早く言って
「くっしぃぃん!!」
昼休みの終盤、お昼ご飯を食べ終え自分の席に戻ると、隣に座るティナが何度目かの大きなくしゃみをした。
あのトレドさんの一件があってから数日が経ち、先生達が言う諸事情は終わったらしく、『マリンschool』は弍ノ国に向け再び出航した。
「相変わらず豪快なくしゃみだね」
「豪快っつーか、最早ここまで来ると近所迷惑だろ」
「確かに」
「まぁー、それがティナちゃんのチャームポイントだしー」
「ちょっ、皆してひどくない!? てか、くしゃみがチャームポイントとかヤなんだけども!?」
そうツッコミつつもティナは、自分を指さし爆笑しているセオの指を普通なら曲がらない方向に曲げた。
「いでででっ!!」
「あっ、ごっめーん、セーちゃん大丈夫ぅー?」
「てめっ! 俺の人差し指殺す気か!?」
「やだなー、ただちょっと柔軟体操してあけただけじゃん」
「指に柔軟性は要らねぇんだよ!!」
「あ、やばい、社会の教科書忘れた」
ティナとセオのいつもの言い合いを横目にルーナが鞄を探りつつそうポツリと呟いた。
「えー! ルーナンめっずらしー! 僕で良かったら見せてあげようかー?」
「おっ、ルーナ忘れもんか?」
「ルーナン何気に初じゃない? 忘れ物するの」
ロトに加え、言い合いしていたはずのティナとセオの三人がニヤニヤしながら会話に乱入してきた。
「ちょっ、なんなの? 三人して地獄耳? その耳違う所で役立ててくれる?」
三人に絶対零度の視線を浴びせながらため息を吐いた。
「わー! ティナちゃん、耳いいって褒められたよー!」
「やー、ルーナンに言われたらテレちゃうね」
ああ、そっか。その捉え方があったんだ。
「おいおい、ルーちゃんよ。そんなこと言っていーのかよ? 後で頼んでも見せてやんないぜ?」
「いいよ、取りに帰るし。てか、何? その『ルーちゃん』って、変な呼び方増やすのヤメテ」
「えっ、取りに帰るの!? 間に合う!?」
「ねー」なんてロトと笑っていたティナがぎょっとした顔でルーナを見た。
「まぁ、走れば……」
そう言ってチラリと教室の時計を見た。
「あと二分で始まるねー」
「……」
「何か言うことは?」
ニヤニヤとルーナの肩に肘を乗せセオが聞く。
「……何?」
俺はセオの腕を払い除け、無言で立ち上がろうとしたルーナの腕を掴んだ。
「大丈夫だよ、今日の授業、映画鑑賞なんだって」
「……それ、俺が教科書忘れたって言った時ぐらいに言って欲しかった」
脱力したように少しだけ浮かせた腰を再び下ろした。
「あはは、ごめんね?」
「あれ、絶対悪いと思ってないよね」
「思ってねーな。つかあれはルーナの反応を楽しんでた疑惑あるな」
「あるあるー……」
ヒソヒソと小さな声で三人が話す。
「ん? 三人とも何の話?」
「えっ!? えーっと、ほら、ねっ? ロト!」
「うっ、うんー!? そうそうー! あっ
あれだよねー? セオくんー!」
「ちよっ、ばっ! 俺に振んなよ!」
「ね、何の話?」
声をワントーン下げ、少し首を傾げ見る。
「「「ヒィ!!」」」
本当は何を言っていたか聞こえていたけど、三人の隠す様が面白いから言わないでおこっかな。
「はぁ……あ…ねぇちょっと、先生来たよ」
ルーナのその報告に三人が一斉に安堵の息を漏らした。
〜おまけ〜
「そう言うティナは忘れ物したことないわけ?」
「え? あるよ?」
「え、そうなの? でも俺、ティナに教科書見せたことないよね?」
「うん! 忘れた時はあたかも持ってきてるかのように隠蔽工作してるから」
「えー……ウィルくんが気付かない工作って一体ー……」
ちょっとだけティナを尊敬したロトだった。




