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そして、来客リストを読んでいると13時を知らせる時計の音が。

「ボーン、ボーン」となった。


「もうこんな時間か、そういえば昼食食べてなかったな。食堂の方に行ってみるか」

母の所に戻ろうかと思ったが面倒だと思い、食堂に知り合いがいたら(まかな)いでも出してくれると思った俺は、食堂のある別棟へ移動する事にした。


別棟に行くと、拙いながらも演奏しているヴァイオリンの音が2つ聴こえて来た。

(あっ、音が外れてるなガンバレ!)

そう思いながら、音が聞こえる部屋を探す。

近くまで聞こえたので、部屋の扉を少し開けると、入り口近くの椅子に座って子供達を見守るリーマ夫人の姿が見れた。


俺に気づいたのか、目が合いお辞儀をしてくれる。そのあと、

「よかったら、隣の席にどうぞ」と言ってくれたので俺は静か部屋に入り、隣に座って小さな声で夫人に話かけた。

「ヴァイオリンのレッスンですか?」

「えぇ、2年ぐらい前から「やりたい」と言い出して、今日は新しい曲を練習してるから拙いでしょう?ごめんなさいね」


「いえ、そんな事。ヴァイオリンは慣れるまでは難しい楽器ですから。それにしても2人とも大きくなりましたね」

「そうね、アンとロアもすくすく育ってくれたし、子供が成長するのはあっという間ね。貴方がいた時はまだ赤ちゃんだったのに」

そう言って、2人を優しい目で見守っている。

リーマ夫人は父の第二夫人で、双子のアンとロアも俺の異母妹にあたる。


この国では妃に関して王妃が一人と決められ、そのほかの妃を夫人と呼称するのが(なら)いだ。

だから俺の母も、ケイト第一夫人と呼ばれている。

リーマ夫人は王妃様の親戚で、王妃様のいとこにあたる。


「本当にそうですね。昔は、リーマ夫人と一人ずつ抱っこしていましたけど、今は持ち上がるかな」

「うふふ貴方は出来るかもしれないけど、私には無理ね。どんどん大きくなるから、5歳ぐらいで「だっこ」と言われても出来なかったもの」

と2人でアンとロアについて話していた。


そのあと、2人の演奏が終わったので夫人と一緒に拍手をする。

それを見て2人はびっくりしていたが、ヴァイオリンの先生に

「演奏を聴いていただいた時は、どうするのですか?」

と言われ。

2人で目を合わせ、そのあとお辞儀をする。


アンとロアはそれぞれ左右に音符の髪飾りをつけ、アンは髪が肩まであるが、ロアは少し短い顎の位置で少し丸みのある髪型をしている。

双子なので、2人とも同じ8歳だ。


その後、2人とも俺の事が気になるのかジッと俺を見ている。

その後リーマ夫人が2人に近寄り、俺を紹介してくれる。

「このお兄さんはね、2人が赤ちゃんの時にノーザンデリアにお婿さんに行った、オズモンドお兄さんよ。二人が大好きなリリアンヌ女王陛下のお婿さんなの。貴方達を抱っこしてくれた事もあるのよ」

というと、2人が俺に近づき服にしがみついてくる。


2人「リリアンヌ様のおむこさん!!本当に!?」

と同時に声を発する。流石双子、息がぴったりだ。

その後リーマ夫人が慌てて、2人を離そうとする。

「ごめんなさいね。元々ヴァイオリンを始めたきっかけがリリアンヌ女王陛下だったから、2人とも彼女に憧れているの」

(あー、成る程)


リリアンヌ様は4歳の頃からヴァイオリンをされていて、その腕前は音楽家からも認められプロ並みだと言われるぐらい凄いものだ。

腕前は勿論、曲のアレンジ力だったり音楽に対するセンスがずば抜けていると、幼い頃からピアノをやっている俺ですら思う。

あのレベルまでいくのに、何年かかるのやら。


「確かに、リリアンヌ様の演奏は素晴らしいですからね。憧れるのも、無理ありません」

「やっぱり、実はね2年前何度かこちらに公務にいらしてて、オーケストラと一緒に演奏されていた事があったの。チケットも凄い人気で、私達もいい勉強だと思って3回目の公演でやっとチケットを手に入れて見に行ったの。そしたら、女王陛下がコンサートマスターとソロパートを担当されていて。音楽に疎い私でも鳥肌が立ってしまって公演の後、娘たちもヴァイオリンを「やりたい、やりたい」と言い出してね」


「確かに、レコンキスタの方でも公務がありましたね。ノーザンデリアでも、演奏して欲しいと依頼がくる事も沢山ありますから」

「やっぱり、女王陛下としても演奏者としても素晴らしい方なのね。そうだ、よかったら娘と一緒に演奏して欲しいのだけどいいかしら?久しぶりに、貴方のピアノが聞きたいわ」


