守る側
「セ、セオ!?」
呆けてる場合じゃないと思い、慌てて飛び起き、エリザさんを芝生の上に横たわらせ、セオの頬をペチペチと軽く叩く。
「お願い、起きてっ……」
「ん……」
少し呻いた後、セオは意識を手放してしまった。
そりゃあそうだ。
二人分の重力を受け止めたんだから。
「何でっ!!」
いや、今はテンパってる場合じゃない!!
二人を早く保健室に連れていかなきゃっ!!
そう自分で自分を叱咤し、二人を保健室へと運ぼうとするが、一人で二人を運ぶのはやっぱり不可能で、でもその不可能を可能にしたくて、二人をグイグイと引っ張った。
「ティナ!?」
「ティナちゃんー!?」
「何やってんの!?」
ウィル達が丁度中庭を通りかかった。
「皆っ……!」
皆が慌てて駆け寄ってくる姿に思わず涙が溢れ出しそうになる。
あぁ、自分で思ってた以上に不安だったのかもしれない。
「どうしたの、ってセオ!? それにトレドさんも……」
「えー、僕全然状況理解できないんだけどー……!」
「何があったの?」
「ど、どうしよっ! セオ、セオがっ……!!」
「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて何があったのか教えて?」
「う、ん!」
ゆっくり背中をさすってくれたウィルのおかげで、落ち着きを取り戻した私は早口で、かつ簡潔にエリザさんが窓から落ちてきたことを話した。
「……うん、事情は分かった。
じゃあ、ティナとロトはトレドさんを、ルーナは俺と一緒にセオを運ぼう」
「うん!」
「はーい!」
「分かった」
***
「失礼しまーす……」
あの場で何があったのかの先生の取り調べを終え、私は保健室の扉を開けた。
「あぁ、君か。お疲れ様」
眼鏡を掛けた優しそうな男の先生にそう聞かれた。
この人が保健室の先生だ。
「ありがとうございます、あの、ところでウィル達は?」
「ああ、君と一緒に二人を連れて来てくれた子達なら帰らせたよ
あ、それから、君達が運んで来てくれた女の子の方は、目が覚めたから自分の部屋に帰らせたよ」
あ、エリザさん、意識戻ったんだ……よかったぁー!!
「あの、男の子の方は……?」
そう聞くと眼鏡の先生は「それが……」と言って目を伏せた。
えっ、ちょっ、まさか……。
イヤな予感が胸をよぎったその瞬間、誰かに頭をチョップされた。
「……っ!?」
「紛らわしい反応すんなっつーの」
セオだった。
「ごめんごめん」
と、適当に謝る先生。
本当に悪いと思ってなさそうだ。
「じゃあ僕はこれから会議があるから行くね」
そう言うなり保健室を出ていってしまった。
「、あの人、ほんとユルイな」
「本当に……ね、セオどこ怪我した?」
「や、それが肩甲骨に青タン出来たぐらいで、なんも怪我してねぇんだよ」
……へ? マジで?
「骨折とかも?」
「ナシ」
丈夫すぎじゃね!?
あれで肩甲骨の青タンだけとか……まさか超人!?
「何でそーなるんだよ」
チョップされた。
「お前は?」
「え? 私? お陰様で何ともないよ?」
「そっか、良かった」
……は?
安心したように息を吐いたセオの胸ぐらを掴み引き寄せる。
「……っうぉ!?」
「バッカじゃないのっ!? 何で人の心配してんのさ……っ!?
あの時だってほっときゃ良かったのにー……ぅえ!?」
逆にセオに胸ぐらを掴まれセオと鼻がつくか、つかないかぐらいの距離になった。
「ふざけんなよ」
唸るような声がセオの口から聞こえた。
「ほっとけばいいだと? それ、俺に言ってんのか!?
王子である俺に民を心配すんな、見過ごせって言ってんのかっ!?」
この人は……セオは守る側にいる。
将来王になって、困ってる民を助けるため動けるように勉強しているのが王子なんだ。
そんな彼に言うべき言葉ではないのは分かってる。
でも……。
「だからじゃん」
「あ?」
ヤンキーみたいな口調しててもやっぱりこの人は王子なんだなぁ。
「だからこそ、王子だからこそ、ほっとけって言ってんの」
「はっ、」
「あんたがさっき私を助けた時に打ち所が悪くて一生意識が戻んなかったらどーするつもりだった?
セオが王になるのを待ってる民達はどーすんの?」
「……それはっ」
「民なんていくらでもいるのっ! でも王は一人だけでしょ!?
お願いだからそんな簡単に自分の身を投げ出さないでよ……!!」
セオの瞳を真っ直ぐと見、そう言った。
「……」
「……っいったぁ!?」
突然セオに思いっきり頭突きをされた。
めっっさ痛いわっ!!
え、なにこの人、石頭すぎっ!!
「お前気に入らねぇ」
立ち上がり、腰に手をあて、私を見下ろしながらそんなことを言った。
「は?」
え、それ人に頭突きして言うこと? えっ?
てか、今する話?
「その辺のお嬢様みたく『守られるのが当然』とは思わねぇのな」
「え?」
セオのその小さな呟きは私の耳には届かなかった。
「いや……取り敢えず俺はお前が気に入らねぇが、そのお願いだけはきいてやるよ」
そんな上から目線で言ってくるセオに「なんだコイツ」と思いながら立ち上がりクイクイとしゃがむように要求した。
「あ?」
なんて言いながらもちゃんとしゃがんでくれるセオに私は思いっきり頭突きをかました。
「……っおま!?」
「ヘッ、仕返しだコノヤロー」
痛みにうずくまるセオを見下ろす。
ていうか、思いっきり頭突きしすぎた。
オデコが痛い。
「はっ、やっぱ気に入らねぇ……!!」
この次の日、二人のオデコが真っ赤だったのは言うまでもない。
ちなみに、エリザさんを窓から突き落とした女の子四人組の正体は分からず終いになった。
それも、先生が四人組について聞いてもエリザさん本人が何も答えないんだとか。
告げ口しちゃえばいいのにね。
私ならソッコーでする。
民は確かにたくさんいるけど、ヤッパ上に立つ人にはちゃんと民一人一人を大切にしてほしいもんです




