理由
「申し訳ございません」
机に手と頭を付け深く謝罪した。
「お嬢様の仰る通り私が旦那様にお嬢様のフリをして送りました」
「何でそんなことしたの?」
その問にシウォルさんは少しの間黙った。
「……ソフィアが『マリンschool』に行きたがっていたのはご存知かと思います。
もし当選し、貴族もいる学校に行けばあの子はあの性格ですし、きっとイジメに遭でしょう。
あの子平民同士の友達すら居ないんですよ?
あの子自身、いじめられようが関係ない、自分はやりたい事をやりに行く為に『マリンschool』に行きたいんだ、友達を作りに行く為じゃない。
と言っていますが、実際そういう訳にもいきません。
お嬢様には言っていませんでしたが私の友人の一人に『マリンschool』が出身校の友人がしまして。
その為、『マリンschool』の事は色々と耳にしているのですが、その友人はよく『マリンschool』では一度その集団から離れてしまうと本当にツライと言っていました。
なんせ共同生活ですからね。
しかし、お嬢様が、上級貴族であるシーナ家の令嬢が隣に居ればもし何らかの理由でイジメに遭ったとしても、きっとあからさまなイジメは無い。
それに、去年からのお変わりになったお嬢様ならソフィアを一人にしてイジメ側に行くなんてことしないでしょう?」
確かに私はソフィアを見捨てるようなことはしない。
ティナ=シーナなら『えー……』なんて悩んだふりをしながら嬉々としてイジメ側に行くんだろうけど。
いや、その前にソフィアと友達になってないか。
「そして、ソフィアに渡された応募用紙にサイしたのが応募終了日の三日前でした。
まだお嬢様が応募をしていないと知って、丁度良いからお嬢様の分も一緒に応募しようと」
なるほど、それでお父様宛に手紙を送ったのか。
「私はその時てっきりお嬢様が『マリンschool』に応募すると勘違いしていてたので、まだ旦那様に応募用紙を出してないと知った時は、お嬢様の事だから忘れてるのかも、と思ってしまったのです」
「応募を終えた後、ソフィアから聞きました。
お嬢様は『マリンschool』に行きたくないと仰っていたことを」
「本当に申し訳ございません。
謝罪しに行こう、と思っていたのですが中々勇気が無くて、今の今までズルズルときてしまいました。
本当に、申し訳ございません」
シウォルさんの声は震えていた。
主人の令嬢のフリをし、本人が行きたがってないことを知らなかったとはいえ、自分の娘の為だけにとったシウォルさんの行動はお父様にバレたら即クビだろう。
クビになったりしたら家計が苦しくなるのは容易に想像出来る。
彼もきっとその事は理解している。
私に言えなかったのはそのせいでもあるだろう。
前にも言ったが、ハッキリ言って私は自分の身を守りながらもソフィアの事を守りきる自信はあんまりない。
けど、もうこうなったらやるっきゃないと思いません?
『マリンschool』をキャンセルすることは出来ないし。
それに、ちょっとこの世界を見て回りたい気持ちはあるし。
……うん、女は度胸だ! 愛嬌だ!!
あれ? ちょっと違う?
まぁいいや。
一つの決意を胸に頭を深く下げるシウォルさんを見た。
「あのね、シウォルさん。
実を言うとね、私ね『マリンschool』に応募する気だったんだ。
ソフィアに『行かない』って言った後、やっぱり行きたいなって思ったんだけど、シウォルさんの思った通り応募するのスッカリ忘れててさ。
いやー、助かったよー!
今日はその事でお礼を言いに来たんだー」
「えっ!? 」
見開いた目で私をガン見した。
まぁチラ見よりガン見の方がいいけど。
「うん!」
違います、今思い付いた真っ赤な嘘です。
「わ、私はてっきり怒りに来たのかと……」
取り敢えず、拍子抜けてポカーンとしているシウォルさんを指差して笑っておいた。
あはははっ……笑えねぇ。
ゲームのシナリオはそう簡単には悪役令嬢をハズしてはくれないって訳ね。
**
「っていうかさ、もしソフィアが落選して、私が当選してた、もしくは私も落選してたらー……とは考えなかったの?」
「あー……それは全く心配していませんでした」
「前街に行った時、よく当たるという評判の占い師に会いまして、その時に占ってもらいまして」
「へぇー! そんな人がいるんだ!?
え、今もいるかな?
私も占ってもらいたい!!」
「さぁ、どうでしょう……。
色んな所を放浪しているとの噂なので、今もこの街にいるかはー……というか、この国にまだ滞在しているかどうかすら怪しいですね」
「そっかぁー……」
ガクッと肩を落とす私は、あのシウォルさんが占いを信じるピュアな心を持っていることにツッコむのを忘れていた。
シウォルさん、娘を思うが故ですね 笑
さてさて、次はお城にレッツゴー!




