第110話 3チーム『戦線』対モンスターパレード
「ふむ。スフィンクスは全部で4体ですね。ウノ2体行けそうですか?」
レイピアを持つ手を背中に回し、体を2回転で2回宙返り、新月面宙返りでモンスターパレードを超えていくマーカス。着地と同時に、その足元に居た哀れな砂漠の魔物を細切れにするのを忘れない。
前進しながらも、右に左にまるで雨を避けるように、ウノも頷きながらスフィンクスに向かい、すれ違うモンスターを切っていく。
「そうです。止めを刺す必要はありません。『その傷』が後々ひよっこを助けるでしょう。よろしい、どれだけ腕を上げたか見せて御覧なさい。」
そう言うマーカスの剣の先は、既にスフィンクスの脳天に突き刺さっている。
その仕留める気配に自分との差を感じ、ウノはごくりと唾を飲み込むが、今の自分の仕事は彼と同じことだと、気を取り直しスフィンクスにナイフで刻みにかかる。
このスフィンクスという魔物は、『砂漠の民』と言われるように、上半身は人型で、下半身はライオンのような4足歩行をする魔物。
背中には羽が生えており、飛べはしないが、跳躍時にその羽を使い一瞬宙に留まることが出来る。それが案外面倒くさい。
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そして、一説によれば、緑一色の目は、砂漠の魔物を狂暴化する力を持ち、その眼光が赤く染まったとき、砂漠の魔物の怒りの矛先を操ることが出来るという。
マーカスは突き刺したレイピアを持ち上げながら、「赤ですね」と腰をとんとんと叩きながら小さく呟き、それを投げ捨てる。
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ラウスは3つのチームに迷宮探索家達を振り分ける。
まず、ラウスを中心として組んだチームを『Aチーム』として、後から到着した20名の内、パーティを組んでいる面々を中心に10名を選びまとめる。
次に、残りの10名を『Bチーム』として、3年目の男性職員トルドに任せる。
最後に『Cチーム』はライティアのチームだ。
彼女が預かるのは、先に到着しローズヒップに返された8名。
これは、最初に砂漠に着き優秀な2パーティを、新人のライティアに付けるというラウスの配慮であったが、ライティアとしては、『ローズヒップとセビオに遭遇した』彼等から、移動中の雑談として、その時の話を改めて聞けて、都合が良かった。
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布陣としては、『最前線』にAチームを置き、その後方でCチームが抜け出したモンスターを叩く『最後の壁』となる。
そして、Bチームが『遊撃』の立場を取り、劣勢の方を援護するのだが、これは、Bチームの面々がソロ若しくは即席パーティであったことから、その方が良いと判断したからであった。
また、このトルドという職員は弓使いであり、後衛の立ち位置からの指示系統の立ち位置を得意としており、そこまでをしっかりと考えているラウスの指揮能力は、目を見張るものがあった。
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(モンスターの足が ”遅く” なっている? 『風耳』のじいさん達が仕掛けた?)
ライティアは『もともとの職業』から、モンスター達の進撃速度について、自分なりに自信を持って見積もっている。
それが、『5分も遅れている』ということは、モンスターの足を遅くする何かを、あの2人がしているのだと気が付く。
(恐らくは、私達が遭遇するときには、『その作業』は終わっているはず。
ならば、焦って進むよりここで構えるのが『吉』よね。)
そう思い、ラウスに報告に行く。
自分の目測よりモンスターの足が遅かった。その為、その時間はこの場の足固めにあてれる。と、それだけを伝え自陣に戻る。
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案の定、時間がない中での少しばかりの待ち時間を、ラウスは有効に使う。
最も、戦術面において伝えれたのは、Aチームの面々に無理をしない効率重視の戦い方を簡単に指示をした程度であった。
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だが、併せて伝えた、「逃した敵を倒す最後は壁であるCチームの役割」と、「辛いときにはBチームが助けに来る布陣を敷く」という安心感を、その短い時間にAチームの面々に精神的余裕として植え付けることができた。そして……、
―――この『5分の教え』がもたらした余裕は、この戦線の行方を左右させる。
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そして……。
遂に訪れる、砂漠のモンスターの進軍と、迎え撃つ最弱ランクの迷宮探索家前線が交差するとき。
敵モンスター最前線の『砂リザ』数10体、距離100M―――。
『―――Aチーム。行くぞぉおお!!! 稼げよ!!!!』
ラウスの怒号に、再び鼓舞するAチームの迷宮探索家達。
『Cチームも移動するよー! 突っ込まないでしっかり最後の壁するからね!』
ライティアも声を張り指示をする。
Cチームの迷宮探索家達も、「セビオとのこと」があり、ローズヒップと同じ考えを持ち、彼女と同じ見解を示してくれたライティアに、信頼を置いてくれたようで、しっかりと彼女の指示を聞いて壁を築いてくれている。
Cチームの左15度先に配置された『遊撃』のBチームは、トルドから、最初の役割として「Aチームを抜けたモンスターをCチームに辿り着かせないよう好きに叩け」とだけ、指示を受けていた。
この、単純明快な指示が、個々で試験に参加しているBチームの面々には、とても分かり易く、それが彼達に自由を与える。
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ファーストコンタクト。
ぶつかるAチームの迷宮探索家10名とラウス。
ラウスが盾役が可能な槍使いであったことが、若手への『受け』の見本となる。
彼もローズヒップと同様に、モンスターのヘイトを引き付けることが出来て、モンスターを引き寄せる。
そして、危なっかしくも、同じくそれに続くE級迷宮探索家タンク役が2名、合計3枚が最前線の壁となる。
『砂リザ』の先発隊は、ヘイトをその盾に引き付けられ、そこを、士気の上がった面々が突き、餌食となっていく。
とはいえ、倍の数のモンスターである。
当然、数体はAチームの脇を通り過ぎていくのだが、ラウスの『5分の教え』がAチームを焦らせない。
前線が体制を崩れないこの流れは、しっかりと次に繋がって行き、Aチームを抜けてきた『砂リザ』は、Bチームの個々の力が、しっかりと各個撃破していく。
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第一ラウンドは、完璧と言える迷宮探索家達の動きで、難なくの勝利となり、幸先良いスタートで戦いの幕は上がったのであった。




