第116話 5国『5迷宮』✿5国『万象』
✿ 引き続き、アリ穴やこの世界の説明と解説の回になります。
細かい設定・説明が苦手な人は 「― ☘」 だけお読みください。
蟻の女王ファフニールが、最初に語りだした『アリ穴』ダンジョンと自信の存在意義、それに纏わるキーワード。
―――『ルートオブセブンスフロート』・『あの戦争』・『盟約』
― ☘
話を思い出してみると彼女は自慢げに「あのバカ猫より」と言った……。
この話の出だし。
リンデンだけでなく、当然3人娘にも衝撃が走る。
最も、リンデンの眼は既に7色の光を帯びており、彼が何らかのゾーンに再び入っていることから、彼の考察は他の3人のそれとは次元が違うのだが。
「ん。恰幅が変てこモードに入った。これなら任せて後で要点だけ聞けばいい。」
「ですわね。わたくし達は、御伽噺を聞く気分で♪」
「いぃ~や! 私は推理しちゃうよおお! 『犯人は~~~!?』」
「それ面倒、ダメ。」 「エヴァさん、大人しくなさって!」
妖精の『もも』と一緒にキメのポーズをしようとしたエヴァに、フリージアとマーガレットが冷たく止める。
「うー。」『うー』
上唇を尖らせて唸るエヴァと『もも』。
その会話を見ながら蟻の女王が、人差し指と人差し指をつんつんさせながら、下目使いで彼女達に言う。
「あのなぁ~。妾は今から真面目に話すのじゃが……。そろそろ話しても良いかのぉ? 最も賢きおのこは、何やら面白いことになっておるようじゃが。」
リンデンの虹色の眼を見ながら蟻の女王は興味ありげに言う。
「僕の眼も、彼女達の自由もお気になさらず。どうぞ続けてください。」
「ふむ、ぬし、完全に ”逝って” しまっておるのぉ。まぁよい。」
面白いとファフニールは思うが、蟻の女王としての言葉を続けることにする。
✿
― ☘
「この世界と世界樹の理と『盟約』について、偶然であろうと必然であろうと、ここまで辿り着いたぬし達は知る権利がある。これはこの『迷宮』の本来あるべき理由で、これもまた『盟約』のひとつであるとも言えるのじゃが……。」
蟻の女王は、リンデンを見て言う。
「ここからは、ぬし達の会話から察するに、賢きおのこが中心に話を聞く―――で、良いのじゃな? 名はリンデン……で良かったかのぉ?」
「あ、失礼しました。リンデン・ビバーナムと申します。」
「ビバーナムじゃと? あやつの出が確か……。」
「!? 賢者リウムは叔父になります。ご存じでしたか。」
「ニューの世話で『神殿』に長年厄介になっておったからのぉ。」
「なるほど。」
「まぁ、それは良いとして、話がズレたのぉ。」
エヴァ達の話から、リンデンがこのチームの頭脳であり、また、話の流れから彼が『賢者』の身内であることを悟り、蟻の女王がリンデンとの『対話』を楽しみだす。
― ☘
彼女もまた、『智』を司ると言われた古代龍種『聖智龍』の末裔であり、賢き者と語り合うのが好きであり、じゃれ合うよりも今はそちらの好奇心が強いと言ったところであった。
✿ ❀ ✿
「さて、リンデン。ぬしはこの大陸に「ダンジョン」が幾つあるか知っておるか?」
― ☘
「確か……『世界樹の迷宮』『アリ穴』『不死山』『海底』『氷河古代湖』の5つでしたでしょうか?」
「うむ、呼び名は『迷宮』ギルドのそれじゃが、一応合っておる。」
「その内、世界樹だけが突出して広大で高難易度ダンジョンであるのは?」
「はい、聞き及んでいます。その他は、凡そ世界樹の中層程度ですよね?」
この大陸には、規模は『世界樹』と比べかなり小型にはなるのだが、世界樹の他に4つのダンジョンが存在する。
その規模は、『アリ穴』がそうであるように大体5階層前後で構成されており、その難易度はいずれも『世界樹の迷宮』の中層程度である。
― ☘
「そうじゃ。これは200年前の戦争に起因するのじゃが、それは単純に―――世界樹が勝ったからに他ならぬ。」
「!?」
「当時の大国と呼ばれ戦争で争ったは3国。エトルリーニア大陸のほぼ中央にある国『フィデニア王国』、北部の『イシリス共和国』、南部の『オールディン帝国』じゃ。」
リンデンは、その話に食い入るように聞きいている。
「それに加えて、イシリスについた『氷の国ロヴァミエ』、そして、フィディニアについた……この砂漠のあった国、『アサールム法国』。当時、この大陸には5つの国があったのじゃが。」
― ☘
「はい、その5国の復興の為に、大陸統一を成したエミリア=ロマーニエが盟約を用いて『ダンジョン』を作り、少しづつですが各国はダンジョン攻略を通して復興していった……と記憶しております。」
そのリンデンの答えに、蟻の女王は「ふむ」と小さく呟く。
「それは、間違ってはおらぬが、完全に合っているとは言えぬのぉ。」
「え?」
― ☘
「ダンジョンと化したのは、この『星』の自然じゃ。その自然の下に人は集い国が生まれた。」
「!? 5国『5迷宮』……。5国『万象』?」
「うむ、そうじゃ。リンデンよ、その言葉を知っておるのなら、ぬし達に伝わる5国『5迷宮』その伝承を言えるかぇ?」
「あ、はい……確か。」
リンデンは、この国で吟遊詩人に謡われる『ダンジョン創生譚話』を覚えの限りではあるが、蟻の女王に語る―――。
― ☘
” ―――資源を巡り、永く続いた大戦の後、5国の傷跡は壊滅的なものであった。
最期に立っていた者、即ち、第4代フェディニア国王女帝エミリア=ロマーニエは、その惨状に嘆き、盟友世界樹に復興の恵みを望む。
―――その慈悲は、王国だけに留まらず、敵戦国であったイシリス共和国、オールディン帝国、そして、いずれかの国を指示していた氷の国ロヴァミエ、アサールム法国にも「復興の恵み」をもたらす『盟約』と成す。
―――その恵み、豊富な資源をもたらす、復興試練の象徴。人々は、それを『ダンジョン』と呼んだ。
その盟約による復興の旗印「5国5『迷宮』」―――。
フェディニア国 :森羅万象『世界樹の迷宮』
アサールム法国 :砂漠『アリ穴』
オールディン帝国:死の火山『不死山』
イシリス共和国 :海の底『海底』
氷の国ロヴァミエ:永年氷河『氷河古代湖』
各国は、その恵みに復興の希望を抱き、平和裏に和睦を結び、大陸の争いの火種はここになくなり、5国『万象』の恵みに人々は謝意を表した。”
― ☘
「うむ、妾にも聞こえてくる伝承はぬしの話したそれとは違わん。じゃが、この謡われておる物語は、真実とちぃとばかり『順序』が違うのじゃ。」
蟻の女王の告げるその言葉に、リンデンの眼の七色は輝きを増し、彼女もまた「ほぅ」とこの座談会を楽しみ出す。




