第11話 父の記録
「ルイゼさん。最後は何も言いませんでしたね。……もっと、過保護かと思っていました。」
「明日からの親代わりはあんただろ?サーシャ。 あの子の、親離れ姉離れをするときが来たってだけさ。」
「『よろしく』……頼まれましたからね。」
「ああ。 まぁそれでも、皆エヴァちゃんが大好きだから、見守るしお節介も焼くんだろうね。 あの子が、自分で自分の居場所を選べるようになるまでは、一緒には登らせないけどね。」
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「はは……。 そういえば、私との対戦のときの『あれ』は―――。」
「あんたが剣を弾いたとき、あんたが、きっと感じた『あれ』かい?」
「はい。」
「あれが、彼女の持つ『強運』さ。 彼女しか知らない『花』魔法に、あの得体のしれない『強運』。……怖いだろ?」
「はい。 でも、それ以上に怖いのは、『ぷち風読み』と『ぷち影縫い』です! どう教えたら ★ に最も近いと言われた、お二人の門外不出のスキルを彼女が体得できたのですか! タイミングもばっちりでしたもん!」
「そりゃあねぇ? 家族の愛と絆に決まっているだろう? フフッ」
ルイゼが「にやり」と悪い顔で笑い、サーシャは深く深く、今日何度目かのため息を付く。
✿ ❀ ✿
ひとり、迷宮ギルドの応接室に立ち寄ったルイゼを見送り、サーシャは、自分のディスクで書類をまとめる。 そして、一区切りが着いた為、気になっていたエヴァの父親について調べることにした。
「エヴァちゃんの家名は、グリーンウェルだったよね……。」
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エヴァのステータスを見た装置の小型のものを操作し、検索をかける。
迷宮探索家の情報は、導きの妖精を介して迷宮ギルドで一元管理されており、その歴史は200年弱。 その膨大な情報を元にギルドは、迷宮探索家の傾向を鑑み、安全を導く。
「エヴァちゃんのお歳から考えて、グリーンウェルの家名で男性……そして、探索中に死亡、若しくは行方不明の迷宮探索家は……。 2名いるのね。」
その2名の履歴を見る。
ひとりは、ランクD等級で死亡した男であった。
この人は、違うわね……。 死亡したときにパーティーを組んでおり、そのパーティーが亡骸を連れ帰り、遺族のもとへ送り届けている。
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ならば、もう一人。 この人は行方不明者ね。
恐らくは、こちらが当たり。 えーと。この人の等級は―――。
「ええ!? これは……。 これはどういう……。」
サーシャは、そのもう一人の迷宮探索家の情報を見て驚く。
そして、一通りの情報に目を通し、ひとこと呟く。
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「行方不明になったときの情報が……全く無いなんて……。」
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一方、その頃。
諸手続きを終え、娼館に戻ったエヴァは、先に戻っていた姐さん達に、手荒くも優しい歓迎を受けていた。
はじめは、『特S級新人』での合格を肴に、わいのわいの騒ぐ先輩達であったが、話が対サーシャでの立ち回りになると、目が座り「あの時のあの隙を何故つかなかった」だとか、「私ならこうした!」だとか、言いたい放題。
最後は、女と女の真剣勝負で、《《尻軽く》》負けを認め伸されたことへのお説教。
こればかりは、流石に返す言葉もなく、ただただ反省していたエヴァであったが、姐さん達が、ルイゼから、エヴァが「明日の正午に装備を整えてギルドに行く」ことを聞かされると、そこからは、着せ替え人形状態。
今日の戦いの反省を生かし、こっちの装備だあっちの装備だと、自分のアイテムボックスから、エヴァの実力にあった装備を選び、とっ替えひっ替え。
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その光景を見ながらルイゼは、「見守るしお節介も焼く」とは言ったけど、明日のエヴァちゃんの装備は、新人らしくないものになるんだろうねぇと、フィオレと笑いながら酒を酌み交わした。
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宴は深夜まで続き、結局は、自分の宴席の後始末をすることになったエヴァであったが、その時間が堪らなく愛おしかった。
この役割がずっと私を育ててくれた。
大好きな家族の為に私が唯一出来たことで、それが居場所となった。
― ☘
ひとつひとつを丁寧に片づけ、部屋に戻る。
そして、「貸すだけ」だと言いながら、返しに行っても絶対に受け取ってくれないであろう明日からの『一張羅』 を丁寧に置き、枕の中に顔を埋める。
明日からは、迷宮探索家として、『特S級新人』の冒険がはじまるのだ。
―――そして、まだ見ぬ『仲間達』
昨日に続き、眠れない夜になると思っていたエヴァであったが、試験の疲れもあり、その日は自分でも分からないくらい、直ぐに眠りに落ち、それは、どんな夢であったかは忘れてしまったのだけれど、幸せな……幸せな夢を見たのであった。
―☘序章:Fin ✿
これにて ✿ 序章:世界樹☘の迷宮と迷宮探索家 ✿はおしまいです♪
ここまで、読み進めていただき感謝が付きません。
よろしければ次の章に続きますのでBM等よろしくお願いします♪




