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くしゃみ10連発のおかげで  作者: 植松マヤ
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罰ゲーム

「じゃあ、あそこのバーから俺たち全員分の飲み物を取りに行ってもらおっかな」


「えっ? そんなのでいいの?」

自分の目が輝くのを感じる。


「うん? もうちょっとスゴイのが良かった?」

妖艶な微笑みを浮かべ首を傾げるウィルの金髪がサラリと彼の首を滑った。


「いや、いいです、それがいいです」

全力で首を横に振った。


「そっか、残念」


「んじゃ、俺はコーヒで」

「俺はいちごオレかな」

「じゃー、僕もいちごオレー!」

「紅茶」


はい、リクエストきたー。

行かせる気満々っすね。


「……分かったよ」

まぁ、確かに負けたのも、罰ゲームを了解したのも私だ。

しぶしぶ立ち上がりバーに向かおうとする。


……ん?

えっと、ん?


何故かルーナンも一緒に立ち上がった。


「あ、トイレ?」

するとルーナンの冷たい視線が飛んできた。


えぇ!? 何何!?

もしかして『お前黙ってトイレ行こうとしてたのに言うなよ』的な?


「はぁ、違うから」

あ、違うのね。


ため息を吐きつつサッサとバーの方に向かうルーナン。


どうしたんだろ?

何かバーに用があるとか?


そう頭の中をハテナマークでいっぱいにしていると、少し歩いた先でクルリとルーナンが振り返った。


「何やってんの、行くんでしょ」

そう言ってバーの方を指した。


「う、うん」

それが? と首を傾げてとプイっと顔を背けながら「手伝うって言ってんの」と聞こえるか聞こえないかぐらいの小さい声が聞こえた。


「ル、ルーナンっ!! ありがと!!」

やっぱりルーナンはツンデレだった。


「ちょっと、恥ずかしいから黙って。

っていうかその『ルーナン』やめて」


そんな冷たい言葉も今言われても顔がニヤけるだけだ。


「うわっ、顔エグイ」

顔がニヤけるだ、け……。


「……そんなやばかった?」

「うん」

「そっか……気を付けよ」


暫くの間はニヤけるの我慢しよ。



***



「えーと、いちごオレ二つと、コーヒーと紅茶お願いします」

「はい、以上で宜しいでしょうか?」


バーテンダーにそう尋ねられ「はい」と答えようとすると、ルーナンに止められた。


「ちょっと待って、あんた自分の分は?」

「……私も頼んでいいの!?」


「はぁ、そんなことだろうと思った。

いいに決まってるでしょ、むしろ誰がダメって言うの」


た、確かに。


「えー、じゃあ何にしよっかなぁー! 迷うー!」


ケーキの入ったガラスケースを見て女の子が友達同士でキャピキャピする感じのやつをやってみた。


「早く決めて」

「ウッス」

私には合わなかったようだ。


「じゃあ、ウーロン茶で」

「はい、かしこまりました。少しお待ちください」


「……ウーロン茶って本当にあんた壱ノ国の上級貴族?」


ルーナンの言う通り、本来ならここで紅茶なりジャスミンティーなり頼むはずだろう。


「いや、だって紅茶とかよりウーロン茶の方が美味しいんだもん」

これマジ。


「……フハッ、それ真顔で言うこと?」


少しの間の後、ルーナンが吹き出した。

どうやらツボに入ったようだ。


どうしよう、笑いのツボが分からない。



◆◆◆◆



「上手いこといったみたいだねー!」


ティナちゃんとルーナンがバーに向かったのを見届け僕はそう言った。


「お前がいきなり罰ゲームとか言い出した時はさすがに驚いたけどな」


「そうは言いつつもしっかりフォローしてくれてたけどね?」


「まあな」


はい、セオくんのドヤ顔頂きました。


「あ? んだよ文句あんのか?」

「ちょっ、セオくん絡みが酷いからー」


ヤンキーかよ、王子の気品も何もない。


「にしてもルーナンにバレなくて良かったねー」

バレたらきっと全力で反抗してきそうだもん。


「いや、バレてたぜ?」

セオくんのその言葉に思わず「は?」という言葉が零れた。


「え、は!? それ本当ー!? え、そしたらルーナンー……え!?」


「あははは、どうしてルーナはのっかってくれたんだろうね?」


いや、ウィルくん、それ僕が聞きたいから!!




「つか、そんなことよりもよ、どういうつもりだよ」

机に肘をつきながらセオくんが隣に座るウィルくんにそう尋ねた。


「どうって?」

「ッハ、とぼけんなよ。あいつとペア組んだんだろ? 話がちげぇじゃねぇか」


そう、話が違う。


僕たち王族は危険と隣り合わせだ。

それぞれの国の状況もあるが、何より政権を狙ってる奴らに上陸した国で待ち伏せされ命を狙われる危険がある。


ピアスで王族特有のオーラが消せるといっても、用心に越したことはない。


だから他の生徒に危険が及ばないように、なるべく僕たち王族同士で行動しよう、と。


乗船する前そう話をしていた。


それと、もし誰が王族じゃない人を巻き込まざるを得なくなったらグレイ・ティーの子が居ればその子にしよう、とも。


改めて言うとなんとも失礼な話だがグレイ・ティーであればその子が傷つこうが悲しむ人が少ないのだ。



なのにウィルくんは気付いたらグレイ・ティーであるエリザ=トレドではなく、ウィルくんの国の上級貴族であるティナちゃんとペアを組んでしまっていた。


ティナちゃんが気に入らないわけじゃない。

むしろ僕は気に入りまくってる。


けど、それはそれ、これはこれだ。


ティナちゃんが王族と行動を共にすることは、つまりティナちゃんにも僕ら王族の問題に巻き込まれる可能性があるということだ。


「ウィルくんはティナちゃんの事嫌いなのー?」


「そんなわけないじゃない」

そう聞けばウィルくんは目を見開いて驚いた。


「じゃあなんでー?」


気に入ってるなら、大事に思ってるなら距離を置くべきなんじゃなんじゃないだろうか。


「ティナは大丈夫だよ」

「だからよー、その根拠は何だって聞いてんだよ」

「すぐ分かるよ」

「あ? どういう意味だよ」


セオくんがそう聞いてもウィルくんは微笑むだけ。


ウィルくんと出会ってから結構な時間が経つけれど、僕は未だにウィルくんがつかめないままだ。

〜おまけ〜 ティナ&ルーナ (ドリンクを運ぶ過程)


テ『うわっ!』

ル『ちょっ、危ない!』

テ『ルーナン! ナイス!』

ル『ナイスじゃないから、それかして』

テ『え、でもっ! これは大貧民の私がやらなきゃー……』

ル『はぁ、零される方が面倒くさいから早く渡して欲しいんだけど?』

テ『……ありがとうございます』


ルーナンのツンデレは破壊力あるなぁーって話。

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