表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/103

九十五話 感極まって

「おはよう龍彦(たつひこ)くん」


「おはよ」


 教室に入ってすぐに元気よく挨拶したのは、もちろん告美(つぐみ)であった。その溌剌とした様子に周囲の連中の数人はこちらに目を向ける。


「おはよう龍彦(たつひこ)くん」


「おはよう」


 そんな告美(つぐみ)を見てクスッと笑っていた麗凪(れな)も、こちらに挨拶をしてくる。すっかり立て直した告美(つぐみ)にホッとする。


「おいっす龍彦(たつひこ)


「おはよー」


「おう」


 席について荷物を机にしまう俺のもとに、(しげる)がやってきて挨拶をしてきた。右手を上げる彼にこちらを上げて返す。その隣から挨拶をしてきたのは、彼の恋人である貝崎(かいさき)


 今更だが、彼女ともやることはヤったんだよな。今考えるとあり得ない話だ。スワッピングなぞあれっきりだ、二度とやらんぞ。


「仲直りした?」


「うん。龍彦(たつひこ)くんとはこれからも、ラブラブ友達として一緒ってことなったよ」


「聞き捨てならねぇことが聞こえたな今」


 貝崎(かいさき)の耳打ちに、告美(つぐみ)がアホなことを言いよった。なんだラブラブ友達って、恋人という概念(ことば)を知らない小学生が考えたようなネーミングセンスしてるぞ。


「小学生か告美(おまえ)は」


龍彦(たつひこ)おはよぅ!」


 アホなことを言った告美(つぐみ)にツッコミを入れ、間髪を容れずに冬夏(とうか)が登校してきた。それを利用してか告美(つぐみ)は聞こえないフリで誤魔化して、挨拶を返している。

 そんな彼女に視線を送るも無視なので、とりあえず俺も挨拶を返す。


「おはよう」


「あーあ、龍彦(たつひこ)の家が近かったら一緒に来れるのにぃ。学校(ここ)までお預けとか、いい加減寂しいってのー」


「それは運が悪かったと思うしか」


「うーん。こうなったら、これから龍彦(たつひこ)の家に住もうかな。ねぇいいでしょ?」


 どう考えても冗談なのだが、そんな冬夏(とうか)の言葉に周囲の男子連中がどよっとした。彼女のノリならこんなもんなんだけどな。

 そして、いつも通りの流れで彼女は俺の首に手を回して体重をかけてくる。ナニかが柔らかいね、むにゅっ じゃねぇのよ心地いいわチクショウ。


「アホ抜かせ、それなら繭奈(まゆな)が良い」


「それならアタシも混ぜてよ」


「恥ずかしいことばかり言うのはやめなさい」


 俺に絡んでいる冬夏(とうか)にピシャリと言ったのは、当然ながら繭奈(まゆな)である。かわいい。

 白雪(しらゆき)モードの彼女は、態度はクールだが言葉はデレ成分多めだ。俺に対してはね。


「うるさいなぁ。いつも一緒にいるアンタに言われたくねーっての」


「……ふっ」


「ぐぬぬっ、余裕なツラしおってからに……!」


 俺を挟んで繰り広げられる、繭奈(まゆな)冬夏(とうか)の漫才。そんな様子を見て(しげる)が苦笑いしている。


「なんか、大変そうってより楽しそうだな」


「まぁ、退屈しないのは間違ってない」


 二人のことは好きなので、俺としては嬉しい気持ちでいっぱいだ。とはいえ、どうしてこうなったのかという思いがあるにはあるが、わざわざ言うのは野暮ってものだろう。


 繭奈(まゆな)冬夏(とうか)に挟まれながら、そんなことを考える朝であった。




 そうして下校の時間を迎え、告美(つぐみ)たちと別れて家に向かう。なんとか持ち直した俺や告美(つぐみ)たちとの関係に、繭奈(まゆな)たちも微笑ましく見てくれていた。


「ようやく、お互いの気持ちが伝わったって感じね。春波(はるば)さんたちも、これで報われない想いを続けることもないし、龍彦(たつひこ)くんも気を遣わなくていいし、一段落かしら」


