第107話 導く『妖精』と勇者の表情
ぷち勇者と言われてむず痒いチーム『大空』の面々。
探しに来たニューがまさかの『勇者』であったことに驚きを隠せなかったが、彼と自分達の共通点をお互いに声を交わした結果、それに納得をしていた彼女達。
御伽噺でよく聞いた『勇者』を目の当たりにして、そして、その彼から「ぷち勇者」と言われ、如何にこの3人娘であっても、やっぱり、むず痒さを感じてしまう。
とはいえ、リンデンと違って彼女達には、そういうスキルと称号を持っているひとりの少年でしかなく、彼に対する尊敬も、畏怖も、敬いすらもない。
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「ところでさぁ、ニュー。ここ何処なの?」
「え? わかんない。」
「えぇー? ニューは私達より先にここに来たから調べてるのかと思った。」
「いやね。魔物もいないんだよ。だから寝てた。 あはは。」
「そっか、じゃー仕方ないね。 あはは。」
「ここで寝れるなんて、神経太い。」
「あら、でも上より涼しくて快適ですわよ?」
また始まった自由と自由のランデブーに、マーガレットとフリージアも参戦する。
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「しかし、正味な話、ここは一体何処なのでしょうか。」
うーん、と考え込むリンデンであるが、実は根っからの御伽噺の『勇者ファン』であり、先程からどきどきが止まっていない。
かと言って、「サインを下さい」なんて言う程、ニューはリンデンが思う理想のそのイメージではなく、勇者へのどきどき半分と、自分の落とされた場所への考察が半分と、少し変な感覚で思考を巡らしている。
と、言っても。
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図書館で「アリ穴」のことを調べた手前もあり、彼の中では、その独特の砂地の地面を食いちぎって、それを横に進めたようなこの横穴から、十中八九『ここはアリ穴だ』と思っている。
また、ニューが作ったと言った「砂の渦」から、『アリ穴』のモンスター『サンド働き蟻』が出てきた事実と、その渦にニューが飲み込まれここにいる事実が重なり、その予想は確信へと変わっている。
この時、リンデンは、当たり前というか、砂漠の真下に落ちたということから、『アリ穴』ダンジョンの地下1階層に居るものだと思っていた。
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だが、ここはダンジョンであり、規模は違えど『世界樹』の迷宮と同じ不思議な空間。彼の予想とは違った、ダンジョンの意思のような現実が、この後彼らに驚きをもたらすこととなる。
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「単純に考えると、ここは『アリ穴』ダンジョンの中だと思います。」
リンデンは、その考えを一同に伝える。
「ですわよねぇ。あの蟻達もあの渦に帰っていきましたし。」
マーガレットも同じ考えであったようだ。
「んー。だとしたら、あの帰った蟻は何処に行ったんだろう~不思議だねぇ。」
エヴァが、またしても寝る前の愛読書の主人公のポーズを真似て、顎に手を置きだす。
「んー。」 カッコいいと思ったのだろう、ニューも真似をし出すのだが、それを見たフリージアとリンデンの眉毛が、不安と嫌な予感でハノ字に歪む。
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その時、エヴァの美しい栗色の髪を、ふわりとした優しい風が通り過ぎた。
その風を感じ、目を瞑って考えていたエヴァの目が『カッ!』と開き、
「はっ! 分かった! 蟻達はあっちの方に居る!!」
と叫び指を差そうとした瞬間―――。
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差そうとした指の手の上に妖精の『もも』がちょこんと乗り、エヴァのほっぺをつんつんとつつく。
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「ふぇ? どうしたの『もも』。」
見せ場を阻止されたようで、呆気にとられながらもエヴァは、彼女の導きの妖精の様子に気が付き首を傾げて聞いてみる。
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『んとねー、んとねー、そっちじゃないのー』
必死に伝えようとする『もも』。
『えとねー、えとねー、あっち?』
マーガレットの導きの妖精『カナリア』も続く。
『きっとね、きっとね、だいじなの』
フリージアの導きの妖精『スノウ・ホワイト』がそう言うと、3人の妖精達が一斉に慌てた様子で舞いだす。
―――そっかー。なるほど、そう言うことね。
君達の導きの妖精は賢いんだね。うん、分かったよ。
これが『勇者』の本質なのであろうか?
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先程まで、我儘なやんちゃな男の子のようであったニューが、凛々しくも慈悲深い顔面となり、くるくると舞っている『もも』達を見てそう言う。
『うん、そうー にゅ ありがと』
嬉しそうに『カナリア』が言う。
そして、エヴァの『もも』が、エヴァのフラグの指差しを真似して……
『あっち だー』
と、エヴァが指そうとした反対側を指差したそのとき。
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指指した横穴が薄っすらと光り、ゆらゆらと、まるで「こっちだよ」と彼達を誘うかのようにその光を揺らす。
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「これは、何かありますわね。」
「ニューが勇者っぽくなって、エヴァのフラグを『神秘の涙』が止めた。間違いない。」
「ふぇええ、フリージア最後の酷いよー。でも……。」
「はい。この導きのような不思議な現象は、まるで……。」
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『―――世界樹の意思!』
その会話を聞いて、ニューの勇者としてのオーラが増していく。
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『神秘の涙』、『世界樹の意思』、君達は本当に『ぷち勇者』なのかもしれないんだねぇ―――。ニューは、そう思いながら、あの無邪気な笑顔とは違う笑みを薄っすらと浮かべ、真剣に話している彼女達を見るのであった。




