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冴えない王配に女王陛下の好感度がわかるようになりました  作者: きつねうどん
Ep5 護衛デート
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本部の入り口には騎士団のシンボルである青い馬が紋章となっている旗が飾られている。


この馬は初代団長の愛馬が青毛という珍しい毛並みの馬というのが由来だ。

俺は本部に入り受付へ向かう。

そこには同じ様に大きな旗が飾られており、カウンター越しに2人の青年がそれぞれ事務仕事をしているのがみれた。

その2人は俺に気づくとそれぞれ挨拶をする。


「あれ、総長じゃないっすか!!おつかれ〜す★」

「ダメでしょ、アーティー。申し訳ありません総司令長、お疲れ様です。ご用件をお伺いします」

「まぁ、アーティーは相変わらずだな。モーブル、わざわざ謝らなくていいぞ」


そう、2人は新人騎士のアーティーとモーブルだ。

2人とも同郷出身で幼馴染らしい。

2人は伝統ある騎士団に入れる実力を持っているのだから身体能力も勉学も優秀である。

そして、俺は騎士団では総司令長、通称総長と呼ばれている。

騎士団のトップであり、騎士団は勿論だが同盟国であるノーザンデリアに駐在しているレコンキスタ軍を動かす権限を持っている。


「そうだ外出許可を貰いたいんだ、頼めるか」

「はい、畏まりました。総司令長の分でよろしいですか?」

「いや、俺とリリアンヌ様の2人分で」

「はー!?俺達が働いているときに女王陛下とデートですか!?総長はいいご身分っすね!!」

「仕方ないだろう、訪問が中止になったんだから」


「では総司令長。外出場所と理由と時間をお願いします」

「あぁ、場所は王立図書館へ理由は本の貸し出しと調べ物だな。時間は往復合わせて50分と1時間は滞在されるので11:50前後で頼む。」

「畏まりました。指定の10分後にお帰りにならなければ、何かあったとみなして騎士団の者が駆けつけます」

「分かった」

そう何かあれば命に関わる可能性もある為、時間には厳しい。

対象が帰らずそこから向かうと考えればこの時間は妥当である。


「最後に護衛者の名前をお願いします」

「あぁ、そこなんだが俺の名前を入れてくれないか?」

そういうと2人は案の定、驚いた顔をしている。

「総司令長自ら、女王陛下の護衛をされるのですか?」

「あぁ、そういう事になるな」

「なにいってんすか!!反対ですよ!!総長は勿論、女王陛下に何かあったら!!」

「それは俺もわかってる。でも今、人がいないだろう?護衛部隊からは誰でもいいと言われているみたいだし、俺も騎士団の一員だ」

「確かにそれは聞いておりますが…」


多分2人が不安に思っているのは俺の実力が未知数だからだ。

俺も、騎士団の訓練に定期的に参加しているが練習試合になると誰も相手にしたがらない。

「怪我をさせてしまうのではないか?」とか「総司令長の名に傷が付く」と周りから言われ、結局自主練するしかなかった。


「じゃあ、証明して下さい。総長が女王陛下の護衛にふさわしいがどうか!!」

「分かった。やってみよう」

「よろしいのですか、総司令長!!」

「いいんだ、2人とも俺に実力がないと思っているから不安になるのも分かる。どうだろうアーティー、俺がこの騎士団を一瞬にして消滅させるとこが出来たら、認めてくれるか?」

「面白いっすね。いいっすよ!!」

そして、俺は道場へ行き自分の剣を手にし受付の所へ戻る。

(少し、刃こぼれしているな。後で手入れしないと)


「準備出来たっすか、じゃあ見せて下さいっす!!」

「ああ!!」

俺は剣を構える。そしてカウンターへと走り出し、それに跳び乗る。

そのまま、騎士団の旗へと剣を抜き構えた。

(よし!!下の方に切れ目がある、そこからなら!!)

