九十八話 初詣(2)
両家の親たちと別れた俺たちは、三人で手を繋ぎながら鳥居をくぐって、氏神様に新年の挨拶をした。
今年も三人で仲良く過ごせますように。
そんな願いを込め手を合わせた後、せっかくなので色々と見て回ることにした。おみくじはマストだ。
早速三人でおみくじを引いて、その結果を見てみる。わくわく。
「んむ、吉だ」
「あら、良いじゃない。私なんて末吉よ」
せっかくならと大吉を期待していたが、俺も繭奈も違ったようだ。俺は吉なので良いが、彼女は末吉だったようだ。あんま変わらんけど。
そして冬夏はと思ったところでそちらを見ると、彼女がニッコリと手元にあるおみくじの紙をこちらに見せた。その反応、もしかして……
「アタシは吉!龍彦と一緒だね!」
「「大吉じゃないんかい」」
冬夏の反応から勝手に予想していた俺たちは、思わずそろってツッコミをいれてしまった。すごく嬉しそうにしていた理由が俺と一緒だからという理由なだけに、俺としてもニヤニヤしてしまう。
「アハハッ、龍彦ってば嬉しそう♪」
「んな嬉しいこと言われたらそうもなるだろ」
「ぐぬぬ、お揃いだなんて羨ましい……」
そんなペアルックじゃあるまいに、おみくじの吉がお揃いを狙うものではない。冬夏の言葉にニヤつく俺も俺だが、悔しそうにしている繭奈も、完全に履き違えている。
「まぁ、凶ってわけじゃないしいいだろ。そんなにお揃いがいいんなら、また今度ペアルックの服でも買いに行くか?」
「最高ね。それを見せつけるように街を練り歩くんでしょう?分かるわよ」
「んに言ってんの?」
ちょっとしたご機嫌取りのつもりだったが、繭奈はドヤ顔で恥ずかしいことを言っている。そんな彼女に冬夏は呆れた声で返した。
ペアルックなんぞ普通に部屋着だろう。
それはそうと、おみくじで大事なのは吉ばかりではあるまい。そう、内容だよ内容。勉学については、悪くなさそうだ。ふむふむ、勉強を怠るなと。
その他にも色々とあるようだが、仕事とか転居とかあるけどそっちはあんまり興味がないというか、当事者感がないため流し見。
だが、気になるところはもう一つ……
「ねぇ龍彦。アタシさ、恋愛の項目見てみたんよ」
俺と同じく、恋愛の項目に意識を向けていた冬夏が、肩をくっつけて話しかけてくる。ぐいぐいと身を寄せてくる彼女を可愛く思いながら、相槌を打って話を聞く。
「そしたらね、関係円満、積極的にいきなさいだってさ。つまりそういうことだよね?ガンガン行けばいいってことで」
「今さらだろそれ」
確かに、冬夏との関係は円満だし積極的に来てくれたら嬉しいから、おみくじの説得力はすごい。だから彼女は身を寄せてきたのかと納得する。
「私は、必ず機は訪れる、焦らず待てって出たわね」
「すでに熟してるだろ」
冬夏にの内容に対して、繭奈のものはつっこみどころがあった。いずれ訪れるどころか、もうとっくに成就してるだろ、半年以上前に。
そんな二人に対して、俺の内容は──
「そばにいる人を大切にしなさい、か。今まで通りだな」
「意外と当たるんだね、ここのおみくじ」
「だな」
「なんとも頷けないわね……」
悪くはなかったものの、状況に合わない結果だった繭奈はそう肩を竦める。そんな彼女に、俺たちは苦笑いで返した。
そんなこんなで一通り目を通した後、おみくじを紐に結んで屋台を回ることにした。そこへ向かうと、美味しそうな匂いが鼻腔を刺激して空腹を誘ってくる。
朝食からそう時間は経っていないはずなのだが、既に屋台の食べ物に興味津々だ。なに食べよー♪
夏祭りを思い出す屋台たちを目の前に、どれを食べようかと物色を始める。焼きそばやたこ焼きの良い香りに、自然とそちらに足を運ぼうとしてしまう。あっ、ポテトもいいな。
甘いものはデザートとしよう。じゃあ今回は焼きそばだ!
「ふふ、龍彦くんってば嬉しそうね」
「食べるの大好きだもんねー。かわいいなぁホントに」
「あぁ、大好きだぞ。焼きそばにしよ焼きそば。その後はポテトだ腹減ったぞ」
二人して俺を見ながら、ニコニコと着いてくる。かわいいのはそっちもだと言いたいが、今の俺からその言葉は出なかった。まぁ散々言ってるからどうって話だけど。
そんなこんなで焼きそばを二つ買い、次はたこ焼きの屋台にも足を運ぶ。
冬夏は焼きそばを、繭奈はたこ焼きにするみたいだ。祭りの定番だよね。
目的の品を手に入れた俺たちは、一度それを腹に入れてしまおうと隅の方に寄っていたたぎますをすることにした。
ここでは公園と違いベンチなどもないため、どうして立ち食いになってしまう。なので、ポテトはそのあとの楽しみだ。
「ふふ、龍彦くんったらかわいい♪そんなに美味しいのね」
「がつがつ行くもんね……ってほら、口もと汚れてるよ」
「あっ、ごめん」
たこ焼きがおいしくてはふはふと食べていたのだが、ソースが口元に付いたらしく冬夏がティッシュで拭ってくれた。ありがてぇ。
パックである焼きそばと違い、たこ焼きの皿はフタがないタイプであるため、後者を先に食べている。とはいえ、早くしないと冷めちゃうよ。
「お、龍彦みっけた」
「んぉ、茂じゃん。貝崎も明けましておめでとう、今年もよろしくな」
ちょうど一つめを食べ終わったところで、茂も貝崎のカップルがやってきた。繭奈たちも合わせて五人で挨拶を交わす。
「もうお参りは済ませたんだな」
「うん、だから今は飯食ってる。そっちはもう終わったのか?」
「おう、おみくじも引いたしな。俺は中吉だったぞ」
「私は大吉だったよん♪」
「いいじゃん。アタシと龍彦は吉だったぁ」
買ってきたものを食べながら、茂たちとお喋り。そんな中、貝崎がそういえばと問いかける。
「白雪さんも笹山さんも、着物できたんだね!すごく綺麗でびっくりしたよ」
「たしかに。遠くからでも結構目立ってたぞ」
貝崎の言葉に頷いて、茂も言葉を続けた。二人の気持ちはすごく理解できる。
「ありがとう。ちなみに龍彦くんは見惚れてくれたわ」
「しかもちょっと緊張しながら話しかけてきたもんね。ホントーに可愛くて仕方ないよ」
先ほどのことを思い出している冬夏が、俺の頭を撫でてくる。かわいいのはそっちだろっての。
それはそうと、気になっていることがあったので、尋ねてみることにした。
「そういや、二人とも浴衣はいつ用意したんだ?持ってたとか?」
「これはレンタルよ、いままで着るなんて考えてなかったもの。祭りの浴衣ならともかく見せる相手もいないし」
「アタシもレンタル。祭りは雰囲気楽しめるけど、初詣はそうでもないからねー。それにアタシは見てるだけで十分だし、わざわざ買ったりなんてしないよー」
着るのも大変だったし と、冬夏がそう締めくくり、繭奈もそれに同意した。
それからも五人で雑談しているうちに、買ってきたものを食べ終えたのであった。




