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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第9章  ✿蟻の女王と5国『5迷宮』
114/132

第114話 勇者と先生の『膝枕』

 フリージアが見とれる程のニューの自然体の構え。

 だが、その構えの先にあるものを、彼女は同時に捉えている。


 彼の構えは、例えるのなら、

 森にどっしりと根を下ろす大樹のように、雄大で。

 さらさらと音を立てて流れる小川のように、穏やかで。

 暑さに耐え忍ぶ中、頬っぺたを優しく撫でるそよ風のように、優しく―――。


 構えから伝わってくる、自然の穏やかさ。


― ☘

 火山のような凄みも、氷河のような凍てつく鋭さもそこにはなく、相手に向ける殺意がないのである。


(ん? これはまるで、御師様が稽古で時より見せるあの表情のようなもの?)


 フリージアは、ニューの蟻の女王(アントクイーン)への思いのようなものを感じながら……ふたりの時間を見守る。


 ✿


「僕の質問に対する答えは?」

 と、ニューに問われて少し頭を捻りながら考える蟻の女王(アントクイーン)


「勇者ちゃんは、妾にどんな答えを望んでおるのじゃろうかのぉ?」


 案内蟻のぎーちゃんに蟻の女王(アントクイーン)がそう聞くと、ぎーちゃんは「ギギギッー!ギ~……。」と、ジト目で女王に何かを訴えている。


「まぁ、そう言うでない……分かっておるわぁ。」


 蟻の女王(アントクイーン)は少し困った顔でぎーちゃんに言う。

 そして、はぁ……と息を深く付くと、


「それで、勇者よ―――。妾に剣を向けると意味を分かっておるのじゃな?」


 細目で笑っていた目をぎろりとした目に変え、女王が勇者に凄む。


 その顔にニューは……。

― ☘

 「うぅ~。」と、凛とした勇者の顔から、親に怒られた子供のような半べその顔へと変わって項垂れている?


「ふぇ?」

 その顔に、互いの顔を見合わすチーム『大空グランシエル』の面々。


 うぅ~と唸りながらも、やっとの思いで「少年ニュー」は、女王に向かって尖らせた口を開く。


― ☘

「―――だってさぁ。久々に『先生』に会えたかと思ったら……蟻の女王(アントクイーン)とか、『聖智龍』とか、変なことしてるし~! 僕が居るの分かってて呼んだような口癖だったし~! でも、よそよそしくて、何かさぁ、寂しいじゃんかぁ~~。ふえーん。」


(あ……泣いた?!)

 エヴァですら、突然のその光景に目を丸くする。

 そして、遅れて脳裏に届くニューの言葉。


「ふぇ? 『せんせい』?」


「うん……ぐすん。この人は僕の先生、『ファフニール先生』だよ。久々に会ったのに……ふぇん。こんなところで蟻と戯れているんだもん! 僕のこと他っておいて! ふぇえええん。」


「え? あ。うんうん。大丈夫だよ~ニュー。この女王様、さっきからニューのこと、お母さんのような優しい目で見てるから……大丈夫。ね?」


― ☘

 ニューを慰めるように、でも、きらきらと目を輝かせ、エヴァの『魅力』がニューに向けられる。


「うん……。」

 子供のように頷くニューの頭をエヴァは「よしよし」と撫でると、不安を抱く子供の顔をしていたニューの顔に落ち着きが戻っていく。


「よしよし、びっくりしちゃったんだよねー。だから、《《出したくない》》『勇者』の顔を出しちゃったんだよねー。」


 白い歯を見せてニカッと笑うエヴァを見て、蟻の女王(アントクイーン)……ファフニールが少し驚いた顔をする。


― ☘

(ほう……『花』魔法の子。《《出したくもない》》と言いおったわ。しかも、状態異常無効という勇者スキルの、『副作用』ともいえるこやつの『孤独感』を和らげおった!? 恐らくは『魅了』持ちなのじゃろうが、あれは天然よのぅ。魅力は『S』かぇ? ふむ……。)


「ギー!!!ギギギギギギギー!!!!」


 それを見ていたぎーちゃんが、我慢の限界と自身の女王ファフニールに向かって腰に手を当てて怒っている。


「えーい、五月蠅いわい。分かっておるとゆーておろうがぁ!」


 透明感のある黄色の髪の毛を両手でぐしゃぐしゃとして、彼女はニューの前に歩み寄る。


 ❀

― ☘

「まぁ、なんじゃ……ニュー。久ぶりよのぉ、、、」

 ばつが悪そうに、片目を閉じてニューに向かって言う。


「ごめんなさい。先生が訳のわからんことしてるから、僕、つい……。」


「あぁ~もう! 謝らんでもよい。妾も ”おいた” が過ぎたようじゃ。しかし妾に向けた剣先、殺気は乗っておらんかったが、自然体で良い構えであった。成長したのぅ。」


「うー、先生。」


 抱きつく勇者ニュー。

 それを、困った顔でそれを受け止める蟻の女王ファフニール。



「ふん。殺気が乗ってない美しいだけの構えと、あのおばさんの目。私は何となく分かってたんだけどね!」

 フリージアが、何故かリンデンに向かって胸を張って自慢する。


「ふぇ? えっと?」

「ウフフフフ。「あなたよりも見る目がありましてよ!?」と、彼女は自慢をしているのですわ。」


 マーガレットが、フリージアの頭を撫でながらリンデンに言う。


「は……はぁ。」

 良く分からないなぁ、とリンデンは首を傾げるが、フリージアの鼻はつ~んっと伸びまくっている。


 ◇


― ☘

「それで、お初にお目にかけます。導師ファフニール。西の神殿で修練を積んだ『マーガレット・フォン・マルガリーテス』でございます。」


 マーガレットは、スカートの裾をちょこんと摘み「本名」を名乗りながらお辞儀をする。そして、


「正直、わたくし共は『おまけ』で『蟻穴』に落ちたようで、何が起きているのかさっぱりなのですわ。出来れば……ご説明を頂けると助かりますの。」


 社交界で見せるような不敵な笑みをしたためて、マーガレットは蟻の女王(アントクイーン)に尋ねる。


 ✿


「すまんかったのぉ。妾も『アリ穴』の主ゆえ、ビシッ!っと登場しようとしたのじゃが、この馬鹿弟子がびっくりしてもうてのぅ……って、フフフ、寝ておるわ。」


 久しぶりの再会だったからなのであろう。

 女王に抱き着き寝てしまっているニュー。


 ファフニールは優しく弟子を膝枕し、ニューの猫っ毛を愛おしそうに撫でる。


― ☘

「まぁ、こやつも寝てしもーたし、ゆっくりと話そうかのぉ。それで、そちは『西』の神殿の修練者かぇ? そして、成程。マルガリーテスの者か……。確かにスパティによぉ似ておるのぉ。」


「あらぁ、お母さまをご存じで?」

「白々しいわ。知っておったじゃろ!?」


「さて、何のことでしょう?」

「まぁ、良いわ。それでじゃ……何から話そうかのぉ。」


― ☘

 『アリ穴』ダンジョンの蟻の女王(アントクイーン)、『聖智龍』の末裔、そして勇者の先生ファフニールは、弟子の勇者ニューの頭を膝の上に乗せながら、ゆっくりとチーム『大空グランシエル』の面々の顔を見渡す―――。

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