宮』を楽しんでおいで!!!」
『はい―――!!!!』
ルイゼが代表して言った「大人たちのエール」に、エヴァ達は大きな声で返す。
✿ ✿ ✿
「ところで、『勇者』だが……こっちはどうしたものかねぇ?」
エヴァ達はいいとして、問題の勇者をどうしたものか……と、ルイゼがサーシャを見る。
― ☘
「ニュー君は、エヴァちゃんの『上客』でライバルだから『大空』には入れないそうでしゅ……。」
まだ ”ニュー客ショック” が尾を引いているサーシャが噛み噛みで答える。
「はぁ? 『上客』? エヴァちゃん、そりゃどういうことだい?」
サーシャは何を言っているんだ?
と、眉毛をハの字に歪めたルイゼがエヴァに聞く。
「あ! そう、そうなの女将さん! 私の初めてのお客さんなの! 『勇者』ニューが私のお客になっていっぱい貢ぐの! 私いっぱい儲けちゃうんだ!」
「ふぇ?」
流石にルイゼでさえも、この言葉に腑抜けた返事をしてしまう。
― ☘
それを聞いてリンデンは、「エヴァさんのこの言い方は……素なのでしょうか、ワザとなのでしょうか」と呆れながら、『勇者』の特性と『膝枕』についてルイゼ達に説明を入れる。
それを聞いたルイゼは、必死に……笑いを堪えながら、
「……初客、ぷっくくく。それなら、娼館の客じゃなくて……あんた個人の…客ってことで、稼ぎは好きにしな……ぷははは。」
と、エヴァに言う。
「えー。でも折角のお客なんだよー。私もお姐さん達みたいに綺麗なおべべ着て私専用の部屋で『よく来たね~こっちへおいでぇ~』ってやりたい~。」
― ☘
「……っくく。あ、うん、ごめんね。あんたの部屋がないんだよ。あ、でもそういうことなら、きっといい場所が『そのうち用意』されるから、それまで待ってな! なぁアリア? プッ、あははは―――」
耐え切れず笑うルイゼがアリアを見ると、アリアは、
― ☘
「そうね♪ あなた達、明日は冒険休みにしてうちに来なさい。《《面白いもの》》を見せてあげる……フフフフフ。」
と、悪い顔で笑うのであったが、
― ☘
フリージアはその義理母の顔に『企み』を感じ、そして、「キモイ誰か」のことを忘れている……そんな感じがして、その誰かにイラっとするのであった。
◇
因みに、その時のカイトはというと……。
エヴァが『膝枕』を頼まれた時に言った、『でもね……わたし。―――『高いわよ?』』という、自分が教えたその言葉に「この馬鹿、本当に言いやがった」と再び笑い転げ、破裂しそうな横隔膜の痛みとの格闘にヒーヒーと言っていた。
✿ ❀ ✿
ところで、エヴァ達の話となると、次から次へと変な話が沸いてきて、相も変わらず話が脱線してしまったのであったが……。
―――肝心な『勇者』の処遇についてである。
エヴァとニューの「びっくり関係」に、娼婦達の笑いが収まらない中、
― ☘
その処遇について、ローズヒップがひとつの提案を口にする。
珍しく口を出して来た彼女の発言に、娼婦達も笑いを止め、その言葉に耳を傾ける―――。




