生誕祭-7-
「え、何これ」
私とウィルが揃って戻ると、そこには目を疑うような景色が広がっていた。
「姉さん!」
いち早く私達の存在に気が付いたクリスが駆け寄ってきた。
「あ……」
「待って」
隣に立つウィルの存在に気が付き、跪こうとするクリスにウィルはストップをかけた。
「君、ティナの弟でしょ?
友達の姉弟に敬遠されるのは嫌だな」
ニコニコと笑いながらキッパリとそう言った。
「えと、分かりました。
あの、でも敬語は外さなくてもいいですか?」
おずおずと、でもどこか『ここだけは譲れない』という雰囲気を醸し出しながらそう言った。
「うん。いいよ」
クリスとウィルがタッグ組んだら最強なんだろうな、とそんな二人を見ていてなんとなくそう思った。
絶対に二人は敵に回さないでおこう。
「で、クリス。あれは?」
私が指差した先にはチェス盤が乗ってる机を囲むようにソファーに腰掛けるお父様とお母様。
そして、王様と王妃様。
うん、一体何があった?
そんでもって、その机とソファー来た時無かったよね?
え、どっから出てきた?
というより、何でそのメンバー!?
「姉さんとウィル王子が隣の部屋に行った後ー……」
*ちょっと前*
『え、あの子らデキてんの?』
姉さんと王子(多分、姉さんが街に行ってた時に会ってた人じゃないかな? )が隣の部屋に入っていった後、沈黙になっていたこの空間を壊したのは玉座に座る王様だった。
『それは分かりませんが、どうです? 彼女をウィルの婚約相手にしては。
丁度あの子の婚約相手を探していたところでしたし、話したこともない相手より知っている相手の方がいいのでは?』
そんな王妃のその提案に『いいね!』とグッドサインを出す王様と、ピシリと固まるお父様とお母様。
っていうか、王様、こんなのだっけ?
『『反対だ/ですわ』』
お父様とお母様がハモった。
『うちの愛娘に婚約はまだ早いですわ』
『俺の娘と婚約させたいならまず俺を倒してからいけ』
この人達は自分が拒否している相手が王族だってこと忘れているんじゃないだろうか。
そう思わずにはいられないほど、二人は思いっ切り嫌がった。
っていうかお父様、タメ語だよ。
それから王妃様の提案で、チェスで婚約をかけた勝負をすることになった。
チェス盤とかはどうするんだ、という話をしていると、どこからか『用意は出来ております』と執事さんの声が聞こえてきた。
声がした方向を見ると、ずっと静かに扉の近くに立っていたはずの執事さんがいつの間にか移動していて、その近くにはチェス盤の乗った机と、ソファーが用意されていた。
それから、四人はそこに向かいチェスを始めたのだった。
**
「ー……ていうことがあったんだ」
……うん、チェス盤とか出したの執事さんだったんだね。
犯人はあなただったんだね。
っていうかさ、何で婚約の話になった!?
いやっまぁ、確かに上級貴族だから王族と結婚することは出来るけどさ!?
デキでてんの? って! デキてねぇーよ。
「あははっ、婚約か、そっか。
どう? ティナ、婚約する?」
「へっ!?」
突然の誘いに素っ頓狂な声が出た。
え、ちょ、何言ってんの!?
「ダメ」
ポカーンと口を開いているとクリスが私の代わりにキッパリとそう断った。
「クリス?」
「ダメ。姉さんがウィル王子のこと恋愛感情で好きなら許すけど、そうじゃないなら僕は反対だよ」
「そんなのこと分からないんじゃないかな?
これからどうとともなれると思うけど?」
そう言って微笑んだウィルの笑顔は何だか黒かった。
怖っ!
「あのぉー、どっちでもいいんだけどさ、勝負終わったみたいだよ?」
そう報告すれば、二人は火花を散らすのを止めて、大人達の方を見た。
「なかなかやるな……」
「本当ですわね。今回は私達の負けですわ」
「だが、我らは諦めないからな! ティナちゃんは絶対にウィルのお嫁さんにする」
どうやら王様はお父様達と勝負をしているうちに初めは冗談のつもりが本気になってしまったようだ。
「次も私達が勝つ」
「ティナの為ですもの。負けませんわ」
いいよ、いいよ!
お父様、お母様、じゃんじゃん勝っちゃって!
っていうか、本当に勘弁してください。
ウィルにはちゃんと好きになった人と結婚して欲しいのよ。
政略結婚じゃなくてね。
***
その夜私は自分の部屋でベットに寝転がってテレビを見ながら『ウィル、王子様だったんだなぁー』と思っていた時、大変な事に気が付いた。
ん? 王子? ん?
『ドキドキっマリンschool』での攻略対象の身分は?
そんでもって私が今日再会した人の身分は?
その問の答えが一致した時、私は自分の顔がサッと青ざめていくのを感じた。
テレビから流れる楽しそうな笑い声が遠くに感じる。
「ん? いや待てよ」
そもそも私『マリンschool』に応募しないから大丈夫じゃね?
なぁーんだ。ビックリしたー。
ウィルが王族だろうがなんの関係もないじゃーん。
そうベットの上でホッとしていると、バタバタと私の部屋に近付く慌ただしい足音が聞こえてきた。
「お嬢様! お嬢様!!」
「おぅ!? どうしたどうした!?」
バンッと大きな音を立てて興奮気味に中に入ってきたのは何処に行ったんだろうと思っていたリリィだった。
いきなりだったからビビったぁ。
っていうか扉いつか壊れるんじゃないかな?
「これ! これ見てください!!」
そう言って手に握られた紙を私に見せた。
「何これ?」
「『マリンschool』の当落発表ですよ!!」
……は?
「当選しましたよ!!」
……はっ!?
ほらほらとズイッと『当選』という文字がデカデカと書かれた紙を見せられた私が少しの間の後、その場で絶叫したのは言うまでもない。
生誕祭はこれで終了です!




