②
そして、6月になったある日ここ数日ノーザンデリアは雨の多く降るいわゆる「レイニーアプリコットシーズン」に到来していた。
今日は地方訪問の予定があったのだが、訪問先のサザンベル地方の河川の水位が雨で上昇し、元々幅が細い川が多いのもあって氾濫や決壊の可能性があると指的され、訪問は急遽中止になり、部屋で暇を持て余していた。
「とりあえず、やる事は終わってるし暇だな。少し大広間の方に行くか」
このまま部屋に居るのも嫌だったので少し移動する事にした。
大広間に行くと同じ様に暇を持て余していたリリアンヌ様が本を何冊かテーブルに置いて、ソファーに座り読書をしていた。
そのあと俺の存在に気付き声をかけてくる。
「あら、オズモンド様でしたか、どうされたのですか?」
「いえ、暇を持て余してしまいまして。読書をされていたのですか?」
「えぇ、訪問が中止になってしまいましたから。訪問先のサザンベル地方について調べていたのです。現地の方に対して何か出来ることはないかと」
流石は女王陛下だ、常に民を思い直ぐ行動に移している。
こうして暇そうにしている俺とは大違いだ。
「でも、騎士団の方々が災害支援に向かっていらっしゃいますから安心ですね。オズモンド様が緊急集会を開かれたとお聞きしましたよ」
そう、昨日の午後からサザンベル地方の河川に危険性があるという情報が入っていた為騎士団の団長や隊長達を集めて緊急集会を行った。
俺は名ばかりだが騎士団のトップなのでそういった権限がある。
サザンベル地方は高齢者や農業を営む人が多いそんな人達に対して避難指示や自分の持っている田畑を心配してそちらにいってしまう人もいる為田畑や住人の監視が必要と考え救護、護衛部隊を中心に編成し現地に派遣する様にと指示をだした。こういう時はきちんと指示を聞いてくれるし、優秀は団員ばかりなので後は任せている。
「えぇ、優秀な部下ばかりですから後はそちらに任せました」
「確かに皆さん素晴らしい方達ですからね。ですが、それもしっかりとした上官の方々がいてこそと私は思っていますわ。勿論オズモンド様もその一人です」
褒められる事に慣れてない俺はリリアンヌ様の言葉に少し照れるというかくすぐったい気持ちになった。
そのあと彼女の邪魔をしない様にソファーで寛いでいたのだが、突然リリアンヌ様が声を発した。
「あら、もう読み終わってしまったわ。どうしましょう?」
本のページをペラペラしながら、大広間にある本棚を見ている。
次に読む本を探しているようだ。
「何か違う本をお探しですか?お探ししますよ」
「ありがとう、でも見た感じサザンベルの本はもう読み終わってしまったみたいで…」
そういってリリアンヌ様は別の本を手に取り本を読み出す。
俺も知っている有名な恋愛小説だった。
「それ、有名な恋愛小説ですよね、リリアンヌ様もそういった物がお好きなのですか?」
「えぇ」
と少し恥ずかしそうに言っている。
「でも、その小説バットエンドなんですよね、私は余り好きにはなれなくて」
「確かにそういった方も沢山いらっしゃいますね。でも私はこれも含めて一つの恋愛だと思っていますわ。悲劇だったとしてもそこに愛があると思っていますから」
そのリリアンヌ様の言葉に説得力があり思わず拍手してしまった。
「素晴らしい考えだと思います。確かにそう考えると全ての作品が恋愛小説として完結しているように思えますね。」
そんな言葉にリリアンヌ様も照れているようだったが、その時ある事を思い出し腕輪に関わった時からずっと疑問に思っていた事を口にする。
「あの、恋愛小説を見て少しリリアンヌ様にお聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」
「えぇ、なんでしょうか?」
「ほら、こういう物語や小説って“真実の愛”というフレーズがよく出てくるじゃないですか?リリアンヌ様にとって“真実の愛”はどういう物なのかなと思って」
