12-1
お待たせ致しました。ストックが出来ましたのでEp12&13を出来次第投稿します。
これから、ラストに向けて一話の量が少なくなっていくので出来るだけ一話でまとめていきたいと思います。
「本当に大丈夫ですか、リリアンヌ様?」
「えぇ、本当に大丈夫ですから。私に構わず公務に行って下さい」
そんな事を言う彼女に俺は、不安を募らせていた。
何故かと言うと、ここ最近リリアンヌ様が“また”体調を崩されたのだ。
普通の風邪でも数日は寝込んでしまうリリアンヌ様だが、今回は特殊なようで。
まず、匂いがダメだと言って最初に魚が食べられなくなり、昨日は乳製品も食べられなくなってしまった。
頑張って食べるものの、嘔吐してしまう日もあった。
夜中になると、リリアンヌ様も不安なのか理由ないのにポロポロと涙を流してしまう事もあった。
医師に見てもらっても、
「薬を使う事は出来ず、安静にしているのが一番です」
と言われてしまい、何も出来ずにいた。
「本当に大丈夫ですから」
と頑なに言う彼女の目には涙が溢れている。
俺もそうだが、リリアンヌ様が一番不安に思っていらっしゃるのだろう。
彼女の姿を見て、思わず抱きしめてしまった。
そんな俺を受け止めるように背中に手を回してくれる、儚くも嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
そのあと、寝室の扉が開かれる。
「リリアンヌ様、オズモンド殿下。お客様が、あっ申し訳ありませんごゆっくりどうぞ」
とカトレアがすぐ開いた扉を、バタンと閉めた。
「ちょ、ちょっとまてカトレア!!」
と俺が叫ぶと恐る恐る、扉を開けてくれた。
「申し訳ありません。急用だったものですから、ノックもせず」
「いや、大丈夫だから!!それで、用事があるんだろう?」
「はい、お2人に会いたいとお客様がお見えです。食堂の方でいいと、ご本人がおっしゃっていましたから、そちらにお待ちいただいております」
「分かった、それなら私が行くから。リリアンヌ様は今日も安静にしていて下さい」
そう言うと、コクンと頷いてくれる。
そのあと、カトレアと共に食堂に行くとまるで我が家のように寛いでいる方がいた。
それもそのはず、だったここは彼女の実家なのだから。
「叔母様、何故ここに!!」
「あらご機嫌様、オズモンド殿下。久しぶりね、婦人会以来かしら」
と座っていた椅子から立ち上がり、俺に近づいてくる。
「でも、今日は何故こちらに?」
「婦人会でね、リリアンヌが体調を崩しているっていう噂がで出たの。それに主人も「今月の重役会議にも参加されてない」って言ってたから心配して見にきちゃった」
「そうだったのですか!?でも、心強いです。私達も手を焼いていましたから」
(婦人会の情報網は侮れないな)
そう言って、俺は叔母様にリリアンヌ様の事を話しながら寝室に案内した。
「大丈夫、リリアンヌ?」
と叔母様が近くに行き声をかけるが、リリアンヌ様は顔が真っ青の状態だった。
「叔母様…」
と苦しそうにリリアンヌ様は声を発する。
「初めての事で不安になると思うけど頑張って、私もこれから出来るだけくるし、相談にも乗るから」
と言うとリリアンヌ様は嬉しそうに頷く。
俺は今の叔母様の言葉に疑問を返す。
「あの、もしかして叔母様はリリアンヌ様が何の病にかかっているのかわかるのですか?」
「えぇ、貴方が教えてくれたでしょう?私も似たような経験があるし、リリアンヌの助けになると思うわ」
「そうですか、ならよかった。それでその病というのは何なのですか?」
「それはね…」
と叔母様が俺達に教えてくれる。
「そうだったのですか!!」
「えぇ、そうだったの。でも公表するのは今は避けたほうが良いわね。そうね、3月になって落ち着いてきたら公表するのが一番ベストだと思うわ。この症状も数ヶ月で自然に治ると思うから、心配しないで」
俺もその知識について身につけていたはずなのに盲点だった。
確かに良く考えてみればそうだったはず、でも俺の身近に、しかもリリアンヌ様がこんな事になるなんてと思わなかったのかもしれない。
「あ、あの私に出来る事はありますか!!」
と叔母様に尋ねる。
俺は王配でリリアンヌ様の夫だ、だからこういう時こそ彼女の助けにならなくてはいけない。
「ないわ」
「…え?」
「ごめんなさいね、結論から言うとないのよ。今でもこの症状の原因が良くわかってないから、何をしたら効果が出るのかわからないのよ。水分を取ったほうが良いとかはあるけどね」
「えっ、では私は!?」
「主人もね、毎回言うのよ「私にできる事はない?」って。そうね、重い物を持ってあげたり、上にある物はリリアンヌじゃなくて貴方が取ってあげれば良いんじゃないかしら?案外それだけでも、女性は助かるものよ」
