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お待たせ致しました。
Ep16エンドロールまで、ストックを書き終わりましたので打ち込み次第全て投稿します。
今回も懲りず、叔母様と公爵の馴れ初め回です。
ある、2月の事。
今日も叔母様がリリアンヌ様の様子を見に来てくださるという事で、俺は今日の公務が終わった後、叔母様に挨拶しようと探しに行っていた。
そうすると、食堂の所に大きな紙袋が置いてありその中にはチョコレートや卵などのお菓子の材料が置いてあった。
それと共に、誰かがキッチンで鼻歌を歌っているのが聞こえた。
そちらに行ってみると、叔母様がまるで軽やかに踊るようにお菓子を作っていた。
「叔母様、楽しそうにお菓子を作っていらっしゃいますね」
「あら、恥ずかしい。聞こえてたなら、いってくれれば良いのに」
と少し照れながら俺に話かけてくれた。
「何を作っていたんですか?」
「ほら、もうすぐ「恋人達の日」でしょう?毎年主人が花束をくれるから、そのお礼にチョコレートを贈っているのだけどその試作を作りたくて。子供達にも今日クッキーを作ってあげようと思っていたから、一緒にキッチンを借りて作ってるの」
「成る程、確かに今週ですからね」
「恋人達の日」というのは、ノーザンデリアでは2月14日に恋人や夫婦で男女関係なく、お互いにプレゼントを贈り合い感謝の気持ちを伝える日である。
カップルでなくても、新しい出会いを求めてその日は社交界や市民のパーティーでもくじ引きで男女のカップルを決め、会場内で一緒に過ごすというイベントも行われている。
俺もリリアンヌ様に花束をプレゼントするつもりだ。
「リリアンヌも誘って一緒に作ろうと思ったのだけど、出来るだけ動けるうちに仕事は自分でしたいと言われてしまったから、こうして一人コソコソ昔みたいに作ってたの」
「リリアンヌ様も、動けるうちにといっていましたからね。そういえば、叔母様っていつからこうしてお菓子を作られるようになったのですか?」
「そうね、主人と会う前だから5歳の時かしら?兄がね、リリアンヌやアイリスと同じように甘いものが好きな人だったから、時々市街でお土産にスウィーツを買ってきてくれた事があったの。それを真ん中の姉とこっそり3人食べていたの。それで自分で作ってみたいと思って、大広間にある本棚からレシピ本を探してコソコソ皆に内緒で作ったのがきっかけかしらね」
「成る程、お二人姉妹が甘いものに目がないのはお義父様譲りでしたか。叔母様はお菓子作りの名人ですから、幼い頃から上手だったのではないですか?」
「全然、最初もクッキーを作ろうとしたけどオーブンの使い方が分からなくて焦げ焦げにしてしまった事があって、でも勿体ないと思って自分で食べていたのだけど、そのあと主人が一緒に食べてくれるようになったの」
と嬉しそうに、昔の事を思い出しているようだった。
「公爵は昔からお優しい方だったのですね、でもいつ出会ったのですか?」
「セントライト学園の初等部に通う前かしらね、元々はとこ同士で同じ歳だったから、両親が仲良くして欲しかったみたいで紹介されたの」
「成る程、では元々幼馴染なんですね。で、いつから恋仲になったんですか!!」
と俺はからかうように叔母様にいってしまった。
なんとなく2人の馴れ初めが聞きたいと思ってしまったのだ。
「そんな、大した物じゃないわよ。最初は焦げたクッキーを食べてくれて優しい男の子だと思っていたけど、そのあと「にがい!!にがい!!」って大袈裟に暴れたり倒れた振りをして言うんですもの。でも今思うと、お世辞で美味しいと言われた方がなんだか悲しい気持ちになったでしょうね」
と懐かしそうに言っている。
