空回りな男たちと小悪魔な仲裁
「……投獄? 望むところだ! 俺はマリア様とエルザ令嬢に迷惑をかけたのは謝るが、あんたのその横暴な態度だけは許せねえ!」
ルークは剣の柄に手をかけ、真っ赤な顔でアレクセイを睨みつけた。
「フッ、威勢だけは一人前だな。……僕のエルザに気安く声をかけた罰だ。騎士科からの追放も検討させてもらおう」
「待ちなさい、二人とも!」
バチバチと青い火花を散らす二人の間に、私は割って入った。
「アレクセイ様、投獄も追放も禁止ですわ。それからルーク様も、剣に手をかけないでくださる?」
「……エルザ、なぜこの男をかばう? 君は僕以外の男に優しくする必要はない」
アレクセイが不満げに眉をひそめ、私の腰をぐっと引き寄せて自分のものだと主張するように抱きかかえる。
「かばっていませんわ。……ルーク様、あなたのお気持ちはよく分かりましたけれど、やり方が不器用すぎますのよ」
私はアレクセイの腕の中に収まったまま、ルークに向かってクスリと微笑んで見せた。
「マリア様の視線を奪われて悔しいのなら、脅迫状なんてコソコソした真似ではなく、正々堂々とマリア様をお茶会にお誘いになればよろしいでしょう? ……彼女、甘いタルトに目がありませんのよ」
「え……っ? た、タルト……? マリア様が……?」
情報をもらって一瞬で真っ赤になるルーク。本当に単純で分かりやすい人だ。
「そしてアレクセイ様?」
私はくるりと振り返り、至近距離でアレクセイの頬にそっと手を添えた。
上目遣いでじっと彼を見つめると、氷のように冷たかったアレクセイの瞳が、一瞬で狼狽の揺らぎを見せる。
「私を心配してくださるのは嬉しいですけれど……そんなに嫉妬なさるなんて、アレクセイ様はお心が狭いですのね?」
「……っ、僕が……狭い……?」
「ええ。私にはアレクセイ様しか見えていませんのに……私を信用していただけないのは、とても悲しいですわ」
わざとらしくしゅん、と肩を落としてみせると、アレクセイは苦しげに胸を押さえ、一気に真っ赤になった。
「っ……! 信用していないわけがないだろう! ……分かった、投獄も追放も取り消す。だからそんな顔をしないでくれ……!」
(ふふっ、チョロい……! 完全に私の勝ちね!)
暴走しかけたヤンデレヒーローを完璧に手の上で転がし、私は心の中で小さくガッツポーズを決めた。
「ルーク様。マリア様へのストーカー行為と脅迫状の件、反省していただけるなら今回だけはお見逃ししますわ。その代わり……今度は私のプロデュースで、マリア様と正しくお知り合いになっていただきますからね?」
「っ……ヴァルハイト令嬢……! あんた、案外いい奴なんだな……っ!」
こうして、学園を揺るがしかけた「不審者&脅迫状事件」は、不器用な騎士候補生の片思いと、エルザの小悪魔な仲裁によってあっけなく解決したのだった。




