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『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮  作者: 左手でクレープ
第8章 ✿ラセール砂漠✿
108/132

第108話 案内『蟻』とモンスターパレード

― ☘

 『神秘の涙(クオーツ)』、『世界樹の意思』、そして『(スター)勇者』。

 何故、この最低ランクの迷宮探索家フローター昇格試験で、この言葉が飛び交っているのであろうか?


 場所は、王都でも世界樹でもなく、そこから徒歩で1日以上馬車で半日の、樹木も花も少ない「砂漠」の地、更にその底にあるダンジョンの中にいるというのに。


 ……これはやはり!?


 ❀


 リンデンは、マーガリス家のスパティを通じて聞かされている「ギルドの現状とこの試験に見え隠れしている悪意」と、この「世界樹を連想させるこれらのキーワード」を、一色単にして ”壮大な陰謀” として捉えていた。


 それは、ニューという「勇者」の担当者が、あの『セビオ』であったことが大きく影響しており、場合によっては、この全てが『セビオ』による罠である可能性すらも考慮している。


 最も、リンデンのこの考察は、ご存じの通り的を射ていない。


 この状況は、先にも述べたように、「ニューによる無邪気な結果」と「セビオの計算外からくる自滅」による『偶然』の爆破2発によるもの。

― ☘

 実際に、ギルドもフィオレ達も、セビオ含めた組織「ビー・ディ」に加担する悪意でさえも、「エヴァ達が砂漠の下に落ちた」ことなど、予想すらしていないのだから……。


 ◇


 そんなリンデンの葛藤を他所に、『もも』達が示した横穴の「光る何か」から更に奥に進んだ広い ”部屋” で、椅子に座り、足を組み、グラスを傾けながら、何者かが微笑を浮かべる。

― ☘

 実は、この微笑む者こそが、この現状を把握している唯一の人物であり、彼女達を「アリ穴」に誘った張本人である。



 ✿ ❀ ✿


 光りの濃淡で意思を示しているような、横穴の奥から見える灯に誘われて、エヴァ達一行は、その横穴をどんどんと進んでいく。


 わくわくと同時に、警戒を解くことのない勇者とぷち勇者達ではあったが、やはり「蟻」達との遭遇どころか、その気配すら感じない。


 発光するその明度は、進に連れて徐々に高くなって行くのを感じる。

 恐らくは、次の広めのスペース。その発光の光源が、そこにあるのを確信し、彼女達の足は早まっていく。


 そして、踏み入れたその部屋で―――

 待っていたのは、人の背丈程の「蟻」。


 器用にもケンタウロスのように4本の脚で立ち、2本の前脚で「蛍」のような光る虫型モンスターを入れた籠を持ち……。まるで、行燈を持った御者のように、礼儀正しい姿勢で、その蟻はエヴァ達を待っていた。


 ◇


『ギ、ギギギ―、ギーーッ。』


― ☘

 分からない何かを話しながらも、軽くお辞儀をするその蟻に殺意は感じられない。

 また、導きの妖精(ナビゲーター)の『もも』が、エヴァの肩から蟻の肩に宿り木を変えて、敵意なく笑いかけているのを見て、それは大丈夫な蟻なのだなと、エヴァ達は悟る。


「ふーん、案内……蟻? まるで、『にょ』とか言う糞猫が出てきそうな流れ。」


 フリージアが心底嫌そうな顔をしながら、第2階層スライムエリアでの出来事を思い出しながら言う。


「そうだねー。あのときのイエロースライムに似ているよね?」

 エヴァは、何故かそれと《《同じなのだな》》と確信を持っていた。


― ☘

(不思議だなぁ。わたしを待っている気がする。)


 彼女はそう思いながら、横目でふとニューを見ると、彼はそれに気が付き、『多分そうだよー』と優しい笑顔で首をコクコクと振る。


(だよねー!?)

 エヴァも、何故かニューが何を言いたいのか分かる気がして、顔を少し前に出し、「ね!」と、ニューに合図する。


 この、無言での意思疎通。

― ☘

 きっと、その何かが「待っている」のは、エヴァだけでなくニューに対してもであり、ふたりはお互いにそれが分かっているからで、


 その、ほんわりとした関係性は、

 エヴァには、とても居心地が良いものであって、安心感をもたらしてくれる。


「えへへ。」

「いひひ。」


 エヴァのそれと、ニューのそれとが同じなのかは分からないのだけれど、

 でも、やっぱりふたりは楽しそうで、その無邪気に笑い合う顔を見ながら、エヴァの導きの妖精(ナビゲーター)『もも』も案内蟻の肩の上で、嬉しそうに笑う。



 ✿ ✿ ✿


 一方その頃、砂漠の入口に設置されたギルド簡易コテージでは、遅れて到着して来たE級迷宮探索家フローターのランカー達への対応で、内部はごった返していた。


 20名弱の迷宮探索家フローター達が、やっとの思いで砂漠の拠点に着いた途端に、コテージ内待機を命じられたのである。


 しかも、セビオの指示は「待機をさせろ、でも試験の期限は変えない、夜には帰って打ち上げしたいから」であり、彼らを宥める職員達も釈然としない気持ちで、「今すぐ狩りに行かせろ!」と怒っている者達に対応している。



 その騒然とした雰囲気の中、

 背筋を伸ばし、優雅にそして厳かに、ひとりの執事が入ってくる。


― ☘

 そして、その落ち着き払った声で言った言葉は、

 何故であろうか、

 この慌ただしい中でも、全てのものの耳に聞こえてきて、

 そして、それは、彼らの顔を一瞬で青冷めさせる。



―――5分もしない内に、

 100を超えるモンスターがここを通る模様です。ご注意下さいませ。

 

 尚、奴らの目指す先は、南の町アサールムと見受けられます。

 ここで、食い止めなければ、町が……まぁ、心配でございますね。ではでは。



「え? 今のって?」

「100超えのモンスター!?」

「それって……モンスタートレイン!?」

「いや、そんな数じゃない!」


「これは……」


『―――砂漠の魔物の、モンスターパレードだ!!!!!』


 指揮を執るギルド職員が不在の中、只でさえ騒然としていたギルドのコテージ内は、その執事のひとことで、更なる混乱へと陥っていく。

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