第130話 『D』級昇格 終わり良ければ、全て良し!
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「おー『花』魔法がレベル上がったんだ! 『サボテンの花』覚えたからかな? 強運はよく分んないけど。」
エヴァが思い出したようにそう言う。
「そですわよ! 後で試そうと話していましたのに、砂漠のコテージに着いたら即帰還ですもの! わたくし実はとても楽しみにしてますのよ?」
マーガレットは新しい魔法を楽しみにしていたようで、試す時間を持てていない現状に少しご機嫌が斜めのようだ。
「私と模擬戦をして確かめればいい。」
フリージアが刀をカチンと鳴らして「フッフッフッ」と笑う。
「え? え? 新しい魔法で遊ぶの!? 僕も遊びたい!!」
その話を聞いたニューが、子供に戻ったような顔で参戦してくる。
「はぁ……新しい『花』魔法を覚えたって、あなた達一体何があったのよ!? 後でそれも聞かせてね……。」
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(何で、ギルドのゴタゴタに巻き込まれて新しい魔法覚えて帰って来るのぉ!? これも……強運? 聞くのが怖くなって来た……。)
『アリ穴』での出来事をまだ知らないサーシャは、それに驚きながらも、ギルドの事情なんて関係ないと言わんばかりの彼女達の振る舞いに呆れてしまう。
「てか、エヴァばかりズルい! 私は? 私は?」
「ですわ! ですわ!」
当然というか、当たり前というか―――。
続けて、ふたりの娘が騒ぎ出す。
(あぁ……そうね、気になるよね。ふたりとも負けず嫌いだもんね。それに、リンデン君も自分の現在地を理解して活かすタイプだし……。)
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サーシャはそう思いながら、チーム『大空』の面々のステータスを確認する。
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「マーガレットさんは器用さが上がり、弓の扱いを研鑽した結果が出ていますね。」
「まぁ!!」
「フリージアさん! 剣術スキルから『刀術スキル』が派生してるわよ!?
レベルは……4!? 凄いわね。」
「おーおー!」
『いえーい♪』
ふたりは、パシンッと互いの掌と掌を重ねて喜び合う!
「後はリンデン君ね。君は体力、力、器用、敏捷と上がってるわね! ……といっても元は最低ランクだったけど。」
「あはは……でも!」
「そうね! 頑張った結果が出てる!」
「はい!」
自身の能力値アップに、リンデンも嬉しそうに白い歯を見せる。
(そっかぁ~ギルドのゴタゴタなんて、彼女達にはそんなことは関係なくって、冒険と試験を楽しんで、ちゃんと努力して、今ここに居るのだものね。)
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「ちゃんと努力の結果が実ってる! だからこそ、『D』級迷宮探索家昇格『おめでとう』!!! もちろんニュー君もね♪」
ギルドで何があったことなんて関係ない。彼女達は頑張ってランカーになって、試験に臨んで、そして、合格したんだ! 最初に伝えるべきは『おめでとう』だよね!
だから、サーシャも白い歯を見せて彼女達を全力で祝う。
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色々とあった、長い長いこの一日。
でも、終わり良ければ、全て良し!
―――本当に彼女達の真っ直ぐには、何時も救われる。
改めて言われた『D』級に昇格の祝いの言葉に、体いっぱいに喜びを表している彼女達を見ながら、サーシャは目を細めながらそう思う。
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『勇者』ニューについては、サーシャはステータスを確認することもなく、既にカードを彼に返している。
それは、彼の「次の担当」が決まっていないこの状態下で、彼にステータスを伝えることはルール違反であると、サーシャが思ったからであった。
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だが、それを受け取ったニューは、自身のステータスのを一同に見せびらかし、エヴァ達に『魅力以外オールS』を自慢し出す。
―――『勇者』のステータス。
当然の如く、セビオが担当であった彼のステータスをサーシャは知るはずもなく、自らが暴露しているそれを目の当たりにして彼女は驚きが隠せない。
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そんな彼のステータスに「ぐぬぬぬ……」と言って悔しがっている三人娘。
「私だって★だし、魅力はニューより上だもんね!」
「あら? わたくしだって矢を5本同時に打てましてよ? 勇者にそれが出来まして? へぇ~出来ない? 出来ないのですか~ふ~ん♪」
「私は、刀術を最近覚えた。覚えたてでレベルが4。フッフッフー、伸びしろ考えるとニューより上。」
よっぽど悔しかったのだろうか?
三人娘が自分の得意なことをニューに自慢し返す。
すると、今度はニューが「ぐぬぬぬ……」と言っている。
暫く続くそんな繰り返しを……気が付くとサーシャは愛おしそうに眺めていた。
そして……ふと彼女は口にしてしまう。
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「ねぇ? あなた達そんなに仲が良いのだから、ニュー君もチーム『大空』に入れてあげたら?」
……と。
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「あ……それは……。」
その言葉にリンデンはあちゃ~と汗を浮かべる。
「ふぇ?」
何か不味いことでも言ったのかな? とサーシャは戸惑う。
「はぁ? 何言ってるのサーシャさん。ニューは勇者でライバル!」
フリージアが腰に手を当て、サーシャに向かって言う。
「そうですわ! 神殿の東と西。白黒付けるのも一興ですもの!」
よく分からない理由でマーガレットも同調する。
そして……。
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「嫌だよ! 折角の私の『お客さん』なんだから、同じチームになったらお金取れないじゃんかぁ! 「わたし高いわよ!」なんだからねぇ!」
「ふぇ?」
「えー、酷いなあ! 僕はエヴァ達とだったら同じチームでOKなのに! あ、でも『貢ぐ』ならダメなのかな? よく分からないや! あははは!」
「おきゃ……おきゃく~。高い……貢ぐ? エヴァちゃん娼婦……ふぇええええ!」
エヴァ達のその言葉に、顔を真っ赤にして叫ぶサーシャ。
彼女のその混乱は、リンデンが『膝枕』のことと伝えるまで続くのだが……。
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ルイゼやギルド長達が到着してすぐに行われた「彼女達の『アリ穴』報告会」でも、脳裏にそれがチラホラ出てきてしまって……彼女は、その報告がまったく頭に入ってこなかった。




