【50】聖女様と領主様(2)
学校へ着いた。
学校は2階建てで、1階が職員や共通の部屋。
実験室や図書室なんかね。
2階は各学年の教室。
5学年あるわ。
わたし達は今、3学年生ね。
1階部分が石造りで2階は石と木造の組み合わせになっているの。
わたし達は何時ものように2階の教室で授業を受けていると、何だか突然騒がしくなったの。
誰かれ構わず窓辺に寄ると、馬に乗った騎士や豪華な馬車が学校の前に現れたの
──えっ?なになになに?
先生が教室に入ってきて
「はい!みなさん!落ち着いて!席に着いてください!」
パンパンパン
手を鳴らして皆を静かにさせる。
わたし達は騎士やら馬車やら見たいのを諦めて、席に着く
「えーっとみなさん。急な話ですが。
突然!新しい御領主様がこの学校見学に参られました!」
──へぇー。新しい領主様?
あのわたしを屋根裏部屋に監禁したダルソン子爵は失脚したから安心だけど、もし叔父のダルソンだったら腹痛起こして速攻逃げてたわ!
捕まったら[侯爵位を叔父に譲渡する署名]&[変態エロ爺の慰み者]のコンボだったからね。
ここはどんな偉そうなヤツか見てやろうじゃないの!
「たまたま近くを視察されて、この学校が目に付いて寄ってくださったようです!」
そしてここへ禿げてる副校長が駆け込んで来て
「えっと皆さん!御領主様がこの教室を訪問すると決まりました!間もなく参られます!
大変身分の高い方なので、くれぐれも私語などせずに、立派に背筋を伸ばしてください。
そして教室に入られたら、立ち上がって拍手で出迎えるように!」
とたんに教室は水を打ったように静まりかえる。
息を止めてるアホもいる。
廊下がガヤガヤと騒がしい。
近づいているのでしょうね。
教室へ颯爽と騎士達が入ってきた。
みんな立ち上がって、拍手が木霊する!
緊張しているから、拍手がバラバラ。
わたしは教室の中央辺りにいるから、領主様が入って来たのを見れない。背が低くてね。
それで拍手も収まり。着席する。
教壇の前に騎士に囲まれた新しい御領主様がいた……けど……
──なんでアイツがいんの?
わたしは目が点になった。
だって騎士に囲まれて同年代の子供がいる。
凄い高そうな礼服を着ている。
肩の辺りに金色の飾り紐が仰々しい。
金髪で青い瞳。
一目で高貴な家柄の貴公子だと分かってしまう。
堂々とした佇まい。
そしてその新御領主だという少年は、ぐるりと教室を見回し、わたしと目が合うと柔らかい笑みを浮かべた
──なっ!なんであんたがここにいんのよ!
アーサー君!
そう!あの露店街を案内した少年アーサーが、ここにいるの!そしてずっとわたしから視線を外さない。
──反らしたら、不敬罪になるかな?
教室の生徒も視線を追ってわたしを見る。
もう居たたまれない。
綺麗なお姉さん騎士が一歩前に出た。
見覚えある。
硬貨のぎっしり詰まった袋をわたしに預けて、露店案内を頼んだお姉さんだ。
そのお姉さん騎士もわたしを見て微笑み
「こちらはこのローレンの街の御領主様。
アーサー・ペンドラゴン・フリーデン殿下だ。
君達と同じ13歳で有らせられる。
同年代の君達の学ぶ姿に興味を持たれ、ここへ見学となった。では殿下……」
ここでアーサーがようやくわたしから視線を切ってくれた
「初めまして。わたしはアーサーだ。
一応領主を賜ってはいるが、まだ成年前で皆と同じように学んでいる身だ。
今日はわたしと同じ歳の少年少女達がどのように学んでいるのか、知りたかった。
今から少しの時間授業を見学しようと思ったが、そこの席が空いているのを見て思い付いた。
わたしも参加させて貰おう。
では教授!わたしに構わず授業を続けてくれたまえ!」
空いてる席って……
チラッと横を見る。
今日たまたま隣の子が、風邪で欠席したけど……まさかね。
そのまさかだった!
アーサーはずんずん進んでくると、わたしの隣の空いてる席に座った。
そしてわたしを見てウィンクする!
こうして着飾っていると、凄く素敵で格好いい!
まるで王子様みたい!
っっっって!フリーデンって国の名前じゃん!
国の名前を冠しているってことは……。
正真正銘の王子様ってこと!?
そしてわたしがウィンクに思わずドキッとして、顔を赤らめたら嬉しそうに微笑んで
「また会えたね。ボクのアイラ」
──ぼ……ボ……ボクのアイラ?
なんじゃそりゃあー!