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くしゃみ10連発のおかげで  作者: 植松マヤ
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出航

それから私たち生徒は上靴を脱ぎ、学校指定の革靴に履き替えてグランドに向かった。


校舎は船の後ろ側に建っており、グラウンドは生徒たちの運動の場という役割と、船本来の甲板の役割を同時に担っている。


その為、グラウンドにはでっかいマストが何本か立っている。


あれだよね、余所見して走ってると激突するヤツ。



「おぉー!!」

ちゃんと、クリスから貰った緑色の本を持ち、皆がいるグラウンドかつ甲板の端っこに行き、下を覗き込んだ。


「ティナ、落ちないでよ」

ソフィアにそう忠告された。


あの後、ウィルと別れソフィアと合流したのだ。


「あっ!! クリスとリリィだー!! その後ろにはお父様とお母様もいるー!」


おぉぉーい! と、皆に向かってブンブンと手を振る。


遠くて表情こそ見えないものの、そんな私に気付いたクリス達も振り返す。



と、ブオォーン という船の霧笛が一回鳴った。

それと同時に動き出す船。


グラリと横に揺れバランスを崩しそうになる。

船から、見送る人達が手の中にまで伸びている色とりどりのテープが舞って、水面に落ちていく。


だんだんお父様やお母様、クリスにリリィ達が小さくなっていく。



「……見えなくなっちゃったわね」

とうとう、皆の姿が見えなくなり波だけが目に入る。


「だねぇー……さ! 部屋割り見に行こー! 部屋、ソフィアと隣だったらいいのになぁー」


そう言ってグラウンドを後にする私にソフィアは少しだけ微笑み「その確率は結構低いと思うわよ」なんて言った。


「んな!? そこは一緒に『隣がいいねー』って言うとこじゃないの!?」

「言うと思う?」

「……オモイマセン」



****



「うわっ!! 見て見て!! 隣だよ!? やったー!!」

「本当だわ」


思っていることは皆一緒で家族達に見送られた後、校門を出てすぐの場所にある階段を下り、それから三回角を曲がった後に見えてくるスクリーンが設置されている場所に集まっていた。


「うわ、俺ら男子は二階かよ」

「ま、いいんじゃね? 半分航海したら今三階の女子らと階の交換あるんだしよ」

「まぁなー……」


この船は、甲板のある所が学校になっていて、船の中は一番上の層から一階と二階が生徒一人一人の部屋。


三階が食堂、浴場、共有ルームなどがたくさんある。


そしてその下の四階、五階にはこの船を動かしている船員たちや教師たち大人の住む部屋や、彼ら専用の食堂やらがある。


ここは緊急時以外は生徒は立ち入り禁止になっている。



それと、私たち生徒の部屋は男女で階が違う。


学校に行くのに一つの階段しか要らない一階はそりゃあ人気だ。


それで先生らが公平性を考え、半分の航海を終えたら、お互いの階を交換することになったのだ。



「部屋行く?」

「うん! 行こ行こー!」


部屋の場所を確認した私たちはお城にあるような、上りきった所で二手に分かれている人が五人ぐらい並んで上れそうな階段を使い、二階へと向かった。



***



「あ! 私ここだー!」

「ってことは、私はコッチね」


互いの部屋を確認し「じゃあ」と言ってそれぞれ自分の部屋に入った。



**



「え、ひろっ!!」

思わず一人でツッコんでしまった。


でもこれは仕方ないと思う。

だって、この部屋、1LDKなんだよ?

そりゃー、ねぇ?


え、一人一人にこんな広い部屋くれるんだ……!?


や、まぁ、確かに王族もいるからこんぐらい必要かもしんないけどさ、前世庶民の私には少しばかり刺激が強いわけよ。



「あ! キッチンもある!!」

リビングらしき所にはキッチンもあった。

え、自炊できるじゃんー。


備え付けの黒いふかふかのソファーに腰を下ろした。


ここで、ソファーの真正面辺りにテレビを置いておいてほしいものだが、まぁ、あるわけないよねー。


クリスから貰った緑の本をソファーの目の前にある机に置いた。


「ん? 何この冊子」

本を置いた横に『マリンschoolのススメ』という題名の分厚い冊子があるのに気付いた。


それを手に取り、中を開いた。


一ページ目を見るとそこにはこの船の中でのご飯について書いていた。



朝ご飯と晩ご飯は三階の食堂でとり、お昼ご飯は自分で作ること。



食堂は朝の六時から夜の九時まで開いている。


朝ご飯の時間は決まってないが、晩ご飯は夜の五時から九時まで、と決まっている。



それから朝ご飯と晩ご飯は部屋で自分で作っても良くて、またその場合、食料は食堂に行って各自申し出ること。



こんな感じのことがツラツラと書いていた。



「ほぉー、やっぱ自炊できるんだー」


にしてもお昼ご飯は自分で作んなきゃダメなのか……。

出来る、かな?

私料理したことないんだよなぁー、まぁ、なんとかなるかー!


ポイッと冊子を机の上にほおり投げた。



「ここでこれから過ごすんだよなぁ、あんまり実感湧かないなぁー」


黒いソファーに背中を預け、そう呟いた。


ここで私がやることは二つ。

ソフィアを守ることと、悪役令嬢としてのティナ=シーナの破滅を防ぐことだ。


とはいえ、ソフィアは私が守らなくても大丈夫な気はするけど、まぁ、用心することに越したことはないだろう。



「取り敢えず、荷解きでもするかなー」


本を机の上から取り上げ、スクッと立ち上がり、隣の部屋に続く、黒いソファーの近くにある扉を開けた。



***



中に入ると勉強机と椅子、それから屋敷ほどではないが大きいベッドがあった。



「あったあった!」

本を勉強机の上に置き、ベッド近くに置いてある二つの木製のデカイ箱の元に行きしゃがんだ。


「えっと、これがコッチでこれがアッチでー……」


それから私は晩ご飯の時間まで荷解きに没頭した。

〜おまけ〜 ティナ


『あー、喉乾いたなぁ、冷たいお茶とかないかなぁー……』


『ッハ!! 冷蔵庫があるっ!!』


『え、待って待って、冷蔵庫あんならテレビもあってよ!?』


『いやっ、それより携帯電話あってよ!!』


『いやいや、それよりー……』



冷蔵庫に興奮しすぎて独り言がとまらない。

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