「気を遣っていたかは微妙だけどな」


 あれだけ教室でベタベタしていたのだから、ぶっちゃけ今まで通りという方が正しいだろう。


「そう考えると申し訳ないよ、ホントに。もっと早くに気付いていれば良かったんだけどな」


「あら?知っててやってるんじゃなかったの?」


 俺の言葉に、繭奈(まゆな)が首を傾げてきた。知っててやっているとしたら、ただの嫌味なやつではないか。


「まさか、知らないに決まってるじゃないか。好かれてたなんて思わなかったしな」


「えっ、龍彦(たつひこ)くん、もしかして忘れてたの?祭りの時話したじゃない、春波(はるば)さんたちがあなたを好きだって」


 繭奈(まゆな)にそう言われ、思わず足を止めてしまう。彼女の言葉を元に、夏祭りの時の記憶を呼び起こす。


「…………そっそういえば、そうだったような?」


 目を見開いた繭奈(まゆな)の言葉に、俺は冷や汗をかきながら首を傾げる。


 最近は繭奈(まゆな)冬夏(とうか)がいたので、完全にそちらに心を奪われていたのだ。二人が好きすぎてすっかり抜け落ちていた。


 そもそも、告美(つぐみ)麗凪(れな)も友達としての感覚が強すぎるんだもん。なんて、言い訳にもならないことを考える。


「っはぁー呆れた。そんな大問題を忘れるって、間抜けなんたか剛胆なんだか分かんないわ」


 すっかり呆れた冬夏(とうか)が肩を竦めて、掌を空に向け首を振る。いわゆるジェスチャーというやつだ。


「まぁ仕方ないわよ、あの後は色々と思い出深いことばかりだったもの。三人でヤるようにもなったわけだし、状況が大きく変わりすぎたんだから」


「まぁたしかに。そういえば最初は、アタシも龍彦(たつひこ)に嫌なこと言って繭奈(まゆな)に怒られたもんね。忘れてたけど」


「でしょう?今の私たちの関係が大事すぎて、他のことがどんどん滲んでいっちゃう。私も龍彦(たつひこ)くんのこと以外は、割と忘れてたりするもの」


 そんな繭奈(まゆな)のフォローに、冬夏(とうか)が たしかにと返す。二学期が始まってからも、繭奈(まゆな)がだる絡みされてたしなぁ。

 そうでなくてもスワッピングとか、冬夏(とうか)も交えてとかあったんだ。もう訳が分からないよ。


 それだから仕方ない!みたいにする気はないが、事実は事実である。そう考えると、二人との関係はとても大きいものになっていたみたいだ。


「やっぱり……」


 そこまで言って口が止まる。そんな俺に、二人が名前を呼んでこちらを見た。


「……大好きなんだよな。繭奈(まゆな)冬夏(とうか)も」


 心の底から溢れてきた言葉。感情は満足に言い表せず、でも間違いではなかった。

 そんな感嘆交じりに言った俺に、二人は段々と顔を紅潮させていく。


「たっ龍彦(たつひこ)ってばなに言って──」


「おっほやべっ濡れたわ」


 照れながら俺の肩を叩く冬夏(とうか)だったが、対する繭奈(まゆな)が情緒もへったくれもないことを言い出した。

 絶句である。


「あー、繭奈(まゆな)?さすがにそれは引く」


「えっなに言ってるの冬夏(とうか)。私はただ感極まっただけよ」


「それにしたって台無しが過ぎる。んで、鼻血出てるぞ」


 無理のある言い訳を並べる繭奈(まゆな)から出た鼻血を、ポケットティッシュで拭う。いくらなんでも、感極まって汚い声とか発言とは恐れ入る。

 いったい何処が濡れるというのか。


「んむむ……そうかしら?私も大好きって言ったのに」


「濡れるつったろ」


 本気か嘘か分からない繭奈(まゆな)の言い分に、冬夏(とうか)がバシッとツッコんだ。

 しかし、繭奈(まゆな)はポカンとしている。


「もしかして、本音が飛び出てきたんじゃねぇのか?そんな感じする」


「かもしれないわね」


「っかぁーアンタらは!やっぱりアタシがいないとダメだね!」


 一番の常識人である冬夏(とうか)が、そう言って俺たちの手を掴んでいつもの道を先導していく。なんだかんだ、すっかり染まっている彼女に、同じようなものじゃないかと、思わず笑ってしまう今日この頃であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