島ー8ー ただいま
「ティナちゃん、重くない?」
「重くないよ!」
あれからひと段落つき、さぁ、帰ろう! というところでエリちゃんが右足を痛めていることに気付いた私は、真っ青な傘を自分の首と肩の間に挟み、エリちゃんをおんぶした。
最初は嫌がっていたエリちゃんを説得するとーー自分でもこの足ではもう歩けないと思ったのだろうーー静かになった。
かと思えば、冒頭のような質問をしきりにさてくるようになってしまった。
というか、エリちゃん、『ティナちゃん』とか!!
可愛い!!
そして抱き締めたい!
けど出来ない!!
と、そうこうしているうちに旅館に着いたようだ。
取り敢えず、保健の先生がいる部屋に行って、エリちゃんを渡してからネカル先生のとこ行ってー……。
と頭の中でこれからの段取りを考えているとエリちゃんにトントンと肩を叩かれた。
「ティナちゃん、お願い降ろして……?
この状態で中に入るのは流石に恥ずかしいよ」
エリちゃんのその言葉にそれもそうだと思い、エリちゃんのお願いをきくことにした。
「よっと」
そっとエリちゃんを背中から降ろした。
「ティナちゃん、ありがとう」
ふわりと微笑むエリちゃんに自分の頬が緩むのが分かった。
***
「はーい、いらっしゃい。怪我してるのはこっちの子、かな?」
保健室になっている部屋に入ると、あの眼鏡先生が待っていた。
「はい、合ってます。えっと、色々怪我してるんでお願いします」
支えていたエリちゃんを先生に引き渡した。
「じゃー、私ちょっと出てるね! すぐ戻ってくるけどー」
そう言い残し保健室を出た。
***
「さてと、ネカル先生はどこかなー」
「その必要はないわよ」
突然後ろから声がした。
振り向けばそこにはお風呂上がりっぽいソフィアがいた。
「おかえりティナ」
「ただいまー!」
そのまま抱きつこうとしたがソフィアに「お風呂入ったばっかだからヤメテ」と真顔で言われ途中で止まった。
通常運転すぎてなんとも言えない。
「それで? トレドさんは?」
「今保健室だよ! ソフィア、さっき言ってた必要ないってどういう意味?」
「ああ、それね。トレドさんを閉じ込めた人達の話をしに行こうと思ってたんでしょ?
それなら金髪王子がシメたからもう大丈夫よ」
その時のことを思い出したのだろうか、ソフィアが少しだけ身震いした。
金髪王子って、ウィルのことだよね?
「そっか、やっぱ動いてくれたんだ」
「嬉しい?」
「うん! 嬉しい! エリちゃんのこと気にしてたのは私だけじゃなかったんだね!」
「……そっちね」
そんなソフィアの呟きは嬉しくってその場でピョンピョン跳ねている私の耳には全く届かなかった。
「さ、行きましょうか」
「ん? どこに?」
首を傾げ尋ねれば「保健室よ」と、当然でしょ? みたいな顔で言われた。
いやいや、当然チガウ。
「トレドさんと話たいのよ」
納得した。
それから私達は歩きだした。
***
「失礼しまーす!」
ガラリと襖を開けると保健室の先生に「静かに」と静かな声で注意を受けた。
「ごめんなさいー……って、エリちゃん?」
中にはい入ると、敷いてあった布団にはエリちゃんが寝ていた。
「よっぽど疲れてたんだろうね、手当てが終わるともうこの通り」
『よっぽど疲れてた』
その言葉に自然と手に力が入る。
と、後ろにいたソフィアがエリちゃんの方へ歩いていき、傍に腰を下ろした。
「じゃあ僕はこれから会議があるから彼女よろしくね、何かあったら知らせに来て」
そう言うなり先生は部屋を出ていってしまった。
あれ? なんだろ、デジャブ。
「知らせに来てって、会議ってどこでやってんのよ」
ソフィアっち、それは私も思ったよ。
というか、ソフィアのエリちゃんと話したいことってなんだろ?
「ねぇ、ソフィ……」
ソフィアに聞こうと口を開いた時エリちゃんが「ん……」と目を覚ました。
「エリちゃん!」
エリちゃんの元に駆け寄った。
「ティナちゃん……えーっと」
私を見、次にソフィアの方を見てエリちゃんは首を傾げた。
「私はソフィア=フランシスよ」
「えっと、エリザ=トレドです……」
「エリザ、でいいかしら? 私のことはソフィアでもなんでもいいわ」
「あ、うん! えっと、じゃあ、ソフィアちゃん……?」
「ええ。ねぇエリザ、私とペアにならない?」
「え……っ!?」
「へ!?」
思わずエリちゃんと一緒に私も驚きの声を出してしまった。
「私丁度ペア解消したばかりでいないのよ。
エリザさえ良ければだけど……どう?」
「……」
ソフィアの提案に不安そうな瞳をコチラに向けてきた。
そんなエリちゃんに、私は力強く頷いた。
その後、少し黙り込んだエリちゃんはソフィアを見てゆっくり頷いた。
「私で良ければ……よろしくお願いします……!」
ガバッと頭を下げた。
「ええ、こちらこそよろしく」
そんなエリちゃんにソフィアは珍しく優しく微笑んだ。
きっと、ここにソフィアファンがいたら大変なことになっていただろう。
と、見ていて思わず思ってしまった。
「ティ、ティナちゃん、顔が大変なことになってるよ?」
「あら本当だわ、早くその顔引き締めて」
どうやら、二人を見ているうちに顔が緩みに緩みきってしまっていたようだ。
「えっ、ちょ、そんな酷かった!?」
「うん」
「ええ」
即答だった。
少し悲しくなりながらソフィアの言う通り顔を引き締めることにした。
〜おまけ〜 ティナ&エリザ 《帰り道にて》
「ね、エリちゃん」
「なぁに?」
「私実はおんぶすると、その人の体重が分かるんだ。
とか言ったらどーする?」
「それ本当だったらヤダなぁー」
「うん、ゴメン、嘘。冗談だから。だから、あの、エリちゃん、サラッと首絞めないで……!?」
ティナが悪い。




