生誕祭-1-
いよいよ今日は王子の生誕祭だ。
夏が過ぎ、少し涼しくなってきた。
『マリンschool』の応募が終了し、今日が当落発表だ。
まぁ私関係ないけれども。
ちなみに今私は、リリィ達に身だしなみを整えてもらっていた。
「お嬢様、お嬢様に似合う髪型があるのですが、髪を切っても大丈夫でしょうか?」
髪型を考えてくれている人がそう尋ねた。
「え? うん! いいよー! 私もそろそろ髪型変えたいと思ってたしー!
あ、縦ロールだけはやめてね?」
ガチな顔でそう言えばその人は不思議そうに首を傾げながらも「はい」と頷き、ハサミを持った。
暫くすると、「お嬢様、出来ましたよ」というリリィの言葉と共に鏡の前に連れて行かれた。
え、誰これ。
髪は、セミロングからミディアムに短くなり、ハーフアップに髪を結ばれていた。
ドレスは、フリフリが少なめの薄いピンク色だ。
私の好み分かってるー!
でも、欲を言えば黄色が良かったなぁー……。
「お嬢様の言う通り化粧は薄く仕上げました」
そう、化粧は濃くなると悪役令嬢のフラグが立ちそうだったので濃いのはやめて欲しいと頼んだのだ。
さて、もう一回ぐらい言っておこうかな。
誰これ。
いや、ティナ=シーナって美人だよ? もともとさ。
でもさ、ゲームの中のティナ=シーナってこんな美人さんじゃなかった気がするんだよね。
やっぱ化粧の濃さと縦ロールが元の素材の良さを消してたのか!?
「どうですか?」
お気に召しましたか?
とリリィを含め、すごい美人さんに仕上げてくれた人達が不安そうな面持ちで私の顔色を見た。
「すごいよ!! ありがとう!
一瞬別人かと思ったぐらい」
そう言えば皆嬉しそうにお互に顔を見合わせた。
「ではお嬢様、私達はここで失礼致します。
馬車の用意が出来次第また呼びに来ます」
「はーい!」
リリィ達が順番に丁寧にお辞儀をして部屋を出ていった。
皆が部屋を出ていったのと同時に正装したクリスが部屋に入ってきた。
「姉さん?」
え、姉さんだよね!?
みたいな目と合った。
いや、てか。
「クリス! かっこいい!! 似合ってる!」
黒ベースのタキシード姿はクリスにピッタリと合っていた。
「あ、姉さんだ……いや、褒めすぎだよ。姉さんの方こそ似合ってるよ」
そう言って照れくさそうに笑ったクリスを思わずギュッと抱きしめてしまったのは仕方ない、可愛いすぎだ。
「ああー! 今日行きたくないなー……休んじゃダメ?」
「……んー、いいけど、でも、残念だなぁー。
お城で出る料理すっごく美味しかったのになぁー」
棒読みでそう言ったクリスの言葉にに私の耳がピクリと動いた。
「すごく、美味しい料理……?」
「うん、今も思い出しただけでもお腹空いてきたもん」
真顔でそう言うクリスに私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「あ! そういえば、デザートもすごかったなぁー」
「行きます」
美味しい料理が私を行く気にした。
え、どんな料理が出るんだろー!?
うん、王様たちとの挨拶という、もしかしたら悪役令嬢のフラグが立つかもしれない面倒事は、サラッと終わらせて美味しいご飯を食べよう。
そう思っていた私は隣でクリスが「単純」と呟いていた事は知る由もなかった。
「馬車の用意が出来ました」
少しするとノックと共に開けっ放しの扉からリリィが呼びに来た。
それから私たちは家族全員が余裕で入る大きな馬車の中に乗り込み、この国を収める人達が住むあの大きなお城へと向かった。
その間、時折窓から聞こえる生誕祭を楽しむ街の人達の声に耳を傾け、馬車の揺れに身を任せていると、私はいつの間にか意識を飛ばしてしまっていた。
後からお母様から聞いた話では私は隣に座るクリスにもたれ掛かって寝てしまっていたらしい。
本当に悪い事をした。
言えるかな?
クリクリお目めの栗好きクリス、クリスマスに栗食って喜んだ。
※本編のクリスが栗好きという事実はございません。




