表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/103

九十四話 友達として

 告美(つぐみ)に大嫌いだと、そう言われた翌朝の学校。繭奈(まゆな)と共に登校してきた俺は、教室へと足を踏み入れる。

 隣の席である告美(つぐみ)と顔を合わせることになるわけだが、彼女は大丈夫なのだろうか?余計に傷付きやしないだろうかと心配になる。


 彼女は既に自分の席に座っており、いつぞやの席替えで前に並んだ麗凪(れな)と談笑していた。しかしその表情には、僅ながら翳りがあるようにも感じる。

 俺も自分の席に向かい、話をしている二人に挨拶をした。


「おはよう麗凪(れな)告美(つぐみ)


「あっ、おはよ」


「おっおはよう……」


 俺の挨拶にいつも通りに返した麗凪(れな)だったが、告美(つぐみ)の様子はどうも緊張気味。やはり俺とは、関わりたくないのだろう。

 隣の席だから仕方なく、といった感じか。


 まぁ、昨日のことがあったわけだし仕方ないだろう。ハッキリしなかった俺が悪いのだ。



 しかしその割には、告美(つぐみ)からチラチラと視線を感じる。というか、なんなら見られている。

 なにか言いたいことがあるのか、それとも警戒しているのかは分からない。こちらから声をかけた方が──


「たっ龍彦(たつひこ)くん?」


 そう考えたところで、告美(つぐみ)から話しかけられた。彼女はこちらの表情を窺うように、おそるおそる言葉を続けた。


「あの、あのね?昨日のはその……本気じゃ、ないから……」


「え?」


「あっ、えと……」


 段々と小さくなっていく告美(つぐみ)の声が聞き取れず、思わず聞き返してしまう。 "昨日のは" までは聞き取れたのだが、その先が分からなかったのだ。

 しかし、彼女はどうにもおどおどとしていて話にならなそうである。こりゃ困ったぞ。


「その先の話は、また後でも良いかな?ここだほら……」


「あっ、そうだね……じゃああとで」


 さすがに、他のクラスメイトたちがいる前でする話ではないだろう。麗凪(れな)は事情を知っているだろうし告美(つぐみ)も話していそうだが、そうでなければ聞かれたくないはずだ。


 なので、話すのは静かな場所がいい。学校が終わってから改めて。


 その旨を繭奈(まゆな)たちにも話し、再びあの公園へとやってきた。いつもよりぎこちない俺たちに周囲の連中はなにやら気にしていたが、かといって声をかけたり尋ねる勇気もなかったみたいだ。

 だから、俺と告美(つぐみ)との間になにがあったのかを知るのは、繭奈(まゆな)冬夏(とうか)麗凪(れな)だけである。


 彼女たちには近くで待機してもらい、俺は公園の入り口辺りで待機していた告美(つぐみ)に声をかけた。


「おまたせ、告美(つぐみ)


「ううん、私も今来たとこ」


 優しく微笑んで返した告美(つぐみ)と共に、公園の敷地に足を踏み入れる。それなりの大きさだから、散歩がてら話すのにちょうど良い。


「昨日はごめんね。ひどいこと言っちゃって」


「いや、考えなしにしてた俺の方が良くなかった」


 心なしか距離の空いた俺たちは、ぎこちなく話を始める。俺が繭奈(まゆな)と付き合っていることを知ってから、告美(つぐみ)はずっとこんな様子だ。

 まぁ、彼女の心情を考えたら当然のことだが。


「いやいや、あれだけ仲良くしてた龍彦(たつひこ)くんたちに気付かなかった私も大概っていうか、バカだったよ。それなのに大嫌いなんて嘘言って……そう、私やっぱり龍彦(たつひこ)くんが好き」


 言いたいことはたくさんあっただろう。しかし告美(つぐみ)は、その先を話せるだけの余裕がなさそうで、諦めきれない自分の気持ちを吐露した。

 大嫌いなのが嘘だったことに安堵するも、それでも好きと言われるとなんとも言えない気持ちになる。


「でも分かってるんだ。龍彦(たつひこ)くんには白雪(しらゆき)さんと笹山(ささやま)さんがいるから、私が付き合うなんて夢のまた夢だって」


 滔々と語られる告美(つぐみ)の胸中に、俺は静かに頷く。彼女はそれを見て、言葉を紡いでいく。


「だから、ちゃんと受け入れるように頑張るよ。龍彦(たつひこ)くんとは友達でいられるようにね。しばらくはまだ、引きずるかもしれないけど」


 それは寂しさか自嘲か諦観か、眉尻を下げた微笑みを浮かべる告美(つぐみ)が、そう締めくくった。


告美(つぐみ)……ごめん、ありがとう」


「ううん!こっちこそごめんね、それじゃ!」


 恥ずかしいのだろうか、告美(つぐみ)は顔を赤くして、そのまま小走りで立ち去っていく。こちらとしても少し気まずいので、その方がありがたく思える。

 すると彼女は足を止めて、こちらを振り向いて言った。


「また明日ね、龍彦(たつひこ)くん!」


「またな、告美(つぐみ)


 大きく手を振りながら挨拶をした告美(つぐみ)にそう返すと、彼女はニコッと笑って今度こそ走り去っていった。

 彼女とはこれからも良い友達でいられるかもしれないと、ホッと胸を撫で下ろす。


「あっ、おかえり」


「お疲れさまね、龍彦(たつひこ)くん」


 近くで待機していた繭奈(まゆな)たちの元へ行くと、冬夏(とうか)がこちらに掌を向け、繭奈(まゆな)がすかさず隣に来た。

 そんな二人と共に、なにも言わずに家に向かう。


 告美(つぐみ)麗凪(れな)も、友達として丁度良い距離感を保っていこう。いつかきっと二人にも良い相手ができて、諦めた想いが思い出になるはずだから。




 しかし、これからも告美(つぐみ)麗凪(れな)とは、末永く友人として関わっていくことになることを、今の俺はそこまで考えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