60/84
エリザ=トレドの独白
灰色のそれが右の薬指で存在感を示しはじめた時、私の声はもう誰にも届くことはないんだと気付いた。
外に出れば、女の人達には空気のように扱われ、男の人達からは汚い物を見るかのような視線が飛んでくる。
唯一の心の拠り所の家族はアッサリと私を捨てた。
母は家を出て行き、父は精神を病み私のことなんてまるで見えていない。
私一人ここにいないような錯覚に陥る。
「私はちゃんここにいますか?」
そんな問いかけに答えてくれる人なんていない。
ふと、茶髪の優しそうなあの子の顔が浮かんだ。
まだ私が上級貴族だった頃、私の笑った顔が見たいと言ってくれたあの子の顔が。
あの子が今の私を見たらどんな顔をするのかな?
蔑んだ顔? 楽しそうな顔?
ううん、そんなことどうでもいい。
きっとあの子が私がグレイ・ティーだって知ったら、あの日のことも無かったことになるんだろうな。
灰色の指輪がこの指から離れることは一生ない。