「はぁ…」
と思わず拍子抜けした声を出してしまった。
その2つならいつもやっている事だ。
まぁ、こういう時だからこそ必要になるのかもしれない。
男って、案外無力なのだと初めて痛感した。
「それともう一つ、この後もリリアンヌは動けなくなっちゃうから。そのかわり貴方が仕事を頑張らないとね!!」
と肩を一つ叩かれてしまった。
そのあと、叔母様の言うとうり公務もあるのでリリアンヌ様は叔母様にお任せした。
そして俺は絶対に溜まっているであろう、リリアンヌ様の仕事場に向かった。
仕事部屋では案の定、書類の山が積まれていた。
それを俺は少しずつ確認している。
「はぁ…、どうしたもんかな、これ」
と言いながら書類を眺めていたのだが、実は王配という立場は政治に参加する事ができず、国家で一番重要な機密文書も読むことが許されない。
だから今の俺に出来ることと言えば、総司令長としての騎士団の仕事と、自分のみの単独訪問ぐらいなものかもしれない。
政治関係は各省に処理してもらうとして、自分でも出来そうな仕事の書類を探していると何枚か見つけたが、ある物に関わる事だった。
「聖誕祭」ノーザンデリアでは、初代国王ヨシュアの誕生日である12月25日を国中で祝う聖誕祭というのが行われる。
これは、ノーザンデリア500年の歴史の中で国王ヨシュアが王に即位した時から、ずっと形を変えながら続けてきた伝統ある祭りの一つだ。
王族のご先祖でもあるため毎年王室主催の晩餐会が行われたりと、この日は朝から夜まで忙しくなる。
その聖誕祭の書類を見ていると、ある物が目に止まった。
「こ、これは!!やばい、やばいぞ!!」
そう言いながら、書類を持ち外に飛びだす。
誰かいないかと探していると、カトレアが近くにいたので声をかけた。
「カトレア、すまない今時間あるか?」
「えぇ、今落ち着いた所ですから大丈夫ですよ」
「それならよかった。実は地下倉庫に行きたいんだ、それと出来るだけ人を集めて欲しい」
そう言うと、カトレアは死にそうな目になる。
「あぁ、とうとうきてしまいましたか。我が城恒例の…」
「あぁ、そのまさかだ。しかも今年は増加しているからな」
「いやだ!!もう勘弁してください、わざわざ毎年やらなくてもいいでしょ!!」
「それは、こっちが言いたい!!とりあえず、いくか」
そう言ってカトレアにランタンを用意してもらい、地下倉庫へ向かう。
カトレアに先導してもらいながら、先に進むと大きく重たそうな扉に行き止まる。
「よし、開けるか。カトレアは、もう片方を開けてくれ」
「畏まりました」
そう言って地下倉庫の扉を開けるとそこにあったのは、ダンボールの山、山!山!!だった。
広い地下倉庫にも関わらず、上下左右とくまなく入っている。
「うわ、これ何個あるんですか!!」
そう言われ、俺は持っていた書類の数字を読み上げる。
「記念ペイント100万、記念硬貨70万合わせて170万個だ」
「うわ、もしかしてリリアンヌ様のお父様が即位25周年の数、165万をこしましたか!!」
「あぁ、バッチリ更新してるな。しかしこれ、ノーザンデリア全世帯分だぞ!!24日の夜までに全部届けられるのか!!
そう、この地下倉庫に置かれているのは、一言で言うなら「聖誕祭のプレゼント」である。
初代国王ヨシュアは、全能の神と聖女との間に生まれたとされ、自身が生まれる時その誕生を心から喜んだ人達がヨシュアへの誕生日プレゼントを雪で濡れないよう、聖女の家の近くにあるもみの木の下に置き、彼の誕生を待っていたという。
そのあと、ヨシュアはこの国を治めるにふさわしいと王になった。
その時、自分と同じようにこれから生まれてくる子供が望まれて生まれて欲しいと、自分と同じように子供達にプレゼントを送っていた。
しかし、そのあと問題が起こってしまった。
王室関連で非売品と貴重な物であったため、貧しい子供達の親はそれをいい値段で売って金儲けをしようとしていたという。
買わなければいいものの、子供と限定されていた事もあり、王室マニアや王室を愛する人達がこぞって買い漁ってしまったのだ。
そのため、平等は勿論転売防止のため毎年全世帯に贈っている。
ペイントは全世帯だが、硬貨はペイントの資金を得るためプレゼント募金としてお金をいただいた方や、事前にお金をもらい希望者にお届けしている。
「それならご安心ください。今年も包装作業をプロのボランティア団体がやってくれますし、無料で城内見学をするかわりに包装作業を手伝っていただける方も1万人は予約していただいてますから」
「となると、1人約100個が目安だな。とりあえず、一つだけ包装してリリアンヌ様にサンプルとして持っていくか」
