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くしゃみ10連発のおかげで  作者: 植松マヤ
68/84

島ー5ー

「ギャハハ! ちょ、マジ腹痛て……ぐえっ!」


奇妙な声と共に下品な男の笑い声が突然消えた。


不思議に思い俯いていた顔を上げれば、何故かさっきまで剣を私に向けていた男がその場に倒れていた。


「"物好きなやつ"ならここにいるけど?」


その声に少し視線を横に動かすと、一人の女の子が倒れている男の傍に立っていた。


手に持っている真っ青な傘をさすこともせず、彼女はその茶色の髪を、私と同じぐらいに濡らしていた。



そんな彼女が私を見てその口を開いた。



「エリザさん、助けに来たよ」

彼女の凛とした声が私の肩を揺らした。



………どうしてここに?



「……帰ってよ」

スルリと言葉が口から零れた。


「私、頼んでないよ……助けてなんて頼んでないよっ!」


「……」


「もうたくさんなの、誰かを信じて裏切られるのは……、お願い、もう私に期待を持たせないで」


私のその言葉にティナさんが辛そうに顔を歪めた。


どうしてあなたがそんな顔をするの……?



「エリザさん、エリザさんはもう誰も信じなくっていい」


「えっ……?」


予想していた言葉と反対の事を言われ、思わず目を見開いた。


と、


「っう……」

さっきまで倒れていた男が呻き声をあげて起き上がるのが見えた。



「このアマァ! 俺に何しやがったっ!!」

「お前! 良かった、意識戻ったんだな!」




「……うるさい。今大事な話してるんだけど。

てか、それで私と勝負するんなら悪いけど手加減しないよ?

今腹の虫どころが悪いんだよ」


男を睨みつけながらそんなことを言った。



「てめっ! チョーシ乗りやがって……!

おい! お前も手伝え! 先、こいつヤるぞ!」

「おっ、おう!」


剣を構える二人に私は少し焦りを感じた。


ダメ! このままじゃティナさんが……!


「ティナさん! にげー……っ」



それからは一瞬だった。


ティナさんがため息を漏らしながら剣を抜いた、かと思えば次は二人組の男達が意識を飛ばし地面に倒れていた。


見たところ二人の周りに血はない。

きっと峰打ちを使ったんだろう。


それにしても一瞬の出来事すぎて頭が追いつかない。


「っ一体何が……」



「エリザさん!」

剣を鞘に収め大きな声で私の名前を呼び、ズンズンとこちらに大股でやって来た。



そんな彼女に一人、オロオロと戸惑っていると、私の周りは青に包まれた。


ティナさんが未だ降り続ける雨から私を庇うように青い傘をさしてくれたのだ。


しゃがみこんだティナさんと目線が交わった。



「信じなくていい」

さっきの続きだろうか、ティナさんは先ほどの言葉をもう一度口にした。


「だから、黙って私に信じられてて」


「……っ!?」


「私はエリザさんを信じてる。けど、エリザさんは私のこと信じなくっていい。

そりゃーまぁ、エリザさんも私のこと信じてくるなら是非お願いしたいけどさ、別に片一方だけが信じるのもアリなんじゃない?」


その言葉に鼻がツーンとした。


「……自分だけが信じるのは想像以上に辛いよ……?」


「うん、承知の上だ」


ヘヘッと笑うティナさんに瞳から次々と涙が溢れ出た。


「っヒク……ぅああぁーー!」

嗚咽と共に泣き声を上げた。


拭っても拭っても止まらない私の涙を見て「わわっ! そろそろ泣き止んでぇー!」と焦るティナさんに泣きながら思わず吹き出してしまった。



「……エリザさん、いや、エリちゃん。

やっぱ笑った顔かっわいいー!!」


「えっ!? エリちゃっ……、きゃっ!!」


目を輝かせたティナさんにガバッと抱きつかれた。

その反動で傘が地面にバシャンと落下した。


「あ、ヤベッ」

なんて言って腕を離し傘を拾いに行くティナさんに「ティナちゃん、ありが、と」としゃっくり混じりに言えば、照れくさそうに笑い返してくれた。





ああ、ずっと夜が続く訳じゃなかったんだ。

ただ私がずっとアイマスクをしていただけ。

だってほら、外せばもう朝だ。




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