「一曲だけなら。2人とも楽譜を見せてくれる?」

と言ってアンとロアに楽譜を見せてもらい、3人で演奏出来そうな曲を探す。

その中で彼女達が指を指したのは「きらめく小さなお星様」だった。

誰もが知る、基本中の基本だ。

俺はヴァイオリンの先生の許可をもらい、部屋の隅にあったピアノの蓋を開け準備する。


その後、先生に手拍子をして貰い「せーの」と言って、3人で弾き始めた。

俺は最近2人に合わせてゆっくり片手で弾いていたその後、息も合ってきたので両手で弾き始める。

演奏が終わった後、リーマ夫人が拍手をしてくれた。


「皆、ありがとうとても素敵な演奏だったわ」

その後、アンとロアと一緒にニカッと笑った。

その後、2人がリリアンヌ様の話を聞きたいと離してくれなかったので、皆4人共昼食がまだだったという事で、レッスンが終わり先生と別れた後。

食堂で食事をしながらリリアンヌ様の話をする。


離れていても彼女の事を忘れられないのは、何故だろうと不思議に思いながら話をしていた。

そのあと食後のコーヒーを飲んでいたのだが、アンとロアが窓の方を指差す。

2人「雪だ!!」

と言って、窓の近くで降っている雪を見ている。


子供達は大喜びだろうが、大人達は苦笑いだ。

外はもうすでに真っ白の雪景色だし、子供から見ればいい遊び道具だが、大人にとっては白い障害にしかならない。

その後、リーマ夫人は2人に引っ張られ、外に行きたいと連れ去られしまった。


俺はコーヒーも出しっぱだし、コートなどの上着も着ていない事に気づき。

近くにいた、給仕係にそれぞれの部屋からコートを持ってきてもらい、慌てて外に向かった。


「ありがとう、ごめんなさいね。2人を見ていないといけないから、コートも取りにいけなくて」

と少し寒そうに白い息を出しなから、リーマ夫人は少し震えていた。

俺は彼女にコートを渡し、あとの2人にもそれぞれ着せリーマ夫人と一緒にアンとロアを見守っていた。


「そういえば、ケイト夫人は今日もこちらにいらしてないの?貴方が帰ってきてるから、一緒に来ていると思ってのだけど…」

「申し訳ありません、母は…」

「いえ、いいの仕方ないわ。昔、貴方のお母様にダンスを習っていたのだけど、ある日突然来られないと言われて、他の生徒の方にも聞いたら皆んな一緒で。でも、こちらに嫁いで何となくわかったわ、お母様にありがとうございましたと伝えておいて」

「わかりました、伝えておきます」


そう、母は俺が生まれる前家庭教師としてアゼット王妃やリーマ夫人などを担当していた。

しかし、ある日を境に家庭教師を辞めひっそりと暮らすようになった。

王妃様も過去の事を話してくれたが、最後はこう終わるのだ。


「私は先生を裏切ってしまった

      悲しませてしまった

      傷つけてしまった

だから、オズモンドは私の様にならないでね…」

そうっていつも、悲しい話で終わるのだ。


母が王妃様と出会ったのは、王妃様が10歳の頃だった。

当時、大学に通いながら学費を稼ぐ為家庭教師の仕事を探していた母と、侯爵家でありながら名ばかりでお金を稼ぐ手段もわからず貧乏だった王妃様の実家は、娘である王妃様をお嬢様学校に入学させる為家庭教師を探していた。

貧乏なのにと言うかもしれないが、子供を良い学校に通わせるのは貴族のステータスだし、誇りだった。

だからお金がなくとも、見栄を張って学校に行かせる貴族も沢山いる。


しかしお金がないのも事実なので、給料が高くつく貴族出身ではなく安く済む平民出身の家庭教師を探していた。

それに選ばれたのが、母だった。

母は責任感の強い人だったので、王妃様と二人三脚でお嬢様学校の受験に挑む事になった。


合格するには、学科試験は勿論だか楽器の演奏、ワルツなどの社交ダンス、テーブルマナー、挨拶などの細かな礼儀作法である実技試験を頭と体に叩き込むしかなかった。

母は学科はできても、実技試験は少し齧った程度しかなかったので、王妃様の母親に教えてもらったり、独学で勉強し自分で身につけていった。


その努力の甲斐あって、王妃様もその気持ちに応え見事、一発合格した。

母は王妃様を誇りに思っていたと言う。

「素晴らしい生徒、私の誇り」と当時、王妃様に言っていたらしい。


そのあと母は大学を卒業し、王妃様の話を聞きつけた貴族達が母に家庭教師の仕事を依頼する様になる。

母は最初戸惑っていたが、王妃様と同じ様に貧しい貴族令嬢の希望になればと引き受けていた。

勿論、王妃様とも関係も変わらず家庭教師を続けていた。


そして王妃様が18歳になると、その出身もあるが学歴、立ち振る舞いなどが評価され、当時王太子であった父の妃に選ばれる。

これは母は勿論だが、王妃様の実家も喜んでいた。

娘が嫁ぐと、国から実家に援助金が入るからだ。


母も当時担当していたリーマ夫人に、

「アゼット妃を見習って、貴方も頑張りましょう。貴方も立派なご令嬢になれるわ」

と言っていたと言う。

そして父と王妃様は結婚し、数年後には長男であるバスティオールが生まれた。


しかし、それから3年後の事だろうか、父が息子であるバスティオールに恐怖と不安を抱き、父と王妃の間に雲りが見え始めたのは…。






Ep9の③を読んでいただきありがとうございました。

多分、バートラムは息子が腹黒だって事に気づいたんでしょうね(違います

これからまた、Ep12と13とストックを貯めるため、投稿の間が開きますがよろしくお願いします。

次はEp10「帰る場所」①をお送りします。

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