悪役令嬢の幕引きと、ヤンデレ公爵の甘いお仕置き
「ひっ……ひぃぃっ! お、お許しください、カルステイン様! 私はただ、ヴァルハイト令嬢に一言仕返しをしたかっただけで……っ!」
床に崩れ落ちたクロエは、アレクセイの放つ圧倒的な威圧感に青ざめ、ガタガタと震えていた。
隣で気絶していたミハエルも、騎士科の生徒たちに腕を拘束され、生きた心地がしない様子で身を縮めている。
「仕返し、ね。……僕の婚約者に危害を加えようとした罪、そして公爵家の印章を捏造しようとした不敬罪。……ゴードン子爵家もろとも、二度と社交界に這い上がれないよう処理させてもらう」
アレクセイ様の声は恐ろしいほど静かだったが、その言葉には絶大な権力がこもっていた。
「ま、待ってください! お願いです、それだけは……!」
泣き叫ぶクロエとミハエルは、ルークたち騎士科の生徒によって手際よく連行されていった。
「……ふう。これで、今度こそ本当に破滅フラグは全部回収できましたわね」
私がホッと息をつくと、急に背後から強い力で抱きすくめられた。
「あ……アレクセイ様!?」
「『ふう』ではないだろう、エルザ」
アレクセイは私の首筋に顔を埋め、低く甘い声で囁いた。
その腕には、二度と離さないと言わんばかりの強い力がこもっている。
「鼠を捕まえるためとはいえ……僕の目の届かない場所で、あんな奴らの前に一人で立つなんて。どれだけ僕をヤキモキさせれば気が済むんだい?」
「だ、だって、アレクセイ様やルーク様が隠れて見ていてくださると信じていましたから……んむっ!?」
言い訳を最後まで言わせまいと、アレクセイの手が私の顎をそっと持ち上げ、そのまま唇を奪われた。
「ん……っ!?」
目の前で広がる、吸い込まれそうな紫の瞳。
普段の冷静な氷の公爵令息はどこへやら、そこには私への執着と独占欲を隠そうともしない、熱いヤンデレヒーローの顔があった。
「あ、アレク……! ここ、まだマリアたちもいますのに……っ!」
「構わない。……君が僕を頼らずに無茶をしたお仕置きだ」
少し離れた場所で、マリア様が「きゃーっ!」と両手で顔を覆いながら、指の隙間からバッチリこちらを覗いている。
隣のルークは「見ちゃダメです、マリア様!」と焦って彼女の目を手で隠そうとしていた。
「……もう、アレクセイ様ったら」
真っ赤になった私が胸を叩くと、アレクセイは満足そうに口元を緩め、私を姫抱っこで軽々と持ち上げた。
「さあ、邪魔者はすべて片付いた。学院祭の残りの時間は、僕と二人きりでデートを楽しんでもらうよ」
「えっ、ちょっと!? 皆様が見ていらっしゃいますわ!」
「関係ない。僕の愛しい悪役令嬢は、一生僕の手の上から逃げられないのだからね」
こうして、学園を揺るがした事件は完全に解決し、元・悪役令嬢エルザとヤンデレ公爵アレクセイの、どこまでも甘く騒がしい未来が続いていくのだった――。




