①
お待たせ致しました。
ストックが出来ましたのでEp10①②③、Ep10.5、Ep11①②を出来次第投稿します。
兄上は病弱な方だった、それは今も昔も変わらない。
兄上は幼い頃、子供特有の病気に何度もかかり体が衰弱していき生死を彷徨うことになる。
その度、王妃様は勿論父も手厚く看病し、何とか一命を取り留めるこれが何度も続いた。
そんな中で父はある感情を抱いていた。
「もし、このまま死んでしまったら?
それでは、世継ぎがいなくなってしまう
同じように王妃との子供が生まれたとして、その子も病弱だったら?
それではレコンキスタそのものが続かなくなってしまう
1300年に及ぶレコンキスタの歴史を自分一人の手で潰す事になるのか…」
そんな恐怖を感じ取った王妃様が、父にこう囁いた。
「ならば、新しい妃を娶ってはどうか」と…
レコンキスタでは王が妃を決める権利はなく、王妃は前代国王から夫人は王妃より決められている。
そのため父は王妃に相談し、新しい妃を娶ることになった。
しかし、それに反対するものがいた。それは俺の母ケイトだった。
普通、平民が国王に直談判するなど許されない、発言によっては首が飛んでもおかしくないのだ。
そんな中、母は命をかけ城に赴き、兵に拘束されながらも王の前でこう発言した。
「王妃様は気立ても良く、お優しい方で教養もありまさにこれ以上ない理想の女性なのです。世継ぎも生まれ、これ以上何の不満があるのか!!王妃様は国王陛下の都合のいい女性ではありません!!」
と発言する母の言葉を父は静かに受け止めていた。
そして、父の横で座っている王妃様はこうおっしゃった。
「…もう、いいの先生。私が国王陛下を満足させる事ができなかったの。私の負けよ」
その言葉に母は涙していた、幼い頃からずっと努力する姿を見てきた彼女が、たった一つの事で人生を狂わされてしまうのだから。
それと同時に、教育してきた自分が否定されているようなきがして、とても苦しかった。
そのあと王妃様は妃を指定する事になる。
それが苦しくも、俺の母ケイトだった。
自分に沢山の事を教えてくれた、それ以上の存在なら満足させられると思ったのだろう。
それと同時に、
「平民出身の母から子供が生まれたとしても、私と子供達の立場が揺らぐ事はない」
「私も傷ついたのだから、貴方も一緒。このまま、のうのうと生きるなんて許さない」
という憎い感情もあったのだろう。
王妃様なりの抵抗だったのかもしれない。
母は王妃様と自分の誇りにかけ、子供を産んだそれが俺、オズモンドだった。
「2人とも、もうそろそろ勉強の時間ですよ!!さぁ、一緒にかえりましょうね」
と遊んでいた、アンとロアをリーマ夫人が呼んでいる。
2人は満足するまで遊んだのか、すぐ母に駆け寄り一緒に帰ろうとする。
俺は、来客リストを覚えないといけないので、3人と別れ暗記作業が終わった後、そのまま今夜行われる舞踏会の準備をしていた。
舞踏会の会場で、王宮の真ん中にある広いダンスホールで俺は父の隣、王太子の席に腰掛け来客が来るのを待つ。
皆ぞろぞろ集まりだし、最初は初めて舞踏会デビューを果たす若いご令嬢のワルツを見た後、拍手を送り父とともに挨拶をしに周る。
俺が婿に行く前からいる懐かしい顔の方もおり、代がわりされ息子さんが来ている家もあった。
8年になると、こんなにも変わるものかと思いながら会場を周る。
挨拶をし終わったあと、父が
「少し夜風にあたりたい、ついて来てくれるか?オズモンドよ」
そう言われ、俺は父と共にバルコニーへ向かう。
父は言葉通り夜風にあたった後、口を開いた。
「ノーザンデリアより書簡が届いた、王配が行方不明になっていると」
その父の言葉に、俺はノーザンデリアから出て行く前の事を説明する。
「それで、そのあとどうしたのだ」
「女王陛下に対し、離婚届を提出いたしました」
「お前は自分が何をしたのかわかっているのか」
怒りはしないものの、冷たい言葉を浴びせられる。
この結婚は個人の問題ではない、国と国の問題にもなる。
俺一人が判断していい事ではないのだ。
「勿論、覚悟はしておりました。これはノーザンデリアひいてはレコンキスタの責任ではありません。私の責任です」
その言葉に父は、勿論の事だと相槌を打つ。
「しかし、お前の立場もわかっているつもりだ。元々私が、ノーザンデリアの政治に足を踏み入れ干渉していたから、お前の立場が危うくなったのだ。それはすまないと思っている」
「いえ、父上の判断は間違っていなかったと思います。あの時は、誰かがリリアンヌ様を支えなければいけなかったのです。同盟国として、レコンキスタがノーザンデリアを支えるのは悪い事ではありません」
婿入りする前、父からノーザンデリアでの父の立場に対する説明は受けていた。
自分も、形見の狭い思いをするだろう思っていた。
だけど、王族の一員として国のため家族のために出来る事はこれしかなかった。
だから俺は、この結婚に承諾したのだ。
父は星空を見ながら、こう話かける。
「私は同情していたのだ、女王陛下の父ブトフリッツ王に。愛する王妃との間に男子が出来ず、継承者も決められなかった。娘には後ろ盾がないと悩んでおられた。同じ王という立場で継承者が決まらないのは不安に思っていた。だから私が手を貸したのだ、少しでも彼が安らかに眠れるようにと」
「私も、お義父様が安らかにお二人姉妹を見守っておられると願っています」
「うむ。ブトフリッツ王は生前、王妃様に対して「王妃という立場を守る為に、彼女の命を犠牲にして男子を求め続ける。そのような愛し方しか出来なかった」とおっしゃっていた。
私が新しい妻を娶る時も「それが、貴方の王妃様を守る手段なのでしょう。余裕をもってその人の立場を守るのが、正しい守り方」だと私の考えを否定されなかった」
「守り方ですか…」
俺はリリアンヌ様を、ずっと守ってきたつもりだった。
でもそれは、自分を犠牲にして相手を守る事だったのかもしれない。
自分が肩身の狭い思いをし、余裕がない中で相手を守ろうとするから自分が傷つき、リリアンヌ様を悲しませてしまったのだ。
「お前の母は私を恨んでいるか」
と俺と同じ瞳で見つめてくる。
「母は言いませんが、おそらくは…」
「よいのだ、それでよい。それで、王妃の事を忘れてくれなければ、それでよいのだ」
とお互い下を向きながら話をした後、父は口を開いた。
「オズモンドよ、帰るのだノーザンデリアへ。ここには、お前に用意できる席はない。あるのは、ノーザンデリアの王配という席だけだ。」
「父上、今からでも遅くはないでしょうか」
「そのように考えているから、遅くなるのだ。一刻も早く戻れば、取り返しがつくかもしれん。もし何かあれば、また戻ってこればいいのだ食卓の席なら何時でも用意する」
「…ありがとうございます、父上」
俺は父上に深々とお辞儀をし、そのあと父の姿を追うように会場に戻った。
そのあと舞踏会も終わり、夜が更けていった…。
Ep10の①を読んでいただきありがとうございました。
次はEp10「帰る場所」②をお送りします。