「もしかしたら、公爵は叔母様を笑わせようとしたのかもしれませんね。なんとなくですが、素直に優しい人だと思われたくなかったのではないでしょうか?なんとなくですが、公爵の気持ちもわかる気がします」
「まぁ、確かに主人ならあり得るわね。それに、もしかしたら当時照れ隠ししていたのかもしれないわね。また、主人の新しい一面が発見できてとても嬉しいわ」
「それならよかったです。それで、学園では2人はどうされていたのですか?」
「そうね、元々王女だった事もあって、人の注目を浴びる事が多かったけど。主人が上手く気を逸らして露払いをしてくれたり、何となく公爵家から私を守るように言われたのかもしれないわね、クラスが違うのにいつの間にか一緒にいる事が多かったもの」
「リリアンヌ様やアイリスちゃんも注目されていたみたいだし、王族というのは人目を気にしますからね。公爵家として、気を使っていたのではないでしょうか?」
「そうかもしれないわね。私が主人の家に遊びに行った時も、お義父様のバンダム公爵も歓迎してくれて、元々母が厳しい人でねお菓子作りをやめなさいって言われてたから、出来る場所を探していると言ったら。「よろしければ、我が家で好きなようにしていただいて構いませんから」って言ってくれて。凄く居心地が良くて毎週の様に遊びに行っていたわ」
「お母様は何故反対を?」
「元々お母様はね、ノーザンフォレスト家の最後の1人娘だったの。だから、凄く使命に帯びた人で、実家を繁栄させる事が出来なかったから私達に凄く教育熱心で、人に見せても恥ずかしくない子供にしたかったんですって。私達に期待を寄せてくれて、厳しかったけど優しいお母様だったから、裏切りたくないと思ってずっと我慢していたの」
「そうだったのですか、元々王女という立場があるから望まれいると同時に義務や相応しくない行動もあるでしょう。お菓子作りもお母様から見れば、相応しくないと、そう思ったのでしょうね」
「別に理解して欲しかった訳じゃないけど、好きな事を否定されるのは悲しかったわ。でも、主人やバンダム公爵は理解してくれて私に自由に好きな事をやってもいいと言ってくれたの、少しでもいいのよ理解してくれる人がいるなら私は十分だったわ」
と叔母様は悲しそうにしながらも笑ってくれる。
「では、3人だけの秘密ができたのですね。お菓子作りが、2人を結んでくれたのだから素敵な話ですね」
「うふふ、そう思うでしょ?確かに学園でも、主人しか知らなかったから一緒にレシピ本を買いに行ったり、公爵邸で作った物を一緒に食べていたのだけど、ある時一緒にいられなくなった時があったの」
「どう言う事ですか?」
「実はね、高等部に入ってすぐの事よ。真ん中の姉が他国に嫁いて安心した父が、今度は私の婚約者を決めようとしていたの」
「婚約者は、なくはないですが早くはないですか?」
「父もね、そう思っていたみたいだけど。父は私を国内じゃなくて、他国に嫁がせたいと思っていたみたいなの。他国に嫁げば繋がりができるし、ノーザンデリアの血を残す事が出来る。他国だと準備も必要だから、その分時間も必要でしょ?父は学園を卒業したら私を結婚させようとしていたから、早めに行動していたの。元々持病もあったから、焦っていたのかもしれないわね。それこそ、貴方のお父様バートラム王との婚約もあったぐらいよ」
「そうだったのですか!!初耳ですよ、そんな事」
父にそんな過去があったなんて知らなかった。
「確かに、お父様の性格だと言わないでしょうね。でも、貴方のお父様は兄の4歳下で私の6歳上でしょう?同盟国として深い繋がりができるし、年齢的にもあり得なくない。むしろ最有力候補だったぐらいよ」
もし、叔母様がレコンキスタに嫁いていたならどうなっていたのだろうか?
多分、俺は生まれてきてないしここに嫁ぐ事もなかっただろう。
運命の悪戯というやつだろうか?
