第106話 勇者と『ぷち勇者』達
分岐した横穴の影から、大笑いをしながら手を叩き出てくる男の子。
「ありゃ?」
エヴァが、その男の子を見て言う。
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「きみは、『ニュー』だよね!? 無事だったんだねー。」
彼が無事で、ニッコリ笑顔をニューに向ける。
「ほえ? 僕の名前知ってるんだね?」
「ええ、始めに見掛けまして。それで、あなたが向かった方から、爆発があったので、心配でそちらに向ったのですわ。」
マーガレットも優しい微笑みで彼に話しかける。
「爆発……ん~? あ!? あれ、僕、僕!!」
ピースをしながら、ニューも笑顔で返す。
「ふぇええ? あの爆発、君がやったの?」
目を真ん丸にして驚く、エヴァ。
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「蠍が気持ち悪くてさー。しかも「賊」が隠れてるし。
たから倒してね。あいつらが持ってた「爆弾」全部蠍に投げたのさー!
そしたら、砂の渦が出来ちゃって、楽しくくるくるくるくる~!」
「わっ! あれ入ってみたかったの。やっぱ面白かったんだ!?」
「もうね、動けないの! でも、くるくる渦の通りに体が動いてね。凄いの!」
「えー、いいなぁ。私達なんて地割れで落ちたんだよー! 痛いだけ!」
「あー、それは人生損したね。って、地割れ?」
「なんかね、もう一回爆発があって、そしたら、落ちたの! えへへ。」
「あ、それは僕じゃないからね! あはは。」
「ふーん、そっか。 えっと、わたしはエヴァ! よろしくニュー!」
「エヴァ? 変な名前!」
「えー、ニューだって変じゃんかぁー。」
「そう? あははは!」
「うん! えへへへ!」
◇
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(何……でしょう、この会話は……エヴァさんがふたりいるみたいだ。
自由と自由の言葉の応戦? ランデブー?)
(しかし、彼の話を聞く限り、あの死んでいた賊はやはり彼が?
となると、相当な手練れですよね。)
リンデンは、エヴァとニューの会話に呆気に取られながら、彼の言った「賊を倒して」という言葉が気になっていた。
(そして、賊が持っていた「爆弾」って多分……昨日、スパディ様経由で教えてもらった、『爆弾ワームの破裂殻』ですよね? と、いうことは……。)
「ニューさん、はじめまして。」
リンデンは、ニューにそのことを聞いてみる。
「賊が爆弾を持っていたと言ってましたが、爆弾って『爆弾ワームの破裂殻』でしょうか?」
「んん!?」
「それと、その賊に心当たりはあります?」
「お! 君いい恰幅してるね! ぷにゅぷにゅだぁ♪」
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リンデンの質問なんて聞こえっていなかったように、ニューがリンデンのお腹をぷにゅぷにゅ摘まむ。
「ふぇええ、何するんですかぁ~。それに僕の質問~。」
「ん、ああ。そだよー『爆弾ワームの破裂殻』! あれいっぱい持っててそれをドーン!!! あと、賊ねー。聞きたいのは『盗賊の刻印』……かな?」
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「!? そうですそうです!」
「迷宮探索家になってから、あいつらに付き纏われててさ。」
「ふぇ? それは迷宮探索家になってからなんですか?」
「そうなんだよねー。弱いからいつもやっつけるけど。ドーン!」
―――まさか!?
リンデンの脳裏にひとつの仮説が生まれる。
「ひょっとしてなのですが、ニューさんのギルド担当者って……?」
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「ん? セビオだけど?」
「はやり……、内緒なら答えなくていいですが、ニューさんってひょとして、特別なスキルなんて持っていません?」
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「え? 持ってるよ!? 『勇者』っていう ★ スキル。」
「は?」「へ?」「あはは……?」
『『『 ゆ……、ゆ、ゆ、『勇者』あああああああああ!? 」」」
エヴァを除く3人が、眼球が飛び出るくらいの衝撃を受けて驚き叫ぶ!!!