そんな難しい質問にも関わらずリリアンヌ様はゆっくり考えながらも口にしてくれる。
「そうですね、人によって考え方は違うと思いますが、私はこの物語や小説の様に幸せな結末や悲しい結末も含めてそれは“真実の愛”になると思っていますわ。大事なのはその結末を受け止め前に進む事、その結末をなかった事にしてはいけないのです」
「確かにそうですね、私もそう思います」
「でも、私もオズモンド様と同じ様にバットエンドは好きではありません。もし私も小説の主人公の様に悲しい結末があったとしてもきっと足掻いているでしょうね。人間というものはそういうものですから」
確かに俺達の人生は小説に通じるものがある、俺の人生もどの様な結末を迎えるかわからないけれど幸せな結末を迎えたいともがき苦しむ事になるだろう。
「ありがとうございましたリリアンヌ様、難しい質問にも答えて下さって。」
「いえ、そんな事。私も考えされられました、上手い返しができているかわかりませんけどオズモンド様の手助けになれば幸いです」
そのあとリリアンヌ様は本を読み直しに戻った、しかし普段から本を読み慣れている事もあって次々とページをめくっていく。
「あら、この本も読み終わってしまったわ」
「すごいですね、30分も経ってませんよ」
(30分も何もせずリリアンヌ様を見ていた俺もどうかと思うけど)
「どうしましょう、他に何かやる事あったかしら?」
(待てよ、今がチャンスじゃないか!?)
先日カイトと話していたことを思い出す。普段忙しいリリアンヌ様に外出の誘いをするのは今しかない!
「あっ、あの、リリアンヌ様!!」
「はい、なんでしょう?」
「その、えっと、よろしければ一緒に外出しませんか!?」
と俺がいうと「ピロリン♪」「テレレーン♪」と音が鳴った。好感度とパラメーターが上がる音だ。
しかし彼女の反応はそれと逆の物だった。
「その、申し訳ありません。今、外出するのは難しいかと」
(あっ、あれ!?いいんじゃないのか?)
「えっと、どういう事ですか?」
「今日の護衛担当の方々が災害支援の方に行っているみたいで…、一様護衛部隊の方からは、外出される際には騎士団の誰でもいいので人を付けて下さいと言われているんですが…」
(まさか、護衛部隊全員引き抜いているとは思わなかった!!今日の担当ぐらい残しとけよ!!)
「申し訳ありません。細かい指示をしておけばこんな事には」
「いえ、この様な天候では外出もしませんし今はあちらに人がいた方がいいですから」
確かに王都も少しだが雨が降っている。
どうするんだこれ折角のチャンスだったのに。
(いや…待てよ…)
少し屁理屈になってしまうがこの方法をつかえば…
「リリアンヌ様でしたら他を護衛に付けましょう」
「わかりました、でも何処に行かれるんですか?」
(そうだった、肝心の場所を忘れてた!!)
そんな俺の心を察したのか選択肢が出てきてくれた。
1.劇場にいく
2.図書館にいく
3.植物園にいく
ナイスだ!!でも雨だから3はダメだな。1と2かでも理由付けが出来るのは2しかないな
「でしたら図書館に行きましょうか。サザンベルの本も探せばあるかもしれませんし」
「確かにそうですね、城では本も限りがありますから。何か面白い本との出会いもあるかもしれませんね。では王立図書館へいきましょうか」
「畏まりました。では外出申請をして馬車の用意をしますね」
「まぁ、わざわざ貴方がされなくても…」
「いえ、好きでやっている事ですから気にしないで下さい。それでは騎士団のほうに行って参りますね」
そう言って俺は騎士団本部へ向かった。
Ep5の②を読んで頂きありがとうございました。
色々試していますが3千文字ぐらいが丁度いいと思いますのでこの数字を目安に分割していければいいなと思います。今の投稿が3千文字です。
次はEp5「護衛デート」③をお送りします。Ep5は次で最後になります。