「なら私は、叔母様の代わりに嫁いてきた様なものですね」
「うふふ、私がいかなかったから代わりにそちらから来て貰っちゃたのね。とても、得しちゃった」
「やられてしまいました、ではその婚約者候補には公爵はいらっしゃらなかったのですか?」
「父も色々考えていて、国内なら真っ先に主人の名前が上がっていたのだけど、他国優先だったから名前があっても呼ばれなかったの」
「なら、公爵も疑問に思われていたのではないですか?なんの話も来ていなかったのでは?」
「えぇ、だから主人も私が婚約者をスムーズに決める為に、どこで誰に見られているか分からないから評判が悪くならないように、異性と2人きりで過ごすなと父から言われているのを知らなかったから「なんで?」「どうして?」と何度も言われたわ」
「それはそうでしょうね、元々親しくしていたのですから」
「でしょう?だからね、何度か言われた後に思わず言ってしまったの。婚約者を決めたいからって。そしたら主人も驚いていたわ、幼い頃からずっと一緒だったから、大人になって夫婦でなくても、仲良しでいられると思ったんでしょうね」
「公爵の立場を考えればそうでしょうね。ずっと一緒にいた人が突然居なくなってしまうのですから。それに、その叔母様も抵抗はしなかったのですか?高等部に入ってすぐなら、15歳ですしね」
「そうね、確かに抵抗はあったけど父の気持ちもわかるし、私は王女ですもの国の為にこの身を捧げるのは当然の事よ。でも、もしかしたら主人に助けて貰いたかったのかもしれないわね、婚約者候補の方と話をしても心の底では納得出来なくて、なかなか自分で決める事が出来なかったもの」
俺とリリアンヌ様の場合、お互いが利益を得る形で政略結婚をしたのもあるし、俺はリリアンヌ様を好きになれたから案外あっさりした物だった。
でもこうして、叔母様のように自分の心に嘘をつきながら、国や家の利益の為に結婚しなければいけない人達がいると思うと、尚更自分は恵まれていると改めて思う。
「それで、そのあとは?」
「父もね、なんとなく気付いていたみたいで、私が暗い顔をしていたからこれでダメならしばらくは諦めると言ってくれたの。それで、最後の婚約者候補を紹介してもらったの」
「その、最後の婚約者候補というのは?」
と言うと、叔母様はニッコリ笑う。
その態度でなんとなく誰だかわかってしまった。
「びっくりしたわ、だって今の主人だったんですもの。私の話を聞いて、彼の家族にも相談して自分から立候補してくれたの。でも、戸惑いもあったわ。」
「どう言う事ですか?」
「ほら、私と主人は当時15歳でしょう?私はまだしも、主人には未来がある。お義父様の跡を継いで公爵となり、財務大臣として国の為に働かなくてはいけない。もし、政界入りするなら後ろ盾も必要でしょ?そんな後ろ盾になってくれて、私より素敵な人が現れたらきっと後悔するとおもったの」
と叔母様は切なそうな顔で言う。
公爵の事を思うからこそ、自分から身を引こうと考えていたのかもしれない。
「王女ってね、難しいのよ。嫁ぎ先は信用されるけど、昔あった暴力事件の様になれば一気に信用を失ってしまう。王も中立でなければいけないから、大っぴらに援助も出来ない。他国に嫁ぐより、国内で嫁ぐ方が扱いが難しくなる。王女を娶ると言うことはそう言う事よ」
「でも公爵はそれでも叔母様と一緒にいたかったのではないですか?公爵は今もこうして事件を乗り越えて、一から這い上がって財務大臣と言う職に就きました。それは紛れもない事実です」
「本当にそうね、主人には感謝しかないわ。うふふ、今の気持ちを忘れない様にチョコに詰め込んでおきましょう」
と叔母様は楽しそうに、チョコを作っている。
「それで、婚約者候補として会った後、どうされたのですか?」