「そうでございますね、リリアンヌ様もまさかこんな数になるとは思ってみなかったでしょうね」
「本当だな。愛されるのもこう考えると、罪かもしれないな」
そういいながら、俺はカトレアと共に戻り、カトレアは他の使用人を集めて包装作業をするらしいので、そのまま別れた。
そのあと、リリアンヌ様や叔母様と一緒にサンプルを見ることにした。
ペイントとコインには、俺達の居城と国章が、そしてリリアンヌ様が来年3月で即位10周年を迎えるという事で「10周年記念」とこちらの言葉で書いてあった。
「まぁ、とても素敵ね。早く家に飾りたいわ」
と叔母様も嬉しそうにしている。
それを見たリリアンヌ様も、
「こうして見ると、本当に10年の月日が流れていると実感しますね」
と気に入ってくれたのだろう、嬉しそうに微笑んでいる。
「聖誕祭に関しては、こちらでできるだけ準備させていただきますから、リリアンヌ様も無理なさらず自分の体を大切になさって下さい」
「はい、貴方がいてくれるなら私も安心です」
とリリアンヌ様は言ってくれた。
俺は彼女の信頼に応えるため、これから聖誕祭の準備に取り掛かる事のなる。
仕事も多く城内は毎日誰かが騒ぎだす、こんな状態だった。
俺も、晩餐会の招待状を書いたり、それにだす料理を選んだり会場の席の配置を決めるなど、晩餐会について俺が全て請け負った。
そして当日25日、昨日の夜までに何とか皆さんの手伝いで全てのプレゼントを届け終わり。
俺達王族と、その血筋を引くノーザンリバー家を主催とした晩餐会が開かれた。
リリアンヌ様は努力したものの体調が戻らず、最初から国王がいないのはいけないと考え、最初の挨拶と来客している今年活躍された著名人の方と一人一人挨拶をしてから退室した。
そのあと無事晩餐会も終わり、俺はすぐリリアンヌ様の所へ様子を見に行った。
寝室にもいなかったので、もしかしたら暖炉のある談話室かと思い俺はそちらに行くと、リリアンヌ様がソファーに座って寛いていた。
寒かったのか、ブランケットを膝にかけている。
「リリアンヌ様、こちらにいたのですね。もしかして、寝室の方は寒かったのですか?」
「えぇ、窓もありましたしなんだか雪が降りそうなぐらい寒かったので、こちらに移動してきました」
「やはりそうでしたか。どうですか、寒くはありませんか?」
「今は大丈夫なのですが、手足が冷えてしまって」
と手を擦り合わせる。
それをみた俺は、
「それはいけません、すぐに温めないと」
と彼女の手を握る。
「あ、あのオズモンド様。私は大丈夫ですから」
「そう言って、いつも無理なさるのです。少しでも貴方の役に立たせて下さい」
「…ありがとう、オズモンド様。オズモンド様の手はとても温かいですね」
「えぇ、先程の晩餐会で少し飲んだからかもしれませんね」
「そうだったのですか。確かに、会場内や料理にも一緒に出ていましたものね」
「えぇ、所で足は大丈夫ですか?足元は特に冷えるでしょう、温めないと」
「あ、あのオズモンド様。そのためにブランケットをかけていますから大丈夫で」
「お腹は!!お腹は大丈夫なんですか!!一番大事な所でしょう!!」
と言ってリリアンヌ様を抱き寄せる。
「オ、オズモンド様、お酒臭いです!!何杯飲まれたのですか!!」
その愛しの妻に俺は。
「…何杯?何本でしたっけ?最近忙しすぎて、今日ぐらい羽目を外してもバチが当たらないだろうとワインやシャンパンをいくらか飲んだきが…」
「オ、オズモンド様!!わからないぐらい飲んだのは酔っている証拠です!!」
「リリアンヌ様、ご心配には及びません。私は雪国出身です。皆、お酒を飲む習慣があり、父も強い人でした。だから、私も強いはずです」
「何の根拠があって言っているのですか!!オズモンド様、このままでは危ないです。お部屋に戻りましょう、ね?」
「わかりました。貴方がそうおっしゃるなら一緒に帰りましょう」
と言って。
リリアンヌ様を抱き抱える。
「これ、何だっこでしたっけ?王様?王子様?あっ女王様か!!」
「オズモンド様、やっぱり酔っていらっしゃいますね。お姫様抱っこですよ」
「私はまだ酔っていません!!では参りましょう、愛しの姫君」
そう言うと、リリアンヌ様は顔を赤らめていた。
体があったまったのだろう、よかった、よかった。
そうして一緒に部屋に戻り、今年の聖誕祭の夜は過ぎていったのだった。
Ep12を読んでいただきありがとうございました。
オズモンドがボケるのは案外初めてじゃないですかね?
夫婦漫才している時がなんだかんだいって、面白いです。
次はEp13「思い出の場所」をお送りします。
いわゆるこれまでのまとめと馴れ初め回みたいな感じで作りました。
回想は面倒臭いので二人が喋ってるだけですけどね。