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「なるほど、あの見事な一撃。納得した。」
フリージアが、鋭い目線でニューに言う。
「見事な? 君と戦ったっけ?」
「盗賊の死体を見た。振り向かせることなく、狂いない急所への一撃。」
「あぁ~、殺しはダメって子?」
「別に、私は暗殺者の娘みたいなもの。それに、やり返しただけでしょ?」
「ふ~ん。」
ニューの目も鋭くなり、傍目から見れば一発即発であるが、殺気がなく、そうではないことがリンデンは分かっていて、特に止めることもしない。
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「しかし、勇者様でしたのね~。出身は東の神殿かしら?」
と、マーガレットが『神殿の指輪』を指で掴み、ニューに見せる。
「あ、ん。あれ~落としちゃってたか! 拾ってくれてありがとう。お姉さん。」
「あら、お礼が言える子はいい子ですわよ。勇者くん。」
そう言うと、指輪をニューに返すマーガレット。
「これがないと、神殿のおっちゃん達にすっげー怒られるんだよ。」
「うふふ、知っていましてよ。」
マーガレットが自分の『西』の指輪を見せる。
「あ! 西の人だったかー。西のばっちゃんも怖いもんね。。。」
「あの人は、鬼ですわ! うふふふ。」
「ねー、あはは!」
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「ニューって勇者だったんだぁ。私、 ★ に初めて会ったよー!」
エヴァが、目をキラキラ、わくわくしながら、ニューに言う。
「え?」「はぁ?」「あはは……。」
マーガレットとフリージア、そしてリンデンが、エヴァに突っ込みを入れる。
『エヴァ(さん)も ★ でしょう!』
「ふぇ? だって、私は私に会えないしー! 本当に初めて会ったんだもん!」
エヴァが、また口を尖らせてる。
「お? エヴァも ★ なの? 何の何の?」
今度は逆にニューが、目をキラキラ、わくわくしながら、エヴァに返す。
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「えーとね~、『花』魔法って言うんだ~!!! えへへ。」
エヴァは、白い歯全開で笑顔をニューに向ける。
「『花』魔法!? 何それ、何それ! 後で見せてよ!」
ニューも、白い歯全開で笑顔をエヴァに向ける。
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(あれ? エヴァさんの魅力に影響を受けない? それに?)
リンデンは、最後のふたりのやり取りを見てふと思ったことを聞いてみる。
「聞いてばっかりですみませんが、ニューさん、魅力高いです? それに状態異常耐性無効系のスキル持ちだったりします?」
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「え? 魅力はSだよ。あと、状態異常は勇者のスキルで無効なんだ!」
「やっぱり。」
「へぇー君鋭いね! 君も珍しいスキル持ってるの?」
「こいつのスキルは、観察眼と、生意気にもすべての武器防具を使える特殊体質。」
「生意気ってフリージアさぁああん。」
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「えええ! 君《《も》》すべての武器防具を使えるんだ~!?」
「あ、ニューさんもです!? それもひょっとして勇者の?」
「うん、そうだよ! でも、嬉しいな♪ 『君達みんな僕と同じ何かを持ってる』から気が合いそう~!」
「あら、本当ですわね。」
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「―――アハハッ! 君達はきっと『ぷち勇者』だ!」
本家本元の勇者の資格を持つ男ニューに『ぷち勇者』と呼ばれるのは、やっぱりむず痒いのだけれど、ちょっと嬉しいチーム『大空』の面々。
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だが、彼女達はまだ、ここが『アリ穴』だとは気が付いていない。
そして砂漠の下に落ちてしまい、出口が何処か以前に「アリ穴」の何階にいるかすら考えてもいない。
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この後、彼女達は、何と出会い、何が起きるか。
当然、そんなことなんて思考が追いつくことがない、導かれしチーム『大空』と『勇者ニュー』、そして ★ 『勇者』と『花』魔法との出会いの物語であった。




