↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/52

クレープの花束。

今日は母の日なので、クレープの花束を出している。三角にクルリと巻いた中身は、スポンジ生地とクリームは生クリームとカスタードの二種類。イチゴが見えるように配置すると、小さなブーケの出来上がり。それを巻くセロファンを留めるのはもちろん「Happy Mother Day!」のシール。店頭ではさっそく「うわー。かわいい!これにしようよ!」という声が聞こえている。母の日のプレゼントにスイーツを、とご来店のお客様だ。母の日も花屋には負けていられないんでね。


クレープを見ると、懐かしい気持ちになる。幼稚園の頃、クレープのパーティがあったのだ。先生がみんなの前でホットプレートで焼き、それを渡されると、用意してあったクリームやフルーツを各自で巻いて食べたのだ。初めて食べたクレープに感動した俺は家に帰ってすぐにお袋に報告をした。

「あのね、今日、クレープっていうの食べたの。果物いっぱい入れてね。おいしかったの。」

「そう。クレープ気に入った?」

「うん!また食べたい。ママ、作って!」

そんな会話をした翌日、幼稚園から帰るとテーブルにはクレープを何枚も乗せた皿が置いてあった。

「クレープ、焼いてくれたの?」

「そうよ。さて、食べようか。」

そういってお袋がカットしたフルーツの皿とクリームがたっぷり入ったボウルと、ポッキーの乗った皿をテーブルに置いた。陽菜と二人、並んで座ってたくさんのクリームとフルーツを巻いて、大事に両手で持ってかぶりつくと、入れすぎた具が入れ過ぎたボロボロとこぼれて、それを笑いながら食べたのも懐かしい。


「店長、ちょっとよろしいですか?」

しばし思い出に浸っていると、バイトの女の子から声がかかった。行くとカウンター越しには小柄な女の子が立っていた。小柄だが、顔立ちのはっきりとした大人びた感じからすると中学生と思われる。

「こちらのお客様なんですけど…。」

バイトの女の子に目礼をしてから向き直る。

「はい。どうされましたか?」

「あの、母がイチゴが苦手なんで、違うフルーツのブーケを作ってもらえませんか?」

なるほど。イチゴが苦手な人もいるよな。お好みのフルーツの中からブーケらしいものを使うほうが良さそうだな。

「どんなフルーツがよろしいですか?」

「実はフルーツがあまり好きじゃないんです…。あ。オレンジは好きです。」

困ったな。見栄えの点ではカラフルにしたいんだが。

「クッキーやチョコレートはお好きですか?」

「はい。」

「では、フルーツは控えめにして、クッキーをメインにしましょうか?」

「はい。それでお願いします。あの、お値段は…?」

「同じで大丈夫ですよ。おいくつお作りしましょうか?」

「いいんですか?ありがとうございます!じゃあ、5個で。」


厨房にもどると、手早くオレンジとクッキーと生チョコをトッピングしたものを一個だけ作ってみる。イチゴの赤に比べると色がちょっとさみしいな。そうだ。今日はスターフルーツがあるから、スライスを飾ってみよう。あと、アラザンを少し。よし、これでいける!

「お待たせいたしました。いかがでしょうか。」

「かわいい!ありがとうございます。」

「ではもうしばらくお待ちくださいね。」

セロファンを巻いてシールを留めたものをトレーに乗せてお客様にお見せしてみたところ、良いお返事がもらえたので、残り4個を急いで仕上げて箱に詰めた。

「大変お待たせいたしました。」

お会計をしてからお客様が喜んで箱を受け取る。良かった。速攻技だったけど、やるじゃん、俺!

「無理言ってすみませんでした。ありがとうございました。」


思い出のクレープは、母が子を笑顔にした。そして今日のクレープは、お母さんを笑顔にするためのもの。喜んでいただけて何よりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。