島ー2ー
エリザ=トレド視点です。
「トレドさん、私行きたい所あるんだけどー……」
旅館に荷物を置き外に出ると、ペアの子にそう言われた。
「あ、私一人でも大丈夫だよ? 気にせず行ってきて」
そう言えば、クスクスと笑われた。
「違う違う! トレドさんも一緒に行くんだよ!」
彼女の予想外の言葉に目が点になる。
「わ、私も一緒に行ってもいいの?」
「うん! だって私達ペアじゃない」
嬉しくって、思わずはにかんだ。
始めはペアなんて作る気なかった。
でも、ティナさんとマリンschoolで再会してから少し考え方が変わった。
ああやって普通に話しかけてくれる子もいるんだって気付いた。
ティナさんが部活に誘ってくれた日の夜ふと、もしかしたらティナさんみたいな子って他にもいるんじゃないかな、と思った。
また教室から突き落とされるかもしれない。
ううん、それ以上酷いことになるかもしれない。
でも一回、一回だけ自分の殻に閉じこもるのをやめてみようかな。
周りを受け入れてみようかな。
ティナさんとの出会いでそう思えた。
そうすると、彼女みたいな私とペアを組みたいって言う子が名乗り出てくれた。
「どーしたのー?」
自然と足が止まっていた私に気付いた彼女は大きな声で呼んだ。
「あっ、ごめん! 今行く」
私も負けじと大きな声で返事し、彼女の元に向かった。
***
「え、と、ここ?」
辿り着いた先は人気の少ない海沿いにある倉庫だった。
「うん! さ、入って入って」
グイグイと背中を押され中に入れられた。
「わ、真っ暗……」
ちょっと怖いね。
なんて言いながら彼女の方を見ると、彼女が扉に寄りかかるようにして真顔でコチラを見ているのに気付いた。
「入らないの……?」
そう聞けば「あははは!」と突然笑いだした。
「ねぇ、どうして私がこんな所に来たと思う?」
その問に素直に「分からない」と首を横に振る。
「アンタをここに閉じ込めるためよ。
あぁ、でも安心して、ちゃんと乗船する三週間後には出してあげるから」
一瞬何を言われたか分からなくなった。
「な、んで……?」
やっとの事で出た自分の声はとても小さく掠れていた。
「はははっ」
とても愉しそうに笑い声を上げながら近付いてきた彼女に少し恐怖を覚え、ジリっと一歩後ろに下がった。
「アンタの事大嫌いだからよ」
オデコが引っ付くぐらいの距離で止まった彼女はそう吐き捨てた。
「ペアになったのも、このため。
ジャンケンで負けちゃってさー、代表として私がやることになったんだよねぇ」
そのジャンケンは何人としたんだろう。
どのくらいの数のクラスメイトがペアを組めて喜んでた私を嘲笑っていたんだろう。
想像するだけで頭がガンガンする。
私をここに閉じ込めるつもりなら、早く出て行って欲しい。
もう、何も聞きたくない……傷つきたくないっ……!
「……どうして」
そう思うのに口から出るのは引き留めるような言葉だけ。
「アンタ生意気なのよ」
ドンと強く肩を押される。
構えていなかった私の身体はその力に負け、あっけなくコンクリートの冷たい地面に沈んでいった。
「……っ!」
「ははっ、滑稽ね。
ねぇ、知ってる? アンタ、影でファンクラブあるんだって。
グレイ・ティーのくせにチョーシのりすぎ」
「あ、そうそう、アンタ自分を教室から突き落とした人のこと告げ口しなかったんだって?
だったらさ、今回のことも黙っててくれるよねぇ?
その剣使って助けなんて呼ぶわけないよねぇ?」
倒れた時に床に落ちた私の剣を足で転がしながら、口元に弧を描き首を傾げた。
「信じてるわよ」
最後にそう言って、とうとう彼女は倉庫を出て行ってしまった。
「信じてるなんて……そんな簡単に言わないで」
コンクリートの上に膝を抱え小さくなりながら呟いた。
真っ暗だ。何も見えない。
あぁ、辛い、辛いよぉー




