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10.5過去編 王と父の会話(バートラム視点)

今日は豪華2本投稿です。

ノーザンデリアの王妃フローレンス様が亡くなり、喪が明けてすぐの事。


私は同盟国君主であるブトフリッツ国王のもとへ訪問し、会食をした後、個人的に会いたいと言われた私はブトフリッツ国王の自室に訪れていた。

「バートラム王、ようこそおいでくださいました。今、ワインを開けますので一杯いかがですか?」

「ブトフリッツ王は飲酒されないのではないですか?」


「…なんだか最近、強い酒が飲みたくなりましてね。このワインも妻が好きな銘柄のワインなのですが、飲む人がいないと妻もワインにも怒られそうで」

そう言いながら、彼はワインを注いでくれる。

流石はノーザンデリアのワインだ、香りも良く舌触りがいい。

「気に入っていただけましたか?」


「えぇ、こちらのワインは名酒が多いですから、こちらでも何種類か輸入させていただいてます」

「それは良かった、今後ともご贔屓(ひいき)に」

そう笑顔で言われるが彼が突然、素面になったように真面目な顔をする。


「妻が亡くなってすぐの事です、周りから自分や子供の為に後妻を娶れといわれましてね。自分は頑固者でして、中々首を縦に振れないんですよ」

「…そうですか」

自分からは何も言えない。

国王の発言は国の発言だ、相手に干渉してはいけない。


「私は妻が亡くなった事を後悔していません。むしろ感謝しています、命を掛け2人の可愛らしい姫君を産んでくれたのだから、でも私も周りも男子の世継ぎを求め続け王妃としての立場を守る為、彼女の心と体を傷つけてしまった。昔から世継ぎの為に妃を娶れと何度も言われましたが、それも出来なかった。不器用な愛し方しかできませんでした」

「貴方の心苦しい気持ちはわかります、王妃様の事もお悔やみ申し上げます」

「ありがとう、そう言ってくれると妻も喜びます」


「…それで、どうされるのですか今後の世継ぎは。公爵家から養子を取られるのですか」

「実は迷っていてね。確かに公爵家が、王族の分家として男性が何人かいるからそちらを継がせたいのだが評判が悪くてね」

「評判が悪いとは」


「実は、数年前に嫁いだ妹が公爵子息に暴力を振るわれたと新聞で取り上げられてね、思ったより騒ぎが大きくなって真実を知る為に公爵邸に人が押し寄せるようになったんで、妹や甥も危ないと思ってこちらで保護した事があるんだ」

「成る程、では…」


「即位させるのは難しいだろうね、何より貴族たちが賛成してくれないからね。私も中立の立場でいなければいけないから、妹にも援助はできないと言ってある。妹は「私は何があっても主人の側にいます」と言っているけどね」

と苦笑いを浮かべながら、ワインを口にすると彼はこういった。


「貴方は羨ましいよ、男子が3人もいらっしゃるのだから、1人ぐらい分けてくれないかな?」

「第一と三は無理ですが、第二王子ならいつでも」

その発言に目を見開き、膝を叩きながら笑っていた。

「あはは、ではその第二王子をいただこうかな」


その真っ赤な顔をしながら、また真面目な表情をする。

「そんな事もあってね、妻も亡くなって後継者も決められないから夜も安らかに眠れやしない。だからこうして、強い酒を飲んで無理矢理自分を寝かしつけるしかないんだ」

と悲しい顔で言っている。


「せめて父親として、娘達を幸せにしてあげたいと思っているけどね」

と棚に乗っている写真立てをみている、お二人が写っているのだろう。

「私には縁のない話ですね、国王としては及第点ですし父としてはとても…」


「そんな事、私のように中途半端よりずっといい、貴方には貴方の家族の守り方があるのでしょう。前にもいいましたが、余裕のない時に守っても自分も相手も傷つくだけですから、それでいいのですよ」

その言葉に私は救われる。今までやってきた事が無駄では無いと、そう思わせてくれる。

「ありがとう、感謝します。貴方の言葉に私は救われる」


「それなら、よかった。しかし、未来なんてわからないものだ、私もせめて娘達がいいご縁に恵まれて、ウエディングドレスを着ている姿は見たいと思ってる。

母も綺麗だったから、娘達も綺麗なんだろうね」

そんな事を言う彼に私はこう言った。

「それは、どの女性にも言える事ではないですか」

その発言に、目を見開き笑っていた。

そのあと落ち着いたのか、こう話をする。


「後継者はこちらでなんとかする。こんな状態だから中継ぎでもいいと、理解が得られればリリアンヌを即位させて公爵家が安定したらそちらに戻す事が出来るからね、ただイレギュラーな即位だし。母の実家も遠くの公国だから後ろ盾がない、これはあくまでも案だけどね」

そんな事を言う彼に対して、私は“ある案”が浮かんだが口には出さなかった。

干渉はできないし、肩を貸すわけにはいかない。


「それこそ貴方のような後ろ盾があればいいけどね」

そんな彼の言葉に顔が引きつってしまった、図星を突かれたのだ。


そう思っていると、外から「とんとん」と扉の音と共に子供の声が聞こえてきた。

扉を少し開き、こちらを覗いているように見える。

そのあと「おとうさまっ」と言ってこちらに駆け寄ってきた。


それは、第一王女のリリアンヌ様だった。

父であるブトフリッツ国王は、彼女と同じ目線になるようにしゃがみ、話かけている。

「どうしたんだい可愛い姫君、もう寝る時間だろう?」

それを聞いたリリアンヌ王女は見せつけるように本を出してくる。

お城と男女が描かれている、絵本のようだった。


「ちゃんと、おとうさまのやくそくどうり、アイリスをねかしつけたので、ごほうびにえほんをよんでください」

「えぇ!?」

と驚きながら、私とリリアンヌ王女を交互にみている。


「ごめんね、リリアンヌ。今、お父さんはお友達とお喋りしているんだ。後でじゃ、ダメかな?」

「そういっていつも、よんでくれません!!いっしょにえほんをよんでくれるまでここをうごきませんから」

と腕を腰に当て、仁王立ちをしているようだった。


リリアンヌ王女は一歩も引かない様子、なら。

「では、私はここで今日はありがとうございました」

と立ち上がりながら、お礼を言う。

「こちらこそ、こんな終わり方で申し訳ない。夜は危ないですから騎士団の護衛をつけます。気を付けてお帰りください」

そう言われ、私は騎士団の者に案内され、ブトフリッツ国王とは反対方向に進む。


王という立場に正解はない、だからこそ様々な王がいるのだ、私もその1人に過ぎない。

これからも理想を求め、様々なものを犠牲にしていくのだろう。


こうして夜は更けていった…


Ep10.5を読んでいただきありがとうございました。

リリアンヌの頑固な所はお父さん譲りですね。

因みに、アイリスちゃんのツンデレはお母さん譲りです。

次はEp11「学園祭」①をお送りします。作者の趣味が爆発しています。

カイト視点の攻略対象の女の子も全員登場するのでお楽しみに。


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