小さい頃からの夢
「……えと、じゃあ、ソフィアは『マリンschool』に応募するんだよね?」
待って、頭が痛くなってきた。
「ええ。ティナは応募しないの?」
「そうだなー……応募しない、かなー……」
「へぇ、珍しい。でもティナならそう言うと思ったわ。
だって、王族とお近付きになりたいとか思ってなさそうだもの」
そう言ってフフッと笑った。
「えへへ」
「今テレる要素どこにも無かったわよ」
上げてから落とすよね、この人。
「ごほんっ、 でも何で『マリンschool』に通いたいの?
もしかしてソフィアも王族見たさで?」
「あら、その辺の欲の塊と一緒にしないでくれる?」
目をスッと細めた。
ヒィ!! 怖っ!
「私は生きているうちに自分の国だけでなく他の国も見たいの。こんな小さな世界で一回しか無い自分の人生を費やすなんて嫌じゃない」
そう言って不敵に笑った。
「ソフィアって将来大物になると思うよ」
若干顔が引き攣ったのはになったのは仕方ない、ソフィアの笑顔が怖すぎた。
「でもあの日『マリンschool』に応募したと思ってることをあの人話したら、すごい勢いで反対してきたのよ」
そう言って悔しそうに唇を噛んだ。
あれか、シウォルさんか。
『マリンschool』の応募用紙には親権を持っている人のサインが必須なのだ。
「あの日ってー……」
「ティナが家に遊びに来た日よ」
ですよねー。
だからあんなに怒って扉から出てきたのか……。
「シウォルさんは何でそんなに反対するの?」
『マリンschool』に通えることって名誉な事じゃなかったけ?
「知らないの?」
驚いたように少し目を見開きそう言った。
「確かに『マリンschool』に通えることは名誉な事よ。
帰ってきて、『マリンschool』を卒業したって言えば雇いたいって言う人はわんさか出てくるわ。
ただ、帰ってこれたら、ね」
そう言って意味深に言葉を切った。
「えと……『マリンschool』に通って帰ってこない人が居るってこと?」
「ええ。ほら『マリンschool』は船に乗り込んで海の上を移動しながら色んな国をまわるわけでしょ?
もしも、その着いた国で戦が起こっていて巻き込まれたら? 移動中に嵐に巻き込まれて船が難破したら?」
顔が段々青くなっていくのを感じる。
「連絡手段がないから、家族は『マリンschool』の卒業式で出発前祝が行われた国に帰ってくるまで自分の娘、息子がどんな状態で帰ってくるか分からないのよ。
まぁ、そうは言っても、こんなのだいぶ前の話だけどね。
今は『マリンschool』に乗り込んでる教師もクルーも超一流の人しかいないし、そんな危険に遭う子なんて居ないわ」
うん、悪役令嬢をしっかりこなしたら攻略対象たちに海に突き落とされるっていう危険に遭う人がここに居るんだけどな。
「だから昔よりは安全だって話してるのにあの人は『危ない』の一点張り」
あちゃー。
いや、まぁうん、シウォルさんの気持ちは分からなくもないんだよなぁー……。
「まぁ、あの人の反対如きで諦めるわけないけどね。
サインが貰えるまでとことん説得するつもりよ」
そう言って不敵に笑った。
それから、昨日段差も何もないところで躓いて激突した台にのっていた花瓶が大きな音をたてて割れて、本気で焦ったこととか、それを見てたクリスに爆笑されたこととか、ここ最近あったことを話しているとあっという間に夕方になりソフィアが帰らなくてはならない時間となった。
「今日は楽しかったわ」
「私も! 帰り気を付けてね」
「ええ、ありがとう。また遊びましょ」
その言葉に私は大きく頷いた。
「またねー!!」
ソフィアの後ろ姿に大きく手を振った。
それに気付いた彼女も小さく手を振り返してくれた。
「行っちゃった」
一緒に遊んだ友達が自分の家へと向かう後ろ姿を見送るのは少し寂しい。
ドレスのフリフリの帯に、見つからないように横向きに挟んだ短剣にそっと触れた。
〜おまけ〜ティナ&ソフィア
ソ「花瓶割ったこと怒られた?」
テ「え!? お母様にちょっと……」
ソ「どうしたの? すっごい冷や汗出てるけど」
テ「あは、あははは」
ソ「うん、もう聞かないからその笑い声やめて」
テ「はい」
恐ろしい。