俺はそこへ斜めに剣を振るい旗を2つに切る事に成功した。

それを見た2人は口を開けながらも拍手してくれる。


「すまない行儀悪いな、後で掃除しておいてくれないか」

「素晴らしいです、総司令長!!余りの速さに追いつけませんでした」

「何言ってんすか!!旗は記念に飾って置きますよ!!総長、一生ついて行きます!!」

その後、何とかリリアンヌ様の護衛をする権利を貰い。

馬車を整え彼女を呼んだ。


「リリアンヌ様、馬車のご用意ができました」

「わざわざ、ありがとう。あれ、護衛の方はどちらに?」

そう言いながら周りをキョロキョロしている。

「僭越ながら今日の護衛は私、オズモンドがさせて頂きます」

俺はリリアンヌ様の前で膝を付き(こうべ)を垂れる、騎士団には様々なルールがあり、この挨拶もその一つである。


「わかりました、私の命、貴方にお預けします」

その後俺は、馬車の中に不審物がないか確認して、俺とリリアンヌ様は馬車に乗り込み王立図書館へ向かった。


「それにしても驚きました。まさかオズモンド様自ら護衛されるなんて」

「何か不安な事があれば、おっしゃって下さいね」

「そんな事、騎士団の総司令長に護衛して頂けるなんて名誉な事ですわ」

(確かに普通、総司令長が護衛しないよな!?いやわからないけど!!)

総司令長は騎士団の歴史の中でも俺しかいない。元々、王配という立場がノーザンデリアにはなかったのだ。

リリアンヌ様が考え、公爵や騎士団での役割をわざわざ一から作ってくださったのだ。


「でも、こうして向かい合わせで座るのも新鮮ですね。何時もは横に並んで座ってますから」

そう、いつもは並んで座っているのだが今回は向かいに座っている。

これは護衛対象の背後の安全を守る為でもある。

これもルールで決められている。


「でも、オズモンド様の顔がよく見えるので嬉しいです。オズモンド様の顔はやはり、お義父様よりもお義母様似ですね」

「まぁ、確かにそうかもしれませんね」


リリアンヌ様は俺の両親と面識があり。

母は結婚式に来ていたぐらいだろうが、父はかなり関わっている。

父は若くして即位したリリアンヌ様を支え、大臣たちは学業と公務の両立は難しいと考え退学も考えていたのだが、父はそれに反対しリリアンヌ様を学校に行かせていた。


しかし、そんな父の考えに反対する者もいた。

リリアンヌ様を政治から遠ざけ自分がこの国を支配しようと目論んでいるのではないかと、前王を支えていた古株の大臣達は今でも父は勿論、俺を毛嫌いしている。


「あら、もうすぐ着きますね。私、図書館のお庭が好きなのです。少し歩いてもよろしいですか?」

「えぇ、一応時間制限はありますが、それ以外でしたらご要望にお応えします」

「ありがとう、それではいきましょうか」


そしてまず俺が先に馬車を降り、周囲に不審な物や人がいないかを確認してからリリアンヌ様に降りる様に指示する。

その後彼女が降りやすいように手を差し伸べ、降りる手伝いをする。

これは女性の場合ドレスの長いスカートで降りる際、階段に(つまず)き怪我をする恐れがあるからだ。

勿論、スカートをたくし上げる人もいるが両手を使うと不安定な姿勢になりやすくこちらも降りる際危なくなる。


「丁度、雨も降っていなくてよかったですね。それでは、お庭の方から参りましょうか?」

「えぇ、お願いします」

王立図書館の建物を囲うようにお庭がある。

子供達の遊べるスペースやゆっくり飲食と読書ができるカフェスペースのテラスがある。

他にも、ノーザンデリアの芸術家が手掛けた彫刻やオブジェが飾らせている。

リリアンヌ様はゆっくりと歩き始めた。


「うふふ、お城の中庭も素敵ですが此方のお庭も素敵ですね。芸術的な感じがします」

「確かにそうですね、シンプルで近代的ですが美的センスを感じます」

「えぇ、良くわかります」

その後庭を一周し、建物の中へ入る。


「それでは、どのような本を探しますか?」

「そうですね、サザンベルの本は勿論ですが新刊ブースにも行きたいですね。新しい本との出会いもありますから」

「わかりました、それでは参りましょうか」

そうして、俺とリリアンヌ様は一緒に図書館を周る。

雨ということもあり、本を読んだり勉強をしている人もいるが、俺達に気づき振り返った後すぐに自分の所へ顔を戻す。

(まぁ、俺はいいとして。彼女は有名人だからな)

