生誕祭-6-
今回はティナ視点に戻ります。
「こちらになります」
お入りください。
と執事さんに促され、私達は大広間よりもっと大きな部屋に通された。
うわぁー……
中は大広間ほどゴチャゴチャしていなくて、少し先に王様と王妃様が座るであろう大きな椅子が二つ並んでいた。
一人ポカーンとしていると王様達を出迎える為に、お父様達がその場でしゃがみはじめるのを見て、私も慌ててしゃがんだ。
あれ?
「ねぇ、ねぇクリス。
王様達と会うのって一人一人順番に小部屋に通されるんじゃなかったけ?」
「あぁ、去年からそれ変わったんだよ。
王様達の負担が多いからね」
なるほど。
確かに一人一人と話さなきゃならないってすごい負担かかるもんね。
一人納得し私も王様達を出迎える準備をした。
ちなみに、お父様とクリスの男性陣は右膝を立てて跪き、お母様と私の女性陣はドレスの裾を摘んで貴族同士の時以上に地面に膝がつくかつかないかぐらいまで曲げて頭を垂れる。
それがこの世界での王族に対する敬意の払い方だ。
これねー、やってみたら分かるんだけどすっごい足攣りそうになるんだよね。
あ、ヤバッ、言ってるそばから足がぷるぷるしてきた……!!
ちょ、まだ!? まだ王様達来ないの!?
そんな事を思っていると扉が開く音がした。
コツコツと三人の足音が部屋中に響く。
やっと王様達が入ってきたようだ。
三人分のオーラというか王族の威圧みたいなものがビリビリと感じる。
これが王族ならではのオーラか。
ハッキリ言って侮っていた。
人に話せないぐらいすごいって……! 爆笑。
とか思っていた前の私を笑いたい。
これヤバイわ。
何もしなくても平伏したくなる。
「面をあげよ」
低く威厳のある声が聞こえた。
王様の言葉に従って顔を上げた。
ふぅ、足マジで攣るかと思った。
玉座に腰掛けるのはダンディーな男の人だ。
若い頃さぞかしモテただろう。
いや、今もモテてそう。
その隣に座るのはとてもこの世の人とは思えないほどの美貌の持ち主の王妃様。
こりゃー、王様すごい人見つけたな。
ってか、政略結婚か。
そして、その2人の横に背筋を伸ばし立っているのはー……。
「……ぅえ!?」
この国の王子が立っているハズのその場所には春の収穫祭で出会い、剣を教えてくれたいつも白いフードを被っていた彼が、ウィルが立っていた。
思わず変な声が出た。
見ると、ウィルもこちらを見て目を見開かせていた。
「……ティナ?」
信じられないという顔をしながら私の名を呼んだ。
「ウィル……?」
それに答えるように私も彼の名を呼ぶ。
そうすると王子はさっきよりもより目を見開いた。
かと思えば、王様達の方を向き「すこし失礼します」と言った。
「ああ、隣の部屋使っていいぞ」
何かを察しそう言った王様に一礼し、王子はツカツカと私の目の前まで颯爽と近付いてきた。
「こっち」
王子は手を伸ばし、私の腕を軽く引っ張って、隣の部屋に続く扉を通った。
「久しぶり、本当に約束果たせたね」
扉を閉め二人だけになると、目を細め微笑みそう言った。
この世界で一番最初の友達とまた再会でき、私は嬉しすぎて何を言ったらいいか分からなかった。
「ウィルだぁ」
会えなくなってから1年は経ってはいないけれど、もうずっと何年も会ってないような感じがした。
「ティナ、綺麗になったね。
最初誰か分からなかったよ」
そう言って色気を含ませ微笑んだウィルは全体的に妖艶さが増していた。
いやー、怖いわー、成長怖いわー。
「あははっ、相変わらずウィルは褒めるの上手いね。
そう言うウィルはなんか前と比べてオーラが……」
待って本当だ!!
オーラやばっ!!
ガチで王族じゃん。
「ウィルが王子だったんなて知らないんだけど!?」
「まぁ、ね、言う気なかったから」
サラッとそんなことをおっしゃた。
「俺だってティナが上級貴族だったなんて知らなかった」
「言わないようにしてたもん」
「……フッ」
「……プッ」
二人ともが身分を隠していたことがなんだか面白くて笑いが零れた。
「じゃあ、改めて自己紹介しようか」
「うん」
「じゃあ俺から。
ウィル=クラウド、この壱の国の王子ね」
『壱の国』というのはこの国の名前だ。
人名はカタカナなのに国名は漢字っていう。
なんていうかー……うん、ここはゲームの世界だもんね、もう何も言うまい。
「私はティナ=シーナ、一応上級貴族の令嬢です」
改めてよろしく。
と言って私達は握手を交わした。
あ、待って。
ウィルが王子だとしたら私敬語使わないとダメかな?
「ティナ敬語にするのやめてね? それが嫌でずっと身分隠してたんだから」
あれ、口には出してないのに……あれ!?
「ごめん、じゃあこれまで通りいくね?」
私も上級貴族って分かって余計な気を使わせたくなくてウィルに言わなかったしなー。
って言っても実際はウィルの方が身分上だったんだけども。
「うん、あ、俺こそ敬語使った方がいい?」
悪戯っぽく笑ってそう言ってきた。
「やめて!?」
え、この人何言っちゃってんの!?
ウィルに敬語使われた日には一日中その場に固まる自信がある。
「本当に可愛くなった」
突然手を伸ばし私の頬に手を滑らせ色気を含ませながらそんな事を言った。
ちょ、その漏れ出る色気しまって!?
ってか、
「……いひゃい、ひゃなひゃんふぁい」
※訳 『痛い、離さんかい』
私の頬を滑っていた手はいつの間にか私のほっぺを横にビヨーンと伸ばしていた。
人の顔で何をやっとるんだ君は。
「……っふは」
しかもそんな私の顔を見て吹き出すこの国の王子様。
おいこら。
「まぁ色々話したいことはあるけど、そろそろ戻ろうか」
いや、さっきまでツボに入って笑っていた人が何を言う。
そんな思いを込めてジトーっとウィルを見れば「ごめんごめん」と謝られた。
「そうだ、また明日にでも城に来てよ」
「え!? 行っていいの!?」
上級貴族でもさすがにそれはマズイんじゃあー……。
お前誰だこらー! みたいなことになんない?
「うん、大丈夫だよ。
自由に出入りできるように俺が計らっておくから」
だから、ね?
と無言の圧力にハッと気付いた時にはもう遅く、私は首を縦に振っていた。
無意識って怖い。
本当に王子なんだなぁー……。
改めてウィルの服装を見ると、王族が着る煌びやかなその服は、ウィルにとても似合っていて、『この国の王子だ』とそう思わずにはいられなかった。
「ね、ウィル。そういえば街でウィルと会っていた時、今みたいに王族のオーラなんか感じなかったよ?」
どうして?
と扉を開けようとしていたウィルの動きを止め、聞けば、ウィルは「ああ」と言って、ポケットから雫型のイヤリングを取り出した。
「これで王族特有のオーラを抑えていたんだ」
ほー!! そんなのあるんだー!!
発展してるねー!
ここまで発展してるなら小型電話機も作れよ。
と思った私は多分正しいと思う。
ウィルとティナやっと再会できました!
嬉しいです 笑




