第115話 『勇者』の副作用と、エヴァの魅力(説明回)
✿ 今回と次回は、勇者とアリ穴の説明と解説の回になります。
細かい設定・説明が苦手な人は 「― ☘」 だけお読みください。
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―――まずは、こやつのことを話そうかのぉ。
そう言い出した、勇者の先生ファフニールは、エヴァに少しだけ頭を下げたように思えた。
「さて、『花』魔法の少女、ぬしの言った《《出したくない》》『勇者』の顔というこやつの評価……それは当たっておる。」
「ふぇ?」
「こやつは生まれ落ちたときから『勇者』であって、そのときから「状態異常無効」のスキルを持っておった。従って病気なぞなく、健やかに育ったのじゃが……勇者であっても人の赤子じゃ。腹が減れば泣くし、下の世話を所望すれば泣く。赤子とはそれが仕事であろう?」
ファフニールは、慈しむ目で再度ニューの髪を撫でる
「こやつは、訳あって生まれも育ちも神殿じゃからな、ご神託もあり勇者スキル持ちであることを奴らは知っておったからのぉ。当然、赤子の『勇者様』の世話は、そりゃ~喜んで一丸となってしてくれる。じゃが……、」
少し……言葉を詰まらせれ彼女は話を続ける。
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「……じゃが、こやつは、他人にあやされても泣き止まん。笑わん。他人が《《こやつの感情に触れるような行動》》をしても……届かんのじゃ。生まれ持っての『勇者スキル』の「状態異常」が、それを受け入れんかった。」
「え!? それは今もですか? ですが、それならば先程のエヴァさんの『魅了』スキル……あ!? あれは状態異常ではない!?」
ずっと黙っていたリンデンであったが、子供回帰でべそをかくニューを、エヴァが魅力であやしたのを見ており、そこに違和感を覚えていた。
それもあり、堪らずに蟻の女王ファフニールの話に口を挟む。
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「ふむ、ぬしは良い目を持っておるのぉ。じゃが『花』魔法の子に聞いておらんのか? 恐らくこやつは『魅了』なるスキルは持っておらぬ。」
「え……?」
リンデンは、エヴァに「そうなのですか?」と顔を見る。
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「ふぇ? 私の持っているスキルは、『花』魔法と女将さん達のスキル、それに『強運』だけだよ?」
「そうですわよ? ノートにも書いてあることでなくって?」
「あのキラキラはエヴァの人間力。恰幅考えすぎ!?」
「そう……なのですが、でも、それなら単純な能力値で? それでは説明が。。」
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(しかし……『強運』持ちじゃと!? 運も『S』だとしたら、世界樹の奴め……まぁよいわ。)
「ふむ、仕方がないのぅ。」
蟻の女王ファフニールは少し渋った顔をしながらも、少し困惑をしているリンデンに説明をしてくれる。
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「よいかぇ? 恐らくは『花』魔法の子の魅力ステータスはSであろう?」
「ん? そだよー。」
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「この『魅力S』というのは、普通じゃ辿り着かないステータス値じゃ。勇者ですら魅力だけは『A』までしか上がらん。」
「ふぇ? そうなの?」
「うむ、恐らくは『花』の美しさとでもいうのかのぉ? 『花』魔法スキルを所持して底上げされた魅力とも言えるが、それも含め単純にぬしの人生で培った純粋な魅力と考えて、それは、誇ってもよいものじゃ。」
「あ……。だから、だからこそニューさんにその魅力が届いた?」
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「ほう。賢き者よ、その通りじゃ。簡単に言えば「状態異常無効」の副作用は、自分より上のステータス……即ち『魅力S』を所持するものには副作用としての悪さが出来ん。」
「やはり!? あ!!! それでは、貴方も『魅力』が?」
「うむ。ぬしの洞察の通り『S』じゃ。」
「なるほど、だからニューさんも貴方を「先生」として受け入れて話を聞いてくれた……。だから貴方の前では、貴方に怒られれば素直な子供のように泣きじゃくったということですか。」
「うむ。話が早くて助かるのぉ。」
「いえ……恐れ入ります。」
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「えーとさぁ……。この会話のくだり、何かトラウマなんだけど?」
フリージアが、イライラした顔でリンデンを見る。
「えーとですね。要はですね……。」
話の要点を説明しようとするリンデンを征してファフニールが「妾が説明する」と、自慢げに話しだす。
「今の話、分かり易くすると『ニューは「勇者」じゃから、自ら孤独を選んでおったが、ぬし等ならは『友達』になれるかもしれぬ』と、いう話じゃ。どうじゃ? 分かりやすかろう?」
「要は、友達になってあげて欲しいということ?」
「そう! そういうことじゃ! 流石、妾じゃ! どこぞのバカ猫とは違って説明が上手かろう? 凄かろう?」
「バカ猫? まぁ、おばさんウザイけど、例え分かりやすかった。」
「お……おばさ!? 妾をおば……はぁ。これだから小娘は嫌いなのじゃ!」
フリージアに「おばさん」と言われ、むくれるファフニールであったが、久々に雑に扱われて内心嬉しい気持ちも持っていたのは内緒である。
「えーと? まぁまぁ、女王様。『勇者』ニューの孤独。そして、エヴァさんと『女王様』がとっても素敵だということが良く分かりましたわ。」
「お! そうかそうか、妾はとっても素敵かぇ? そうじゃろうそうじゃろう。」
それでも、褒められると嬉しくなり調子に乗ってしまう女王様。当然、マーガレットもそれを承知で煽てているのだが、そろそろ本題にという思いもあり、
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「勿論ですわ! ところでですが……「ここは何処」で、「貴方様は何を」なされているのか、そろそろお話頂けます?」
と、脱線した感が否めない会話に終止を打つ。
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「ふむ、主らはここが『アリ穴』ダンジョンなのは分かっておるな?」
「ええ、存じております。」
「このダンジョンが何階層まであるかは知っておるかえ?」
ファフニールは、今度はリンデンの方を見て聞く。
「確か……5階層までだったかと。」
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「ふむ、流石博学よのぉ。ここはその5階層、最奥の迷路の先にある『蟻の女王の間』じゃ。」
「え? では、ダンジョンボスの間ということでしょうか?」
「違うのぅ。そのボスの間から更に奥ある「秘密の間」とでも言えばいいのかぇ。」
「未踏の領域のようなもの!? ……でしょうか?」
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「ぬしらが知っている言葉で言うと、ここは『ルートオブセブンスフロート』のような空間じゃろうな。」
「!?」
チーム『大空』の面々の顔が四者四葉の顔となる。
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「ええ顔になったのぅ。この迷宮も、ある意味であの戦争……200年前の『盟約』の産物じゃて。」
ファフニールは、膝で眠るニューの頭をひと撫ですると、ここからは、蟻の女王としての話なのであろう、この間に入って始めて質朴剛健の表情となり、マーガレットの問「何をしているのか」について語りだす。