そんなリリアンヌ様を見て嬉しいような、少し可愛そうだなと思いながら歩いていた。


新刊ブースに行くと子供向けの本もあるのか女の子が本を読んでいた。俺達に気付くと、目をキラキラさせリリアンヌ様に近寄ってきた。

「もしかして、おひめさま!!」

その言葉にリリアンヌ様はビックリしている。

確かに彼女はドレスを着ているし、年もお若いので子供から見れば女王様よりお姫様に見えるのかもしれない。

俺はビックリしている彼女に声をかけた。


「お姫様、お嬢さんが声を掛けておられますよ。何か声をかけて差し上げて下さい」

その俺の言葉にリリアンヌ様はコクコクと頷き女の子に声をかける。

「どのような本を読まれているのですか?」

「えっと、おひめさまとおうじさまのほん!!あたし、これがすきなの!!」

「私も幼い頃はそのようなお話が大好きでしたよ」

女の子は共感して貰えて嬉しかったのか、嬉しそうにウンウンと頷いている。


しかしその後、俺の存在に気付いて俺の話をする。

「おにいさんは…わかった、おひめさまのけらいでしょ!!つきびとっていうんだよね」

確かに今の俺を見ればお姫様を守る騎士だ。しかし女の子の言葉にリリアンヌ様が首を横に振った。


「お兄さんはね、実は王子様なのよ」

その彼女の言葉に女の子はビックリしている。

「おうじさまなの!?」

「えぇ、今もこうして私を守ってくれる王子様なの」

その言葉に女の子はキラキラとした目をして、俺のことをジッと見ている。

俺のことを王子様だと思い始めたらしい。

(確かに王子だったが、元だぞ元)


「じゃあ、おひめさまとおうじさまはけっこんするの!?」

「えぇ、勿論」

すぐにリリアンヌ様はそう答えた。

「じゃあ、ふたりはしあわせなんだね!!」

その言葉に俺は勿論、リリアンヌ様も口をつぐんてしまった。

現実なんてこんなものだ、物語の様にはいかない。

しかし、リリアンヌ様は口を開いた。

「そうね、幸せになれればいいなと思っているわ」

その後女の子との会話を終え、サザンベルの本を探しにいった。


「大丈夫ですか、リリアンヌ様。先程のこと」

「えぇ、でも女の子には悪いですが残酷なものですね。私も幼い頃は物語の様になれると思っていたのに運命とはわからないものです」

俺はどこまでそれを指すのかは、わからない。

彼女にとって俺との結婚でさえ否定的なのかもしれない。


「リリアンヌ様はもし、別の人生をおくれるならと考えたことはありますか」

「そうですね、父が亡くなった時、元々お嫁さんになって夫になる人を支えて生きていくと思ってましたから、こうして逆の立場になるなんて思ってもみませんでした。でもね…」

