第10話 導きの妖精
「えっと……。私は、その『特S級新人』で合格ということで……。」
「うん。 合格。」
「それって、迷宮探索家に……?」
「そ。 合格♪ 」
頭を「うーん」と悩ませていたエヴァの顔が、「ぱぁ~」と赤みが差し、興奮をして喜びの言葉を口にする。
「やっっっったああぁあああ!!!」
とっても簡単だけど、とっても素直な、嬉しい感情が籠った言葉。
そんな、眩しいばかりのエヴァを見ているサーシャの表情は、エルザ達と同じ顔をしていることに、彼女はまだ、気が付いていないのだけれど……。 最近では、懐かしくなってしまった、澄んだ気持ちの心地よさに、身体は、ほんのりとした温もりを覚え、彼女は喜びと共にそれを実感していた。
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「はい、これ。」
サーシャは、エヴァにエメラルドグリーンのカードを渡す。
「これが、私の『迷宮探索家カード』……。」
「そそ。 あなたの血を一滴たらしてみて。そして発光が終わったら、あなたの左手に、そのカードを……」
「吸い込ませるんですよね!」
「知ってたか。 そうねよね。」
「はい! 何度も《《姐さん達のを》》見てますので♪」
エヴァは、八重歯で親指を軽く噛み、渡されたカードに自分の血を一滴垂らす。
すると、カードは緑色に発光しやがて治まっていく。
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その光景を見ながら、嬉しくて笑みが抑えられない彼女は、恐れも憂いもなくそのカードを左手の甲に押し込む―――。
一瞬、神経がぴりりとするような感覚を覚えるが、彼女は興奮で、その痺れを殆ど感じておらず、すぐさま、掌を上に向けて念じる。
――― 掌には小さな妖精 ☘
生まれたばかりの可愛らしい桃のような妖精
生まれたばかりの迷宮探索家エヴァの
生まれたばかりのナビゲーター
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生まれた『桃色の妖精』は、一度きょろきょろと辺りを見渡し、羽を広げ飛ぼうとするも上手くいかない。
それを可愛いらしいな。 と、エヴァは思う。
何度も何度も頑張る妖精に、エヴァは人差し指で一度それを制し、「がんばれ!」を込めて頭を撫でる。
妖精は、鼻から「ふん!」と一度息を吐き、エヴァを見てコクリと頷いた後、その羽を再び広げ、エヴァの掌から飛び立った―――!
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エヴァの周りを、くるりと周り喜びを表す妖精に、感動の目をキラキラ輝かせたエヴァが両手を広げ迎える。
すると、妖精は一度エヴァのほっぺに「Chu-✿」とキスをして、彼女の肩にちょこんと腰かけた。
「おめでとう♪ エヴァちゃん、これであなたは、迷宮探索家よ!」
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『母なる世界樹があなたを認めた! ようこそ世界樹の迷宮へ!』
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導きの妖精。
彼女・彼らは、世界樹の意思から生まれた導き手。
彼女達が、迷宮探索家の証で、身分証明となる。
主人の掌に入れることができて、必要に応じて、カードと使い分けることが可能な不思議な世界樹の子。
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彼女達は、冒険の光を照らし道を覚え、そして、貢献度を記録する。
世界樹の迷宮の中でだけ発揮する、不思議な力。
迷宮探索家は、彼女達を使ってランクを識別でき、ランカーのランキングの一覧を見れる。
そして、迷宮探索家のLVに応じて、彼女達は、物を閉まってくれる。――俗にいう、アイテムボックス機能。
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それは、戦争からの復興のため盟約に従い、資源を与える迷宮となった世界樹からの、大きな大きな贈り物であった。
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「ん。 これで一通りの登録は終わったかな♪ それで、明日なんだけど――エヴァちゃん空いてる?」
にこりと笑うサーシャンから、明日のお誘い。
恐らくは、初めての迷宮探索家としてのお仕事だ。
「あっ! 空いていますう!」
少しだけ緊張をして答えるエヴァ。
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「ふふ。 察しのとおりよ! ルイゼさん達に相談して、明日冒険できる装備を整えて、正午に私の処へ来てね! あなたの『特S級新人』パーティーを紹介するわ。」
「パーティー……。」
「あら? 怖気づいた?」
「ううん!逆です! 初めての仲間ーー!うれし楽しみーー!」
ああ……また、このキラキラだ。
私は多分、このキラキラに弱い。こんなにもときめいてしまうのだから。
サーシャは、ほっそりとため息を付きながら、少しだけ口元を上げエヴァを見る。
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「OK!それじゃ明日ね。 それと宿題をひとつ。『特S級新人』を卒業するまでに、その導きの妖精に名前を付けて挙げてね。」