「何度も聞いたわ、「私で後悔しない?」って。そしたら主人が「いいえ、後悔など致しません。是非我が家で、貴方が好きな事を好きなだけして下さい。いつでもお待ちしています」って言ってくれたの。だから、すぐ手を取ってしまったわ」
と嬉しそうに当時の事を思い出す叔母様は、まるで年頃の乙女の様だった。
「じゃあ、今も好きな事をしていらっしゃるのですね」
「えぇ、もう好きなだけしているわ。そのあと正式に婚約したのだけど、学園で凄い騒がれたのよね。懐かしいわ」
確かに王女と公爵子息の婚約など大事件だろう、リリアンヌ様の時も騒がれていたそうだから、2人でいるとそれ以上かもしれない。
「ビックカップルですからね、反響も凄かったのではないですか?」
「えぇ、知らない人まで話かけてきて質問責めだったわ。中には「ずっと憧れてて」とか男子生徒に思いを伝えられて、それをみた主人がやきもちを焼いてしまったの」
と困る表情ではなく、何故か嬉しそうに叔母様はいう。
(叔母様も案外策士だな)
「もしかして、やきもちを焼いて欲しかったのではないですか?」
「うふふ、内緒。で、そのあと主人に2人きりで話たいと言われて、はいと即答したわ」
多分、叔母様はこうしないと公爵と2人きり話せないと思ったのだろう。本当にしたたかな方だ。
「それで、何を話されたのですか?」
「「貴方はもっと私の婚約者としての自覚を持って下さい」とか、「将来、私が貴方より身分が下という事を利用して、愛人なんて作ろうと思わないで下さいね」と言われてしまったわ」
と嬉しそうに言う。
叔母様は公爵を煽って聞きたい事を言わせていたのだろう、婚約者の話もわざと公爵に言ったのではないかと思ってしまう。
「それで、叔母様はなんと返したのですか?」
「「確かに、男の子に囲まれるのもいいかもしれないわね。でも女の子がいたら、もっと嬉しいわね一緒に恋愛相談が出来るもの」って言ったわ」
その言葉に思わず笑ってしまった。
だってそのとうりになっているのだから。
「本当に当時おっしゃったのですか?叔母様は賑やかな方がお好きなのですね」
「えぇ本当に言ったのよ、主人も覚えているかしら?その時「まるで家族じゃないか」って言ってたもの」
と2人で笑いあっていた。
そのあと、チョコレートもできクッキーも焼き終わり、貴方達にもとラッピングしたものを叔母様は渡してくれた。
「ありがとうございます、叔母様」
「どういたしまして。よし、後は片付けね」
と言って叔母様は後片付けを始める。
俺ももらったお礼に手伝っていると、カトレアがこちらにやってきた。
「公爵夫人、公爵が客室の方でお待ちしております。一緒に帰宅されると、お迎えになられていますよ」
と叔母様にカトレアは話かけている。
「あら、もうこんな時間!?どうしましょう」
とまだ置いてある道具を見ている。
「もしよろしければ、私が見送った後やっておきますから」
「えぇ、それならオズモンド殿下と一緒に片付けちゃいますか。公爵夫人は気をつけてお帰り下さい」
「2人ともありがとう。それじゃあ、主人に会いにいってくるわね」
と言って叔母様はチョコレートとクッキーを持って公爵の所へ行った。
そのあと、城の駐車場で2人を見送る。
御者が準備している時、叔母様が公爵に何か話しかけている。
もしかして、先程の事かと思いながら2人を見ていた。
すると、公爵が驚いた顔をし、そのあと照れた顔をしていた。
そのあと、2人が俺に対し手を振ってくれる。
俺も手を振り返し、2人を見送った。
Ep14を読んでいただきありがとうございました。
本編を書き終わった後、達成感と名残惜しさを感じました。
解説も少しずつ作っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
次はEp15「別れの季節」をお送りします。