「でも…?」

「形は少し変わってしまったけど、一つだけ願いを叶えられたから、私はこのままでいいと思ってます」

「なんですか?その願いというのは?」

「うふふ、内緒です」

そのまま聞いても教えてくれなさそうだったのでこれ以上聞かない事にした。


その後、2人でサザンベルに関する本を何冊が探し出し、他のジャンルでもリリアンヌ様が何冊か選んだ本を合わせて借りることにした。

「それでは、馬車に戻りましょうか」

「えぇ、そうですね。あら?雨が降っているわ」

図書館に入る時、雨が丁度降っておらずラッキーだと思っていたのだがそのツキが回ってきてしまったようだ。


しかし、リリアンヌ様は俺が贈った傘を持ってきているのでよかったと思う。

「よかったですね丁度、傘があって」

「えぇ、でもオズモンド様はどうされるのですか?」

そう、護衛者は剣を構える事があるため、傘などの嵩張(かさば)る物は持っておけないのだ。

「大丈夫ですよ、そのためのフード付きマントがありますから」

「でもそれだけだと、体が冷えてしまいます。ですから、この傘をお使い下さい」

と言って自分の傘を差し出してくる。


「それでは何の為に護衛しているのか、わかりません。私は貴方に風邪をひかせたいわけではありませんから」

そういうと彼女は落ち込んでしまったが、何か閃いたのか顔をあげる。

「でしたら2人で一緒に傘に入りましょう。そうすれば風邪もひきませんから」

と言ってくる。

「何を仰っているのですか、ダメです」

「いやです。一緒に入らないとここから動きません」

と言って俺を見つめてくる。こうなると女王様の命令には逆らえない。


「わかりました、それでは私が傘を持ちますね」

「はい、私は本を持ちますので濡らさないように気を付けて下さいね」

そういうと俺とリリアンヌ様は小さい傘の中でギュウギュウになりながら馬車へ歩き始める。

(馬車への道のりが遠く感じる!!)

リリアンヌ様の歩幅に合わせているのもあってスピードもゆっくりに感じられる。

その前に俺はある事に気づいた。

(あれ…これって相合傘じゃないか!!)

そう思った時、心臓がバクバクと音をたてる。


しかもよくみれば、リリアンヌ様との距離も近く、顔がくっついてしまう距離にいた。

(リリアンヌ様にこの音が聞こえなければいいけど)

もうすぐ馬車に着くのでもう一踏ん張りだ!!馬の鳴き声も聞こえる。

(…あれ!?なんか多くないか馬!?)

そう、図書館の入り口近くにはそれを塞ぐように何頭もの馬がいた。

馬車に付けているのは4頭のはずだがそれ以上いる。


「オズモンド様、あれって騎士団の方ではないですか?ガリバー団長もいらっしゃいますし」

「えっ!?ほんとだ!?」

よく見ると団長を中心に一列に並び膝を付き頭を垂れていた。

確かに青色の馬車は俺達しか使わないし、ここにいることはすぐ分かる筈だがわざわざ災害支援からこちらを通りかかるとはおもわなかった。


その後、エクリプス・ガリバー団長が俺たちに声をかけてくる。

「女王陛下、総司令長。サザンベル地方での災害支援を終了し帰還致しました。住民の方々はスムーズに避難され怪我を負ったものはおりませんでした。まだ、雨も続くため川の注意には気を配ります。ですが、この騎士団の名にかけ国民の平和を守り抜く事をお誓い申し上げます」

その団長の言葉に合わせ後ろで団員たちが敬礼をしている。


とても素晴らしい部下達なのだが、それよりも…

(相合傘している所見られた!!どうしよう!!)

帰りも騎士団に馬車を囲まれながら護衛され城に帰った。


こんな状態では国民にパレードでもやっているのかと(はや)し立てられそうで、恥ずかしくて馬車のそとなんか見られなかった。

しかし、リリアンヌ様は何故か、

「今日の外出はとても楽しかったですね。特別な外出になりました」

と言って満足そうにしていた。




Ep5の③を読んでいただきありがとうございました。

なんだか騎士団のメンバーがポンコツに見えるのは気のせいですかね…

クロエだけにして欲しい物です。優秀なんですよ本当に…

次はEp5おまけ「NG文集」をお送りします。作者が上下真ん中に登場しますのでよろしくお願いします。

追記:誤字報告してくださった方ありがとうございます。

作者も読んで確認していますが、見落としもあると思います。

他のEpでも誤字が有れば気軽にどうぞ。

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