第113話 『勇者』と蟻の女王、古代龍種『聖智龍』の末裔
同じ砂漠試験中なのですが、新章として別けさせていただきます(^^♪
砂漠のモンスターパレード。
フィオレ達の暗躍により、それが発覚したその頃。
『勇者』ニューとエヴァ達は、案内蟻に誘われ『アリ穴』のダンジョンを奥深く進み、やっぱり「探検」を楽しんでいた。
「ひょえええ! 本当に砂の洞窟がずううと続くんだねぇ!」
『ずううと ひろいー』
― ☘
案内蟻と何故か手を繋ぎ、”ぶんぶん” と手を振り進むエヴァと、蟻の肩に居心地良さそうに座っている妖精の『もも』。
「ギギッ―♪ ギギギギー!」
どうやら案内蟻も楽しそうで、時折何かを伝えようとする。
「なんか、あんた達仲良しになってるわね……。それ蟻のモンスターよ?」
そんなふたりを見て、フリージアが呆れて言う。
「えー? だって『ぎーちゃん』悪い子じゃないじゃんかぁ!」
『ぎー いいこ!』
「ギギギー♪」
「あはは、ぎーちゃんって……蟻に名前、エヴァさんらしいですね。」
リンデンも、驚きというより呆れて笑う。
「いいね、エヴァ♪ この蟻も本当に楽しそうにしてるし、僕もエヴァと蟻が手を繋いで、『もも』が蟻の肩に乗ってる姿を見れて、人生丸儲けだよー! ハハハ―。」
ニューも、その光景を物珍しそうに見ながらも、とっても楽しそうだ。
「しかし、あんたも変わった勇者様ね? 堅っ苦しい奴より全然良いけど。」
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「んー? 僕は、そーゆーのが嫌で『ひとり』だからねぇ~。でも、僕もフリージア達なら堅っ苦しくないから楽しいよ?」
「うふふ、まさか、あちらの神殿に貴方みたいな方が要らっしゃるとはね。あちらも……相当お堅いですし。」
「そうなんだよー! マーガレットも知ってると思うけど、ほら、特に老人達がねぇ……老害レベルだよ! でも、世話にはなってるからなぁー。」
「ぁ……お察し致しますわ。」
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上の砂漠では、「あんなこと」が起こっているかなんて、想像すらしていない5人は、こんな他愛のない世間話を楽しみながら歩みを進めていく。
そして、遂に「ぎーちゃん」が案内する目的地に到着するのであった。
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「おー! 砂の迷路の中にこんな立派な扉が~!」
『おーおー』
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高さ4mはあるであろう大きな観音開きの鉄の扉が、エヴァ達の目の前に現れる。
施された装飾からそれが普通の扉ではなく、何か特別の扉……そう、まるで王宮にある謁見の間のような大扉がそこに、どっしりと鎮座している。
「ギギギー、ギ~ギ!」
案内蟻のぎーちゃんが、「開け~ゴマ!」みたいな何かを唱える。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
すると、地響きのような音を立てて、エヴァ達を待っていたかのように、その重い扉がゆっくりと開いていく。
◇
扉か開いたその先は、まさに『謁見の間』であった。
50m角程の広い広間に、必要かは分からない謎のバロック風装飾もりもりの柱、敷き詰められた大理石の床に赤絨毯まで敷かれている。
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砂色が黄金色にも見えて、まるで黄金の間。その先にある階段5段のひな壇の上にある立派な玉座。そこに、何者かが鎮座している。
「良く来たのぉ、勇者と『花』魔法を継し者と、その一行。」
その玉座に座るその者は、深く艶やかな女性の声でエヴァ達に語り掛ける。
「ギギ―ッー。」
ぎーちゃんは深く深く頭を下げ、エヴァ達を玉座の方へより丁寧に連れていく。
◇
玉座に座ってるのは、黄色いスルリとした長い髪が妖艶で、純白のノースリーブのドレスに黄金のティアラに首飾りが眩しい美しい女性。
そして、玉座の前まで一行が辿り着くと、鎮座している女性が再び口を開く。
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「妾は、この『アリ穴』ダンジョンと呼ばれる迷宮の主、この迷宮では『蟻の女王』と呼ばれる者。こう見えても、その昔、砂漠の地を収めていた『聖智龍』と呼ばれる智を司る古代龍種の末裔じゃ。主らに合わせて人の姿をしているがのぉ。」
「!? 蟻の女王? 古代の龍種?」
その言葉に一同は驚く……驚いているのだけれど、目が爛々、興味津々の顔をして「おーおー!」言っている。
「なんじゃ? 予想していたのとちと違うのぉ。もっと驚いてくれるかと期待しておったのじゃが?」
蟻の女王が少し残念そうに言う。
「え~驚いてるよ~? だって龍だもん! ドラゴンだもん! しかも古代の偉い人なんだよね!? それが、私たちと同じ人間の姿なんだよー! 凄いじゃん、カッコいいじゃん!」
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エヴァが……あぁ、完全に自分の世界に入って蟻の女王、古代龍の末裔にそれをぶつけている。
「そ……そうか!? そうかのぉ。凄いかのぉ? カッコいいかのぉ?」
その尊敬の眼差し? 珍獣を見るかのような目? を向けるエヴァのきらきらに蟻の女王の機嫌が戻り、嬉しそうに胸を張る。
「ふぇ……。」
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その調子に乗り胸を張る女王の姿にリンデンは、
(あぁ、この方のこの反応……。また、このタイプの人が増えましたね。はぁ……)
と、お守りの対象が増えたような気がして、内心で大きなため息を漏らす。
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「で? わざわざお ”使い” を寄越して僕達をここまで呼ぶなんて、『アリ穴』の女王様が何の用なのかなぁ~?」
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その声の先―――そこには、紛れもない『勇者』ニューが居た。
子供の様な振る舞いをする彼ではなく、凛として世界を救うのであろう風貌の彼が、ここで初めて彼の導きの妖精を見せる。
手の甲から現れるコバルトブルーに光る導きの妖精。
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何故なのだろう? エヴァの導きの妖精『もも』が、「わあー」と感嘆の言葉を口にする。
導きの妖精から出す彼のその剣は、この試験で帯刀していたそれとは明らかに違う。
絶対的高位の品―――、まるで意思があるかのようなオーラを纏っている。
「な……何あの剣? 明らかにレア度が跳ね上がってる。」
フリージアがゴクリと唾を飲み干す。
― ☘
「ん。伝説の勇者の剣―――なんて言わないから大丈夫だよ。君のその『刀』と同じさ。『神秘の涙』じゃなくて、エッセンスは神殿の恵みだけどね。」
「!? あんた、この『刀』に気が付いていたの?」
「まぁいろいろとね。」
フリージアの『刀』をチラッと見てニューの口元が微笑む。
「で、でだよ、『アリ穴』の女王様。僕の問いには、何って答えてくれるのかな?」
ニューは、足を肩幅、剣を片手で持ち中段の構え、そこから、少しだけ腰を落とし剣先を蟻の女王に向ける。
凛としていて、でも、無駄な力が入っていない美しい姿勢の『勇者』ニュー。
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―――綺麗な構え。無駄がない……いや自然と一体となっている。美しい。
フリージアは、時が止まったかのように、うっとりと……その構えに見とれてしまうのであった。




